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 この世界に転生し自分の今の状況を把握した後、真っ先に思ったのは知高さんの事だ。


 目の前でモブンナに殺されそうになった私が、この世界から消えたのだ。


 知高さんであれば心配してくれているだろう。


 いくら知高さんでも今の私を見て「美音」だと気づいてくれるかは分からない。


 それでも、「美音」だと信じてもらえなくても、心配をかけてしまった事を謝りたかった。それが私の自己満足に過ぎなくても。


 一応歩けるようになったとはいえ、今の私は公爵令嬢、しかも、お祖母様と同じプラチナブロンドに紫眼で顔立ちまで酷似した絶世の美幼女だ。一人でふらふら出歩けば、すぐさま悪人に目を付けられ、ひどい目に遭うのは分かり切っている。


 護衛を連れて知高さんに会いに行こうにも、幼いこの体では、まだまともな言葉を発する事ができなくて両親に護衛をお願いする事もできなかった。


 なので、ディウエスが話しかけてきたのをこれ幸い、知高さんに会いに行けるように計らってもらおうと口を開きかけたのだが。


「君がこの世界から消えた後の事だが」


 私が気にしているだろうからとディウエスは親切心から教えてくれるようだ。


 私としては、あの後の顛末よりも知高さんのほうが気になっているのだけれど。


 ディウエスの親切心を切り捨てる理由もないので黙って聞く事にする。その後で知高さんに会いに行けるよう計らってもらえばいいと思ったので。


「殺人未遂とはいえ被害者の君が消えたから立件はできない。それでも、京極知高を始めとする多数の目撃者がいた以上、無罪放免と言う訳にはいかなかったから、モブンナ・モーンスを王都にあるモーンス男爵邸に謹慎させた。その後は親子以上に年の離れた、何かと黒い噂がある富豪と結婚したよ。表向きは父親のモーンス男爵の意向だが、そうするように命じたのは母上だ」


「お祖母様が? どうして?」


「今生でも大切に想っている前世の娘を殺そうとしたんだ。あの人が許す訳ないだろう?」


 生まれ変わった今でも前世の娘(わたし)を大切に想っている。


 そう聞かされても、感動よりも戸惑いが大きい。


 私を産んで亡くなった母親だ。大切に想ってくれているのは彼女が残した日記から知っていても実感がないのだ。


「母上はモブンナを君と同じ目に遭わせたかったようだ。自由を奪われて尊厳を踏みにじられても耐えられるのかってね」


 ()しくも、豊柴美音だった(前世の)私が言った事が実行された訳だ。


「まあ、結局、モブンナも耐えられなくて夫を殺して、今は監獄(おりのなか)だ」


「人を殺すなど私にはありえない」と言っていたくせにとは思わない。


 ペレウスが言っていたように、サイコパスでもない限り、誰も()(この)んで人を殺したりなどしない。


 私がそうだったように、モブンナもその状況に耐えられなかったから元凶()を殺したのだ。


 追い詰められた結果だ。


 それでも、犯した罪は償わなければならないが。









明日で完結です。三話投稿します。

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