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神様は社畜


「……というのが、貴方の身に起こった事の顛末です」


 そう説明してくれたのは、僕の目の前にいる少女である。見た目が少女なので僕は少女と呼んだが、彼女は自らを指して曰く「神様」とのことで、実際には僕よりも遙かに年上なのだと思う。幼い顔立ちながら透けるような白い肌と純白の羽衣は、いかにもおとぎ話に登場する神様の姿そのものである。


「ええと……非常にお伝えしにくい事なのですが……あなたは、あの、その、死んでしまいました……。まずはお悔やみを申し上げます」


 おずおずと躊躇いがちに神様は言った。それは死んだ本人に対して使う言葉なのだろうか。


「それで……ええと……どうされますか?」


 要点を得ない説明だ。胸の辺りがモヤモヤする。


「……どうするか、とは?」

「えと……あの、選択肢があるんです。このまま天上界にて悠々自適の日々を過ごすか、それとも私たち『天上界』からの使いとして、こちらが提示する中からお好きな『能力』を一つ選んでいただいたうえで現世に戻るか。どちらかお選びいただけますか?」


 この流れは見たことがある。いつか漫画で読んだ「異世界チート転生」というやつだ。ここで「現世に戻る」といえば、人知を超えた能力を手にして異世界で八面六臂の大活躍をする、というのがお決まりのパターンだ。


 しかし、お話としては面白いが自分でソレをやれるか、と言われれば思わず躊躇ってしまう。その手の舞台は大概、中世のような剣と魔法の世界観であるし、現代文明というぬるま湯に浸かりきってしまった自分は、その世界には上手く馴染めずに終わってしまう様が目に浮かぶ。


 何よりも僕は今、とても休みたかった。ゆっくりと横になってから答えを出してはいけないのだろうか。そう尋ねると、神様はとても困った顔で、

「ええと、そう尋ねる方もおられるのですが……その……出来れば、今ここで答えを出していただければ……」


 神様なのに、随分と言葉を選んでいるように思える。まるで上司にお伺い立てる時の僕のような言い方だ。彼女にも上司に当たる人物がいるのだろうか。毎日朝から晩まで叱られながらこうして死人の誘導を行っているのだろうか。そう考えると、何だか居たたまれない気持ちになってきた。できるだけ優しくしてあげよう。


 彼女の方を見やれば、分かりやすいくらいに決まりの悪そうな表情を浮かべて、こちらの答えを待っている。そもそも選択肢はたった二つだ。悠々自適か、チート無双か。それほど悩ましいものでもない。僕は「チート無双」なんてがらじゃない。元来、家でジッとしているのが好きな性分だ。


「じゃあ、天上界での悠々自適コースで……」

「わ、分かりました!では当面の食料と雨風を凌ぐための資材は後ほどお送りいたしますので……」


 彼女が指を鳴らすと、彼女の隣に、その背丈ほどの光の輪が出現した。どうやらコレが天上界へと繋がる扉のようだ。


「お先にこちらの扉をくぐって下さい。この先が天上界ですので!」


 彼女は一仕事終えたような、安堵の笑みを浮かべているが、こちらの方はそういうわけにはいかない。彼女が扉と呼んだ向こうに見える世界はどう見ても何もない荒野なのだ。そしてつい先ほどの彼女の発言。僕はすぐに一つの答えに行き着いた。


「あの、ひょっとして天上界って……」

「はい。現在、天上界は先日起きた神魔間の大戦によって……その、無明荒野へと変貌を遂げております。一応、こちらの方で生活用品はある程度用意がありますが……」

「現状ではサバイバル生活に等しい、と」

「あ、はい。その通りです」


 ふざけんな。思わず叫びだしそうになったが、何とかこらえた。彼女は仕事をしているだけなのだ。上司に叱責されながらも、必死に仕事に励んでいるだけなのだ。


「や、やっぱり気が変わったので現世に戻しても貰っても良いですか?」

 先ほどがらじゃない、と言ったが訂正させてもらおう。天上界での悠々自適がサバイバル生活の事なのだとしたら、そっちの方が遙かにがらじゃない。チートがある分だけ、中世でも剣と魔法の世界の方が快適だろう。


「え?わ、分かりました。では能力を一つ選んでください」

 意外にも、神様はすんなりと了承してくれた。話の通じる人で良かった。僕は胸をなで下ろした。


「じゃあ、コレを……」


 ファミレスのメニュー表のように表示された中から欲しい能力を指さす。


「は、はい。では……こ、この能力を付与させていただきます」


 神様がぎこちない手つきでもう一度、指を鳴らす。今度は視界一面が光に包まれた。どうやら今度はキャンセル不可らしい。


「……い、いってらっしゃいませ!」


まだまだ書きためが出来ていないので、更新は一日一回で行っていきたいと考えております。


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