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引き剥がされた秋はじたばたと暴れて俺になんとか近づこうと頑張っている。


「幸助っすっごい心配したんだぞ!!」


「へ?あ、ごめんごめん」


むぅ、と頬を膨らませる秋。

俺は最初はなんの事かわからなかったが多分待たせた事だろうと思い素直に謝った。


「猫田が屋上にいるっていったから行ったのに居ないし…俺すっげ探したんだからな」


「はは、ありがとな?」


ぶすくれる秋の頭を撫でるとパァァ、と秋の顔が晴れた。


単純だ、物凄く。

いや可愛いけどさ、単純だ。


「吟なんか三山にまで聞くし…猫田が帰ってきたらあっさり引いたけどさー」


(な…っ。)



なんだって!?


うんうんと話を聞いていた俺は目を剥いた。仕方ないんだよなーアイツ、なんていいながら笑う秋。


(いやいやいや、はぁ?三山に水城先輩が話しかけた?)


「なっなんで止めなかったんだよ!?」


「え?だって俺幸助の事で一杯だったしさっ吟もそーだと思うし…なんで止める必要あるんだ?」


思わずくらっときてしまった俺。後ろで今坂先生が哀れんだ目で秋を見ている。



(ああ…この先生も猫田と同じ考え方の奴か……それより。)


水城先輩が秋みたいに俺の事考えてるわけないだろがあ!!!

どうせ秋が俺の事心配してそわそわしてるのを不機嫌になりながら見てたんだよ!!


なんで三山に近づいたのかは知らないけど……ああもう。

こういう事に気がまわらない秋は本当なんていうのかな、疲れるのは事実だ。


(猫田怒ってないといいけどな……。)


秋だって自分が生徒会役員と接触して反感を買っているのはわかっているはずなのに、それを悪いと思っていないから困ったものだ。


秋が反感をうけて攻撃されるということは三山だってされる可能性が高いということだ、そして秋とは違ってほかの生徒は後ろ盾がない。



俺はきりきりと胃が痛むのを感じて顔をしかめた。


「なんでそんな顔するんだよ?大丈夫だって!生徒会の奴等も吟も優しいからさ!!」



それは秋に対してだけだと大声で叫びたい。



後ろの今坂先生がついに笑いを堪えるまでになっている、肩がひくひく震えている。


本格的にめまいがしてきた俺は頭を抱えた。

それをまた心配そうに見てくる秋。



いやな、心配してくれるのは嬉しいんだ、嬉しいんだけどさああ!!!


もうちょっと…いや、俺は望みすぎてるのかもしれない。秋が出来ない分俺がカバーすればいい話だよな。


そう思った俺はくらくらする頭を無理やりたたき起こし秋に向かって微笑んだ。


「ありがとな、秋。そういえばもう昼は食べたのか?」


「いやっ俺幸助と食べたいから我慢してたんだ!」


ぶんぶんと顔を振る秋。

そっか、我慢したのか。


(…このまま寝かせてくれなんて口が裂けてもいえないな…。)


俺は痛む頭を我慢しつつベッドから降りた。


「あの、もう大丈夫なんで、行きます」


「本当?そんな青い顔して大丈夫?」


今坂先生のちょっと残念そうな顔。

いやそこ残念がる場所じゃないですから、できれば引き止めて!!


そんな思いもむなしく、俺は秋と結局食堂に向かう羽目になった。

なんでこの間の今日で食堂にいけるのか秋に聞いてみたい。


秋いわく、「俺そんなの気にしてないしさっ」だそうだ。


………俺は気にするんだよ!!

まさにNOといえない日本人の俺だ。





俺の後ろをついてくる赤井。俺は気になっていた事を聞いてみた。


「ねぇ赤井君、君はボクサー派かな、トランクス派かな、ブリーフ派かな」


「ボク…」

「ああブリーフ派なのか」


「…お前のキャラについてけねぇ…試練か?精神的鬼畜なのかテメェは…ハッ受けて立つぜ!!精々俺を苛めてイかせるんだな!!!」


お前のキャラのがわかんねーよ。

わかってんのはお前は妄想癖があるって事と変態のドMだって事だけだ。


「まぁ勝手に妄想するのは自由だけど勃たせないでね。あと勃っても自分で抜いてね」


「自慰プレイか…猫田は羞恥プレイが好きなんだな、いいぜ」


いやなにがだよ。

いいことなんか一つもないからね。


何を言っても無駄だと判断した俺は無言になってやった。

すると今までベラベラ喋ってたやつも急に黙る。流石に本人がまったくの無視を貫くと喋る気もうせるということだろう。


まぁもったのは2秒だけだったが。



「猫田小豆、てめぇ俺が怖くねーのか」


「………………」


「それにもう猫かぶんなくていーのかよ」


「………………」


「無視すんな犯すぞ糞猫」


「金玉潰すぞ糞馬鹿」


一方的会話にそろそろ鬱陶しくなってきた頃、適当に返答すると後ろでなにやら息が荒くなっていたので思わずため息をついた。


「めんどくせーの。なんて答えて欲しいんですかー」


人が居ないから許してるけどよー、人が居たら口にガムテープくっつけてるよ。

赤井君は少しそっぽを向いて小さくつぶやいた。


「……なんてっつーか、てめぇが何考えてんのか気になった」


「あそ?俺はねー年上にビビッてもタメにビビる程細い神経してないわけよ、あと今は他に人いないからね、赤井君だけだし。で、糞猫はないよね、」


「……変なやつ」


「褒め言葉?」


へらへらと笑えば顔をばちっと叩かれた。


「いって……パンツ貸さないよ?ノーパンだって言いふらしちゃうよ」


「へらへら笑うな気持ちわりー」


「素の笑顔ですが何か」


悪かったなへら顔しかできなくて。

でもこれが俺の巣なんです、にこっとか猫被ってるときしか出来ないんです。ぶすっと不機嫌になる赤井君に俺はなんだかどうでもよくなってきた。


「ま、どーでもいいけど変態のドMに気持ち悪いとか言われたくないよねー」


「変態じゃねぇ!!俺はお前の絶妙な感じが気に入ってたまたまイッただけだ!!」


「いやだからそれが変態なんじゃない」


「せーりげんしょーだ」


「なんで片言」


ぐぅ、と言葉に詰まった赤井はそのまま押し黙った。

丁度いい、人が多くなってきたし。


そのまま校舎を抜け寮まで来ると部屋に赤井を押し込んだ。

もちろん誰にも見られていないように気をつけながら。


人当たりのいい懐っこい猫田君とD組の不良が部屋に入っていったなんて話が出たら困るなんてものじゃない、破滅だ破滅。


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