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楽しそうに顔を歪めて笑う佐藤先輩。

苦痛に悲鳴を上げる妹尾先輩。


俺は呆然と目の前の光景に固まっていた。


「いっ、た、い!!離してよ!!」


「ハァア?何?不細工がピーピー何言ってんのかわぁかんなぁい~」


(い、いやいや妹尾先輩が不細工だったら世の中ほとんど不細工以下になっちゃうんですけど……って違う違う!!)


俺が慌てて止めようとすると俺の前に隣が動いた。

いわずもがな、誰かはわかるだろう。


「お前っ何してんだよ!!!その手はなせ!!」


「あ~?バ神田~」


「急に来ていきなり何してんだって言ってんだよ!!穂波の髪はなせってば!!」


怒鳴る秋を可笑しそうに見つめる佐藤先輩。

それは秋を逆撫でするだけだとわかっていながら、佐藤先輩は笑う。


やっきになって佐藤先輩の腕を外そうとした秋、だけど佐藤先輩に逆に突き飛ばされた。ぞくりとする。

いつもからかうだけの佐藤先輩はいつだって俺を、秋を傷つけるだけの力を持っているのだ。


「「秋君!!!」」


「秋!!」


ごて、と尻餅をついた秋に駆け寄る副会長と双子。

俺は何故か動けなかった。


「秋…急じゃないよ……急にじゃないんだよ…」


蚊のなくような小さな声で吐露されるのは心の声だ。

秋はいつも何も知らないで笑っているだけだ。その裏で何があるのかわかっていない。

俺はまだこの程度で済んでいる、だがこれだけで終わらなかった生徒はたくさん居る。


未だに髪を掴まれもがく妹尾先輩。

髪を掴んでる佐藤先輩の手に俺は自分の手を重ねた。


「も、もう十分なんでっ…て、手をはなしてあげて、くっ下さい!」


「え~いいの?ふぅん、そっかぁ~竜也~舎弟君がもーいーってー」


ふいに、佐藤先輩は後ろを向いて叫んだ。


自然に食堂にいる生徒の視線も後ろへと向く。

後ろから、笑い声が聞こえた。



くつくつ、と。


ぱ、と手を離した佐藤先輩。

へた、とへたりこんだ妹尾先輩に秋は駆け寄り佐藤先輩を睨んだ。


「くっ、はははは!!!ざまぁねぇな生徒会。都留、幸助匿っとけ」


「了解~」


「へ、ちょっ!うわ!!」


生徒達が自然と脇によると真ん中を真っ黒な、塗りつぶしたような黒い髪の久木が、堂々と歩いてきた。


生徒は皆視線を合わせまいと逸らしている。

佐藤先輩に後ろに隠された俺は生徒会の奴等の視線に晒されずにすんだが…。


「久木……テメェどういうつもりだ…」


「!!」


ざわざわと煩かった食堂が、水をうったかのように一瞬にして静まり返った。

重い、ずしん、と腹の底に響くような声。


「あ、揚羽……」


秋の声が空しく響く。


「そうだよっ!!!すっっごく痛かったんだから!」


「「D組の頭がなんの用」」


口々に久木先輩への不満を叫ぶ生徒会メンバー。

俺は佐藤先輩のシャツをぎゅっ、と握った。


「あ゛ぁ?お前等がどーいうつもりだよ…うちのもんにちっくちく陰湿な視線投げて糞面白くねぇ言葉はいて……俺のもんに好き勝手してくれんじゃねーよ」


俺のもん、発言にまた食堂がざわめいた。


「そこのカスがテメェのもん?ハッ、クズにカスたぁ似合いじゃねーか」


「おー、馬鹿には馬鹿が似合いってマジだな?そこのちびとお前等お似合いだわ」


「それは僕達が馬鹿だと捉えていいのですか?」


「アハ、そー聞こえないのお?馬鹿しか見えてないから馬鹿なんデショ?馬鹿につきあわされてる舎弟ちゃんがちょー可哀想だよねぇ~」


びきっ、と副会長のこめかみに筋が入った気がしたのだが、それは気のせいだろうか。


不穏な空気を漂わせるこの空間。

俺ははらはらしながらじっとしていたのだが…ここにはどうしてもじっとしていられない奴がいた。


「なんっなんだよお前等ぁあ!!!!」


我慢しきれなかったのか、秋が叫んだ。

しん、となった周囲。


「俺は只幸助と楽しく飯食ってただけなのに急に入ってきてごちゃごちゃごちゃごちゃ…いい加減にしろ!!」


生徒会と久木先輩達を除いて、ここにいるほぼ全員は思っただろう。


いやお前がいい加減にしろ!!と。


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