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第五話:お嬢様学校へ行く

短くてすいません。

 エルノイア王立高等学術院に向かう朝、出発前にひと悶着あり、従業員総出の見送りをやっとの思いで阻止したアンビルは、すでに疲れ始めていた。 


 休みの者まで出てきて見送りしたいと言われても困ってしまう。明日には試験を終えて帰って来るのに、一体何故そこまでと思ってしまう。


 考えてみると王都から帰る時、いっつも引き留められ、予定日に帰れた試しがない。前回は引き留めも日程に入れた程だ。


 だから今朝くらいこっそり裏口から出掛けようと思ったら、裏口に従業員が整列しそうになって慌てて止めた。


 それなら見送りをやめる代わりに壮行会を開くと言い出した。何故もう会場と揃いの必勝ハチマキと合格祈願ハッピが用意してあるのですか。


 小一時間にわたる壮行会の末、万歳をバックに裏口から出たときにはぐったりしていた。


 「お嬢様、王立高等学術院まで馬車でお休み下さい。」


 「ありがとうロラン。少し休ませてもらいます。」


 「甘いお飲み物でもいかがですか。」


 「ありがとうティファラ、お願いします。」


 今日は夕刻までに学術院に着けば問題ない。位置的に王都の反対側で王城を回り込む形となる。


 しばらく馬車を走らせていると、


 「あれ、また回り道か。王都は工事が多いな。」勿論フラグが立つ。


 いつの間にか人気のない裏道に入り込んでいる。さらに進むといよいよ通行止めの看板が出てきた。


 ロランが引き返そうとした時、背後の道を塞ぐように男達が現れた。気が付くと前にも6人、後ろにも6人、完全に囲まれてしまった。


 「お嬢様、囲まれてしまいました。如何致しましょうか。」


 「そうですね、一応お話ししてみましょう。何か行き違いがあるかもしれないですから。」


 ティファラが馬車の扉を開けて外に出る。続いてアンビルも外に出ると、


 「ヒュー、本当に別嬪さんだな。鷹が白鳥を産んだってのは本当らしいや。」


 嫌らしい話し方で煽ってくる。周りの男達も口々に卑猥な言葉を叫ぶ。状況としてはかなり不味いだろう。


 だが、アンビルは凛として誰何する。


 「あなた方は一体何なのですか。私はアーレム商会の会頭アレムの娘アンビルです。用事もあります故、道を空けて下さい。」


 男達にしてみれば知っている話で今更である。


 「んな事あ分かってるよ。だからこうやって囲んでんだよ。怪我したくなかったら大人しくしな。」


 「やっぱり誘拐ですのね。王都でも治安は変わらないのかしら。」


 「何、訳のわかんねえ事を!」


 そう叫びながら馬車の扉の一番近くにいた男二人がアンビルに飛び掛かろうとした。


 ゴグッゴッボッ!!パキイッ?!何が起きたのか分からないが、飛び掛かった男達はその場でぐったりしている。ズルリと地面に崩れ落ちると、そこには控えていたはずのティファラが鬼の形相で一人に外門頂肘を極め、一人にワンインチパンチを叩き込んだあとだった。


 「おのれド外道共めえ~、お嬢様を侮辱するなど万死に値する!地獄で悔い改めるがいい!」


 当然彼女もアーレム商会の一員、通称アンビル守り隊、地獄のティファラ激おこである。


 「ティファラ、私の事は構いません。殺してはいけませんよ。」


 「なんと!このような者共にそのようなお優しさなど!」


 「良いのです。」


 えー、何この茶番、てか、まさかヤバいのか?


 男達は一瞬怯むが一斉に動き出す。


 「待てこらあ!」


 勿論待たずに馬車へ戻るアンビル。


 外からなんとも言えない衝撃音と、うっ、とか、ぐげっとか叫ぶ事も許されないらしい呻き声が聞こえてくる。


 椅子に座って外を見ると、すでに3人しか賊はいない。


 「ロラン、ティファラがやけに張りきってるけど、何かあったのでしょうか?」


 「いえ、特に何も聞いてませんね。そう言えば昨日食べ過ぎたから運動しないと太りそうだとか言ってましたね。」


 外を見ると既に終わっていた。


 武器を使う程ではなかったか、全員壊れた人形の様に体の一部が不自然な方を向いている。ただ倒しただけなら関節は無事なはずだ。どうやら本気で怒ってはいたらしい。


 「お待たせしました、お嬢様。先を急ぎましょう。」眼鏡を拭きながら出発前と何も変わらぬ様子でティファラは話しかける。


 「ご苦労様ティファラ。そうですね、とんだ寄り道でした。なるべく急ぎましょう。」


 この一行、誘拐など日常茶飯事過ぎてもはや業務的に対応しているのである。


 この後は無事にエルノイア王立高等学術院にたどり着いた。「行ってらっしゃいませ。」ティファラとロランに見送られながらようやくその門をくぐるのであった。



区切りが難しいです。

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