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ばたん、と閉まるドア。


多分見上君はこれでもかっていうぐらい壁に耳をつけて警戒しているだろうから俺の部屋に唖然としている赤井を連れ込んだ。


「あーかーいーくーん」


「!!!」


ぱちん、と目の前で両手を叩くとハッ、と赤井が動いた。驚きをかくせないのか鋭い眼がまんまるになっている。


「てっテメェ!!なんっなんだ今の」


「なんだって…俺じゃない時の僕?」


「だっ、て…志摩さんといる時はあんな……」


未だに混乱している赤井、要領オーバー?


「志摩は特別なんだよ、可愛いから」


「…………………」


チッ、と舌打ちをする赤井に俺は小さく笑った。

なになに、悪かったって悪者にしちゃって。


「ごめんごめん、まぁそんな怒るなって」


「別に…悪役はかまわねーし。でもあのちっこい奴に言ったいい方じゃ志摩さんにもベクトルが向くんじゃねーの」


(おおっ赤井君ベクトルとか使えちゃうんだ!)


少し驚いた俺は赤井がめらめら怒っているのに気が付かなかった。

いつもみたいにへら、と笑ってみる。



「まぁ…そういう時は久木先輩?っつー人が助けてくれんだろうからいいんじゃな…」


俺の言葉は最後まで続かなかった。

その前に、頬にもんの凄い衝撃がきたからだ。


――ゴッ


右から左へ突き抜けるような衝撃に一瞬視界が暗くなる。そのまま俺は床に尻もちをつくと頭をふるって視界が戻ったことを確認する。


「っっッ……痛って~な~」


「…久木さんや佐藤さんにテメェのケツ拭かせてんじゃねーよ」


じん、と口の中が切れたのか鉛臭い。

赤井君が不良って忘れてた、だってその前の印象のが強かったしさー。


俺は喧嘩が強いわけでもなんでもないので只殴られた。

それだけの話だ。


だからここで俺が赤井に殴りかかるわけでも、赤井を罵るわけでも、泣くでも逆ギレするでも、なんでもない。


恐ろしい形相の赤井。

俺はまたへら~、と笑った。


「いいじゃない、だって愛しの志摩君の事助けれるし、もしかしたらそれで志摩があっ久木先輩格好いいっ…ってなるかもなわけでしょ?オールオッケーだろ」


「テメェ……」


昔からこんな性格だった俺は嫌われる事も多かった。

別に好き嫌いはあるんだから気にしてないし、そいつ等は口をそろえて俺に性格を少し変えろって言うけど。


それはそいつ等の好みなわけで、わざわざ俺がそいつ等の好みに合わせる必要はないだろって話。


「赤井は志摩が好きなの?じゃー守ってやればいいじゃない、頑張ってネ」


やたら守る守る、生徒会の奴等も守る守る、馬鹿すぎでしょ。どこの男が同じ男から守る守る言われて嬉しいよ?


むしろ舐めんなってなんだろ。


変わらない俺の態度に諦めたのか赤井はため息をつくと服を取りにいった。

俺はその間に部屋を出て見上君のところに行く。


理解してくれなんて思わない、勝手にしろよ。

したけりゃすればいいし、したくなけりゃ離れればいい。


そういうもんだと俺は思っている。

ドアを開けるとやはり顔をくっつけていたのかガゴッ、とドアが見上君の顔に当たった。


「うがっ」


「あ、ごめん大丈夫?」


正面衝突した見上君は赤くなった額を押さえながらうなづく。


「う、うん…それより何もされなかった!?」


がばぁっ、と抱きついてくる見上君を適当にあしらいここに来た理由を聞き出そうとした。

見上君はすこーし馬鹿だから俺の立ち直りの早さに気付いてないけど、普通なら襲われた直後は話なんか出来る状態じゃないよね。


「生徒会の皆様がいつも通り食事をなさっていたらねっ急にD組の奴等が…」


乱入してきたわけですか。


「それってまだやっているのかな?」


うん、と頷いた見上君に俺はそう、と答えた。厄介ごとに首を突っ込むのは嫌だけどそれはそれで面白そうだ。

志摩に惚れてる久木って生徒も気になる。


生徒がたくさんいる中ならただの野次馬として行ったところで問題はないだろう。


「それじゃあ…食堂に行ってみようかな」


「えっ!?あ……危ないよ!」


「ファンとして、僕が見たいだけだから」


歩き出そうと足を踏み出した時、ぐっと乗り出した体は引き止められた。


「待って!!僕も行く!!」という見上君の声と、「待ちやがれ」という赤井君の声に。


思わずずり落ちた眼鏡。俺は眼鏡のフレームを指の腹で押し上げ、二人に視線をやった。


「な…見上君…と赤井…君」


(あぶね、君つけんの忘れる所だった…。)


見上君はまぁわかるとして、、赤井だ赤井。俺の手を必死で掴む見上君をやんわりと離し赤井君を見上げる。


見上君と少し距離をとり赤井を見上げた。


「なんでついてくんの」


「べつにいいだろ」


「目立ちたくないんだけど…」


「るせぇ、いくっつったらいくんだよ」


ぼしょぼしょと話す俺。見上君そのまま俯いててね。


しかし俺がなんと言おうと行く気満々らしい赤井。

なんだよ怒ってたんじゃないの、俺まだ頬痛いんだけど。


(そういえば…まだ血拭ってなかったな…。)


見上君なんで気付かないの、いや気付かなくていいけどさ。

じんじんと痛む頬、ぴりぴりとする口元を拭うとやっぱり血が滲んでいた。


まあ腕っ節がいいんであろう赤井君に殴られてこのぐらいで済むならまだましなのかもしれない。


「まぁついてきたいならついてくればいいけど俺に迷惑かけないでね」


「かけんのはセーシだけにしといてやるよ猫田君」


「硫酸かけんぞ」


やっぱ調子狂うなぁ、と思いつつ。

未だ固くなっている見上君の肩に手をおいた。


「ね、猫田君」


「ありがとう、でも怖かったらかえっていいんだからね」


「う、うんっ」


その頑張りを人見にまわせば人見も見上君を気に入ってくれるさ、多分。


そして歩き出した俺の両隣にはキラキラした目を向けてくる見上君と、たまに冷たい目で見れば悶え息を荒くする赤井君がちゃっかり並んだ。


中心に穏やかな人畜無害なお洒落眼鏡をかけた秀才君。

実際そんな頭よくないけどね。


(これさぁ、目立つんじゃない?)


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