第1章 決断
思わず口元を手で塞ぐレオン。
そうしないと、胃の中の物を吐き出してしまいそうだったからである。
(俺が…殺した…人を?嘘だ)
苦しみながら死ねと言ったが、アレはブラフであり、自分を強く見せる為のフェイクだったはずだというのに、何故、何故こうなった?
クソ、クソっと、床を殴り続けるレオンに対し、ジャンヌはレオンの前に座って話しかけた。
「後悔しているのか?」
何に大してかを、口にはしないジャンヌ。
何に大してかなど、聞かなくても分かる事である。
「当たり前だ…俺は、俺は、人を…」
人を殺してしまったのだ。
「しかし、殺らなければ殺られていた。お互い、あるいはレイナまでもだ」
レイナというワードに、レオンの瞳に光が戻る。
「レイナ…が?」
「あぁそうだ。だってそうだろう?アイツは言っていたじゃないか」
"抱きたい時に抱く"と。
「私達が殺られていた場合、アイツはこの家をアジトとしただろう。そうなった場合、当然レイナの存在に気づくはずだ」
レイナは美少女だ。
身内びいきでも何でもなく、そう考えているレオンにとって、ジャンヌの言っている事の意味が理解できた。
「レイナの為…」
「あぁそうだ。レイの敵討ちでもあっただろ?」
「そ、そうだった…レ、レイ!?」
スッと立ち上がり、レイの頭部を持って、本体の元へと走り出した。
「頼む…目を、目を開けてくれ…レイ」
必死に呼びかけるレオンであったが、レイの返事はなかった。
「クソ、クソ、チキショウ…!?」
再び、床を殴りつけようとしたレオンは、背中から優しく包み込まれた温もりによって、思わず固まってしまった。
「なぁ、レオン。これから先も、このような事がおきるかもしれない。いや、おきるだろう。だがしかし、お前は立ち止まる事など出来ない。そうだろう?」
立ち止まってしまえば、レイナは死んでしまうということである。
「あぁ分かっている。全ては、俺自身の為に…」
人を殺し続ける覚悟を。
人を傷つける覚悟を。
己自身を壊す覚悟を。
立ち止まる事など許されるはずがない。
「だから…俺は…」
次回第1章最後となります。




