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第九話:VSパパロッティ

調子にのって導入部をすっ飛ばしてしまいました。すいません。現在は書き足してます。九話に修正しました。

 そして、合格記念セール当日はとにかく賑やかだった。


 ズラリと並ぶ屋台、あちこちで芸を披露する大道芸人、頭上に張ったロープを一輪車で渡る雑技団員。


 通りには人が溢れ、皆、笑顔で行き交っている。


 通りだけでなく、王都中の商家、商店がアーレム商会のアンビルお嬢様エルノイア王立高等学術院合格記念セールに便乗してセールを展開した。


 王都中をあげてのお祭り騒ぎになっていた。


 朝とお昼の独演会とお菓子のばらまきを終え、やっと座ってご飯を食べるアンビルであった。


 マグロの解体ショーも始まり、盛り上がる中、クンドーが付き人を伴う男性を連れて来る。立派な身なりのその男性は、


 「初めまして、アンビルお嬢様。本日はお招き頂きまして、大変光栄に御座います。」


 世界的歌手のパパロッティであった。


 「いいえ、こちらこそ、お会いできて光栄ですわ、パパロッティ様。」


 ホントに来た。パパロッティ。


 世界中のオペラハウスや王族の前で歌声を披露してきた、本物中の本物よ。2、3年先までスケジュールが埋まってる、なんて噂を聞いたような気がするけど、良いのかしら本当に。


 何か勘違いしているんじゃないでしょうか、百歩譲っても誕生日よ、まだ分かります。貴族が見栄を張って呼ぶ事もあるかもしれません。


 でも、今日のは合格祝いです。おかしいでしょ、いくら何でも合格って。試験に受かっただけです。なんだったら他に60人もいますけど。


 「アンビルお嬢様、私がエルノイア北部のキャリクル出身なのをご存じですか。」


 「いいえ、失礼ですが知りませんでした。」


 「とんでもない田舎で、両親を早くに亡くし、8歳から孤児院で育てられました。劣悪な環境で死ななかったのが不思議な程でした。


 12歳の時に状況が一変します。私のいた孤児院をアーレム商会がまるごと買い取り、十分な食事と教育を与えてくれたのです。」


 ん、この感じは?


「それから16で孤児院を出て音楽の勉強をしにラークルートへ留学させて頂きました。その時もアーレム商会に奨学金を出して頂き、運良くこうして成功する事が出来ました。」


「そしてようやく、今、恩返しにここに参った訳なのです!」


 いえ、恩返しって、合格しただけなんですけど。


 「聞けば孤児院買い取りも奨学金制度も全て幼き日のアンビルお嬢様の発案だというではありませんか。私はお嬢様に育てられたようなもので御座います。本当にありがとうございました。」


 片膝を地に付け、臣下の礼をとるパパロッティ。


 「パ、パパロッティ様、実は、その、私あんまり幼い頃の記憶がございません。ですから、その」


 アンビルは母が亡くなる以前の記憶がない。


 「そのような事は関係御座いません。私はアーレム商会、アンビルお嬢様に助けられ育てられたのですっ!」


 パパロッティからそこはかとなくアーレム臭が漂ってきた。


 「今日はお嬢様の為に歌を作って参りました。どうか感謝の気持ちと共に捧げさせて下さい。」


 知ってます、これはいつもの何を言ってもダメなやつです。


 「分かりました。楽しみにしています。」


 合格祝いって本当に知っているのでしょうか。


 「ありがとうございます、アンビルお嬢様。」


 路上コンサート会場へ連れ立って向かうと裏の路上は満員で道は人で溢れかえっていた。


 それはそうだろう、パパロッティの歌など、庶民がおいそれと耳にする機会などないのである。


 ただ舞台が余りにもあんまりだった。酒樽がいくつか並べて置いてあるだけである。


 いくら恩人の為とはいえ、世界的にも有名なパパロッティを路上で酒樽に乗せて歌わせるなど、正気とは思えない。


 アンビルは申し訳なくなり、謝ろうと隣を見ると、パパロッティ号泣である。


 「はっ?」


 「お嬢様、私が幼い頃、孤児院の仲間を集め、こうしてリサイタルを開いていたのをご存知なのですね。」


 いえ、さっき生まれは知らないと言いましたよね。リサイタルってどこのガキ大将でしょうか。アンビルは内心突っ込む。


 しかし始まったリサイタル?だが、酒樽などものともせず、流石の世界的歌手である。


 アンビルもついつい聴き惚れてしまう。


 聴衆のもの凄い拍手と歓声で我に返る。


 「それでは最後に、私の人生最大の恩人にこの歌を捧げたいと思います。」


 このリサイタル?は素晴らしく、アンビルは少し感動していた。歌を捧げられるのも悪くないかも。


 「聴いて下さい。『合格の翼に乗って』」


 アンビルは全力で逃げた。


 どんな歌か聴いてみたい気もするが無理だった。


 一つだけ安心出来た事があった。


 良かった、どうやらパパロッティさんは合格祝いとは知っていたらしい。全然喜べないけど。


 その翼に乗って学校以外の何処へ行くのか、内容が少しだけ気になったが戻る勇気はなかった。


 アーレム臭のする人の事など考えても負けなのである。


少し書き貯めますので、間隔が空くかもしれません。よろしくお願いします。

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