変わった日常
「私ねー、自分が嫌いだったんだー。戦いたくもないのに、悪者にされるし。だから、割と死にたかったけど、自殺はしたくなかった。そんな面倒くさい【邪神】様だったんだよ。」
「だから、終わりにしようと思ってねー。ミリだけは死なせたくなかったから、守りながら戦ったんだけど・・・。」
「ハッキリ言って、論外だね。」
「彼らの攻撃全てより私の『手』の方が速いし、強いし、最大の攻撃を食らっても、私のコアを吹き飛ばして、一年位休めば治るダメージを与えただけ。」
「攻撃の溜め中は隙だらけ。倒せないどころか、傷つけられる訳がないよ・・・。」
・・・兄達に対する、割と辛辣な評価。
でも、しょうがないのだろう。
それが【邪神】から見た彼らなんだ。
「でも、もう私も戦いたくないからねー。」
「・・・じゃあ、どうするの?」
「う~ん。そうだよねー。何か~・・・あ。」
何かを考え込み始めたアドラ。
暫くして、僕ではなく、ミリに問いかけた。
「ミリ。私がどこへ行こうと、付いてきてくれるかな?」
「はい。王様が、それを望むのなら。」
「フフフ。あぁ。ありがとう、ミリ。」
「大体・・・六日後位かな。」
何を話しているのだろうか。
「ミルド。私、ちょっと明日から『手』が暫く使えないから。後、極力ミリと一緒にいること。」
「うん。分かった。」
理由なんかは訊ねない。気になるのは確かだが、彼女の邪魔をするのもいけないだろう。
「うん。いい子だね。ミルドは。」
「じゃあ、さっきも言ったけど。ミリと一緒に居てね。」
そう言って、アドラは部屋から出ていった。
「・・・じゃあ、何かすることはありますか?ミリ。」
「敬語じゃなくていいですよー。じゃあ、お薬の研究をするですー。そこのビンを取ってもらえるですかー?」
「分かった。」
こうして、ミリとの六日間が始まった。
一日目。
「この木を切ってもらえるですかー?」
「分かったよ!」
「フフフ。お疲れ様。」
二日目。
「この薬草を採りに森へ行くですー!」
「分かったよ!」
「お、お疲れ様。」
三日目。
「町へ買い出しに「分かったよ!」
「・・・お疲れ様。」
そして、四日目。
大きな事件が起きた日。
「うーーー。違うのを買ってきちゃったですー。」
「はは。まぁ、まぁ。」
ミリを宥める。
最近は忙しないが、楽しくて幸せな日々を送っている。
村とは全然違う町。殴られない日々。挨拶を返してくれる人達。
「ふぅ。買えましたー。ミルドさん、帰りましょー。」
そんな幸せの中に、まるで水を差すように現れる、不幸。
「・・・ッ!ミ、ミリ?ミリなの?」
出来れば、幸せなままでいたかった。でも、神様はそれを許してくれないらしい。
急に声をかけられた。ミリの方を見ると、瞠目して、恐る恐ると言った様子で振り返っている。
僕も、後ろを見る。
黒い髪。性別。ミリと同じなのはそこだけだ。瞳の色。伸長。体格。何もかも違う。
それでも、何となく察する。
この人、ミリのお母さんだ。




