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「なになに赤井君神田秋が好きなの~?」


俺の中で馬鹿といえばもうバ神田で固定だ。むしろ神田以外に誰かいたっけ?なんて事さえ思う。


俺のからかい半分の質問に赤井君は首をかしげた。


「神田ってあれか?志摩さんの隣にいつもいるちょこまかしたちび?」


「そうだけど…ちげーの?」


「あのちびなら志摩さんの方が断然いいに決まってんだろーが」



ふん、と息荒く断言した赤井に森崎がニヤッ、と笑った。



「あれ、D組の君がそんな事言っていいのかな?」


「あ゛っいっ今の無し!!今の忘れろ!!」


さー、と顔を青くした赤井はぶんぶんと手を振ると小さく縮こまった。

その様子に俺達はポカン、と口をあける。


「どゆこと?」


「猫田君情報に詳しそうであんまり知らないの?」


「や、あんま興味ないから」


ふ、と馬鹿にしたような笑みを浮かべる森崎。

むしろそんな情報知ってどうすんの?つーかなんでそんな知ってんの?ストーカー?


「志摩君は久木君のものだから、D組特攻としては余計な事言って袋にされたくないんだよね?」


「久木?」


「久木竜也だろ?佐藤都留とツートップの…たしか不良達をまとめる顔みたいなもんだって」


哲平がすらすらと名前を出すので頭がこんがらがる。

実際見たことがないのであまりよくわからない。佐藤都留ならばよく志摩をからかいに教室へ来るため知っているが、D組の顔という事は頭を張っているということだろうか。



佐藤都留はよく生徒会と神田から守ってる。

ちょっかいだしてる様に見えてあれは完璧守ってる。


おそらく生徒会役員への牽制だろう。



「へー赤井君はその久木が怖いんだ」


「ばっ!!久木さんの強さをテメェはしらねぇからんな事いえんだ!!」


「きょーみないしー、俺喧嘩しないしね」


俺は喧嘩なんて荒事には全く無関係にすごしてきたわけで、バカスカ殴って殴られての生活をしている赤井君とは違うわけだ。


しばらく俺と赤井のやり取りをみていた森崎は突然、耐え切れないとでもいうように笑いだした。


「ふっあはは、くははっ」


「?」


ふふ、と笑う相手は細い指で目尻に溜まる涙を拭った。


「いや…面白い奴もいるんだなぁと思って」


「ああ、赤井君は面白いですよねー」


「違うけど…まあそう思いたいんならそう思っておけば?」


なにか含んだ言い方をする森崎に赤井と哲平は疑問符を浮かべているが俺は笑顔で対応した。


俺は神田や志摩と違ってアブノーマルな人間にすかれたくはない。極力素性を隠すのはそういった可能性の芽を摘むためでもある。

個性の強い人間は同じ個性の強い人間を見つけやすい。

俺なんて平々凡々ですから関係ありませんけど万が一というものがありますから?


「猫田君はさ、考え方が変わってるよね」


にこ、と天使のような笑顔を見せる相手に俺は目を細めて笑った。


「そりゃぁ…こーんな狭っ苦しい世界がこの世の全てだー、なんて阿呆すぎる勘違いしてる奴等に比べたら俺は大分変わってるでしょーね」


一通り俺の発言に笑い転げた森崎先輩は満足したのか俺の携帯を奪い赤外線でアドを送っていた。


俺の意思を全く無視した行動です。

ひったくるように奪われた携帯に俺はポカーンと馬鹿のように口をあけて呆然としているだけしか出来なかった。


「ふふ、なんて名前でいれよーかな」


「猫田でも猫でも小豆でも、あ、おしるこは止めてくださいねー」


「あはは!!おしるこね、いいねぇそれ。おしるこで登録しちゃお」


あ、馬鹿俺墓穴掘ったよ。

止めてください、と伸ばした手は森崎先輩に触れる寸前で止まった。


「あ゛?文句あんのか」


「な、ないでーす」


俺は伸ばした手を瞬時に引っ込めた。怖い!怖いよこの人!


「哲平ーまた昼休み潰れたなー飯抜きはきついしなー俺今日早退しよっかな」


「ほとんどお前のせいでな。つかお前短期間の間で色んな奴と知り合いになりすぎ、しかも変な奴ばっか」


仕方ないよなそれは、だってこの学校変なやつばっかだし。

むしろ普通ってあんまいない。


だってなーノーマル組でも大概はホモだもの。

ふと、早退といえば…と俺はあることを思い出した。


「なぁ志摩どうなった?」


フェンスの端に座っていた赤井君は急の俺の呼びかけに驚いたのか加えていた煙草を落としかけた。

煙草の先端がスラックスに当たったのか手で払いながら短い眉を吊り上げる。


「あっつ!えっあ!?志摩さんは俺が保健室に運ん、だ」


「え、神田きてないの?」


戻ってすぐに神田に知らせたので鉢合わせたかと思った。だがそうではなかったようだ。もしかすると俺が屋上を出て赤井君もすぐに屋上を出たのかもしれない。


「ほー、で。お前のぐっちょぐちょになったパンツは?」


「!!」


「「…パンツ?」」


にたにたと笑う俺に顔を真っ赤にする赤井。

赤外線をやりながら話を聞いていた森崎と普通に話を聞いていた哲平は声をそろえて呟いた。



「っっ羞恥プレイか」


「いや違うから。なに?もしかしてノーパン?普通の女子高生なら萌えんだけどなー残念」


「お前の頭のが残念だ」


「哲平、男のロマンでしょー」


「お前だけのだ!」


すかさずつっこんできた哲平。

俺はけらけらと笑いながら立ち上がった。


「小豆?」


「よし、やっぱ早退しよ。赤井君や、どーせノーパンなんだろ?パンツ貸してやるから付いてきなさいよ」


「さっきからノーパンノーパンるっせぇよ!!!」


ここにきていからの数十分で赤井君は変態でドMだがそう悪い奴ではない事がわかったので俺はまぁ気にしない事にした。

自分でも思うが、俺ってば軽い男だぜ。


「猫田君」



「あっおわ」


ぺいっ、と投げられた携帯をキャッチした俺はへら、と笑い屋上の階段を下りていこうとした。


「ねぇ猫田君、君は回りに無頓着かもしれないけど、周りはそうじゃない子達ばっかりだから気をつけたほうがいいよ?」


ぴた、と動きを止めた俺。

俺はくる、と顔だけ森崎に向けて笑った。


「フィニ先輩は裏でも表でも、優しいのに変わりはないんすねー」


「は」


「だって、ファンの奴等に目ぇかけて俺にも目ぇかけてる。それって優しいって証明でしょ?先輩哲平とよく似てるわ」


「はぁ!?」


「わははは」


後ろから聞こえた哲平のふざけるな、とでもいうような声に俺は笑いながら階段を駆け下りていった。その後ろをちゃんと赤井がついてきているかを確認しながら。


だっていくらドMでも目の前でノーパンでいられるのは可哀想とかじゃなくて気持ちわるすぎるからね。

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