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小豆視点



なるほど。

廊下もどこもかしこもあまりにも静かだから、よっぽどの事かと思えば。


(これはよっぽどの事だわなー。)


きぃ、と音を立てないように食堂の中に入ると生徒会専用のテーブルを囲むように大勢の人だかりが出来ていた。


その中には関わりたくない人間ベスト3には入る佐藤都留と、その隣に居る長身の全身黒の男。おそらくあれがD組の久木なのだろう。それに加えて、生徒会の阿呆メンバー。


えーと?バ神田を支えてっつーか軽く抱きしめてるのがバ会長の敷島揚羽しきしまあげは、その隣で佐藤とにらみ合ってるのが副会長。


頭抑えながらへたりこんでるのが俺から見ればきもいだけの妹尾穂波で、どっちがどっちだかわからない高菜梅&桜。


「あ、あれ?人見様がいない…」


ぽつりと見上君がこぼした。ああ、たしかに人見がいない。しかしもとより大勢で行動はしないタイプの人間だと聞くからなんら不思議ではないのかもしれない。


チラ、と隣を見ればギリギリと歯をかみ締めている赤井。

なに、なにに怒ってんの。


人だかりから少しだけ離れた場所から事のありさまを見ていたが…。バ神田、お前は本当にバ神田だな。

何かやらキャンキャン叫んでいるので一応耳を傾けてみた。


「つーかっ佐藤っつったけ?いきなり穂波の髪掴むとか最低だ!」


「アハハ、最低だもん」


「それに、、幸助が嫌がってんだろ離してやれよ!!幸助だってお前等みたいな奴等といるよりなぁっ生徒会の奴等といるほうがいいんだ!!お前等みたいに最低な事しないしっ…」


(……ぶっぶくっぶはははははごほっおえっちょ、咽た!!)


まさかのバ神田の発言に俺、爆笑。

必死に笑いをこらえるが無理だ。肩がぴくぴくと震える。


なので俺は赤井の後ろに瞬時に隠れた。

見上君は生徒会を熱いまなざしで見つめながら神田を睨んでいる。

起用だな見上君。


バ神田、お前マジでKYチャンピオンだよ、何をどうすれば生徒会の方がよく見えるんだ。どう見ても生徒会のやつらにいびられてたじゃん志摩。


それをお前は見ていなかっただけだ。いい加減気づくべきだ。


自分が信じるもの全てが真実だと思ってはいけない。

ちら、と志摩を見れば志摩は目を見開き固まっていた。

そりゃ、そうなるわよね。


「幸助はなぁっ優しいからお前等につきあってるだけで…本当はお前らのことなんかき」

「黙れ」



神田のまだ続きそうな自分勝手な理論に終止符をうったのは、久木だった。


ざ、ざ、と摺り足で神田に近寄ると神田の目には小さな恐怖が映った。

それでも負けずキッと睨み返す。



「いい加減、お前面白くないわ。だまんねぇと殺すぞ」


「殺されてーのはお前だろ、がっ!!」


――ガッ!



綺麗な床に血が飛び散った。


骨と骨がぶつかる音。

殴ったのだ、久木を。神田を強く抱きしめている会長が久木を殴りつけた。


辺りから悲鳴が上がる。


赤井が前に飛び出そうとしたが俺は慌ててその腕を掴んだ。


「離せあいつぶっ殺してやる!!」


「ちょっこら待て待て!!お前これ以上状況悪くしてどーするつもりよ!」


「あ゛!?関係ねぇよんなもん!頭に手ェ出したんだ…殴らねーと気がすまねぇ!!」


「ばっ、だぁからちょっと待てって!だからお前ついてくんなっつったのにさあ!!」


しかし体格差しかり、力の差しかり、俺は赤井君に勝てない。

このままじゃ絶対こいつ目立つし!傍にいた俺も目立つし!


緊迫した空気の中、おずおずと志摩が出てきた。

佐藤の腕をやんわりと外して前に出る。


「あ、あああのっっ、ひ、久木先輩も、もういいです…」


「ってぇ……幸助が良くても俺が」

「本当、もう止めましょ?あ、あのっ…こ、こんな空気嫌だし…それに俺が我慢すればいいだけの話だから、だから…その…」


混乱しているのかしどろもどろの志摩はぎこちない笑みを浮かべる。痛々しい、どこから見てもやせ我慢だ。


そんな志摩に久木は唇をかみ締めると佐藤の名前を呼び、生徒会の奴等を睨み、出口に向かおうとした。

もちろん、志摩を連れて。


だけどそれをしつこい馬鹿が許すわけもなく。


「っ幸助!ちょっと待てよお前等幸助連れて…」


(あ゛ーもう、どいつもこいつも……バ神田はちょっと黙るって事おぼえろ!!)


俺は人ごみの中にわざわざ混ざる、適当な場所にくるとポケットに手を突っ込み中の小銭を握った。


「っら!!」


俺は背がまぁ高い方だ、だから方向さえわかればすぐに見つかってしまう。だから中腰になって、五円玉を解らないように、投げつけた。


かこーんっ。


志摩を引きとめようとした神田の額に直撃、俺すごいよね。


「いだっ!?」


「秋!?」


突然の事にあたりは騒然となる。ざわざわと騒がしくなった食堂。

志摩や久木までもが何かと後ろを振り向いている時、俺は見上君と赤井君を置いてそそくさと食堂を逃げた。


ばれちゃ、厄介すぎるからな。

でもあまりにもバ神田がうざすぎたしそろそろ志摩が泣きそうだったので、最終手段。


俺は誰にも見つからないように、そろそろと帰った。

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