生首と魔女の邂逅
叫べども叫べども返ってこない返事に疲れ果てた僕は、いつの間にか気を失ってしまっていた。どれぐらい叫んでいたのかも忘れたくらいだが、その間は食事も水も口にしていないのだ。生きている方がおかしい。まあ、首だけの時点でおかしいのだが。
「――――――」
「――――――」
どれぐらい気を失っていたのだろうか。まどろみの中で、何やら話し声が聞こえる。
まさか、ようやく人に出会えたのか。そう思っていた矢先、鼻先に衝撃が走った。そして僕は瞬時に悟った。
「くそ、またカラスか……」
どうやら人に会えない寂しさから、幻聴を聞いてしまったらしい。餓死するまでの時間もそれほど遠いものでは無いようだ。そう思っていた矢先。
「「あああああああああああ!」」
鼓膜を突き破るくらいの絶叫が響いた。
それに驚く暇も無く、衝撃が頬に奔った。身体(首だけ)はフワリと浮き上がり、空がほんの少しだけ近づいて見えた。首から下があった頃にはこんな景色も見られたのにな、等と考えている間にも、僕の身体(首だけ)は、吸い込まれるように地面に落ちた。前世で最後に見た自動車のヘッドライトと同じような眩しさが視界いっぱいに広がった。
一連の流れで完全に目が覚めた。誰だか分からないが、誰かが確実に僕を殴った。それが分かれば今はそれで良い。
僕は何とか身を捩って声がする方へと視線を向ける。視線の先には二人の人間がいる。一人はガチガチの鎧に身を包んだ騎士、と言った所か。その後ろに隠れているのはトンガリ帽子にローブを羽織り、身の丈ほどの杖を手にした魔女だろうか。いかにも昔、ゲームで見たテンプレのような二人だ。ほんの少しだけ気分が高揚してしまった自分がいる。
二人はあからさまにこちらを警戒している。気持ちは分かるのだが、だからといってこの機会を逃す手は無い。僕は意を決して口を開いた。