第1章 終わり
男の死体の前で、ジャンヌは祈りを捧げていた。
どんな人だろうと、死んでしまえば皆、同じようなものである。
「導いてやるのが私の役目だ…どうか安らかに眠りにつくといい」
慣れたような対応を見せるジャンヌの背中を、レオンは無言で見つめていた。
「おいレオン!」
「……」
かけられた言葉にも、反応を示さないレオン。
「あまりジロジロ見るのをやめろ」
「……」
ジロジロ見ていた覚えがない為、レオンは無視を貫いた。
「まぁ、レオンもお年頃というヤツなのだろうがな。所々破けた箇所から見える私のツヤツヤな肌を、見たいという気持ちがわからなくはない」
「ちょっと待て!誰がそんな目で見ていたというのだ」
しかし、流石に今の発言は、無視出来ないレオン。
「聞こえてるじゃないか。ほら、そんな顔をするな」
「誰の所為だと思っている!」
「……レイ。だろ?」
一瞬にして、静寂な空気がおとずれる。
言葉や態度でいくら強く見せていても、その悲しそうな表情は隠せてなどいなかった。
膝に乗せている小生意気なロボットの顔を、きちんと見る事ができないレオンに変わり、ジャンヌがそっと手をあて呟いた。
「レイ…お前のおかげで私達は救われた。お前がいたから、今日がある。明日がある。ありがとう…だから、どうか安らかに…な?」
優しく、柔らかな表情で、人と同じように、それでいて、特別な人に送るような言葉をかけるジャンヌ。
レオンの目から、大量の涙が溢れた。
お別れの時がきたのだ。
レイナにと、俺が選んだロボット。
安かったとかそういう事はなく、綺麗な髪に惹かれて買ったロボット。
そうだ!最後にレイに何かしてやろう。
「ジャンヌ…レイの願いは何だったんだ?」
叶えられる願いならば叶えてやろう。
そう考えての質問に、ジャンヌは迷う事なく答えた。
「可笑しな話だ。お前達兄妹と、本当の兄妹になりたいらしい…な?可笑しな話しだろ?」
「……!?あ、あぁ…全くだ。本当に…おか、可笑しな…話しだ」
溢れる涙をこぼしながら、レオンは呟いた。
出会った時から、兄妹だったじゃないか。と。
静まり返る部屋の中を、嗚咽だけが響くのであった。




