再会バックドロップ
「ようやく思い出してくれましたね!嬉しいです!」
そう言って、彼女はもう一度、僕を抱きしめた。前に会った時にはこんな性格では無かったように思えるが……。
「ああ、僕も会えて嬉しいよ……」
とりあえず、僕が今やるべきことはたった一つだ。そっと彼女のことを抱きしめて……。
「首だけになった時からずっとこうしようって考えていたんだ。……よくもこんな目に遭わせてくれたなぁああああああ!」
僕はそれまでの疲労や二日酔いのことなど忘れて、渾身の力で彼女を真後ろに投げ飛ばした。ちょうどプロレスのバックドロップのような形だ。今はこの身体であることに小さく感謝した。34歳のおっさんの身体では、こんな技でもしようものなら再起不能に陥っていたことだろう。
「せっかくの再会なのにいきなり投げ飛ばすなんてヒドいじゃないですか!」
彼女は投げ飛ばされたにもかかわらず、何事も無かったように起き上がった。まあ、神様なんてチートの権化みたいな奴であることを考えれば当然なのかも知れないが。
「コッチの台詞だ!お前が間違えたおかげで今までヒドい目に遭ったんだぞ!」
「それは……その、ごめんなさい……」
意外にも、彼女はあっさりと謝罪した。肩すかしを食らった気分だが、これ以上文句を言ったところで、時間が戻るわけでもないのだ。それに、彼女がやって来たと言うことは、僕はいよいよ元の身体に戻れると言うことだろう。僕は期待を込めて言った。
「……まあ、もういいよ。とにかく、早く僕を元に戻してくれ」
「……?何の話ですか?」
「いや、ほら僕を早く元の身体に戻してくれって言っているんだよ。そのために来たんじゃないの?」
「あのー……ええと、私もう神様じゃ無いんで……申し訳ありません、出来ないです」
僕は無言で二度目のバックドロップを決めた。




