大問3 『神の国の守り手』
「結果を報告せよ」
「……」
「報告せよと言っておるのだ」
遠征先から帰って来た部下は挙動不審だった。これだけで『朕』は悟った。今回の上陸作戦は、いや。今回「も」失敗したのだと。
「え、疫病で大勢が……暴風雨で船も多数転覆し……その」
「大した言い訳だな」
「ひっ!」
部下の立ち竦む姿が、『朕』とその王国の崩壊の兆しだったのだろうか。
「もう良い。退がれ」
「こ、皇帝陛下! これは不運が」
「退がれ!」
南へ、南へと。『朕』は偉大な祖父と父の残した帝国の領土を、さながら虱を潰すかの様に広げて行くつもりだった。世界最大の領土を既に手にしていた『朕』は10万以上の兵を『神の国』へ差し向けた筈だった。
ところがどうだ。『神の国』から帰って来たのは、その内の三、四割ほど。残りはどうした、と聞くと皆死んでいったのだと言う。
『朕』の持つ海兵は、ほとんどが死んだのだ。自国の百分の一の領土すら持たぬ、小さき小さき『神の国』の兵士達に負けて死んだのだ。
疫病だの災害だの、そんな次元の話ではない。『神の国』の兵隊が強かった、それだけの事。都に上陸してしまえば、こちらの物だったのにその遥か手前で躓く始末。
「何よりも憎いのは『あの男』……神の国の守り手よ」
直接『あの男』が戦ったわけではないのだろう。だが、その強気の政治が結果的に我が軍に敗北をもたらした事は事実なのだ。
戦という物は、様々な物資を消費する。兵糧、武器、人員……そして時間。だから、我が軍はまず使者を送って無駄を減らす努力をしていた。
が、『あの男』は、『朕』の送った全ての使者を斬った。三度送ったが、三度とも斬り殺した。
「何と言う、苛烈な男よ。優秀な文官と見た私が甘かったのか……」
確かにこちらには、『神の国』を攻める大義名分は無かった。だが、今まで支配して来たどこの国も、そんな対応をする者はいなかった。『あの男』は、怒っていたのだ。侵略されまいとする小国の怒りを、大国に形で表したのだ。
聞けば、『神の国』では朕が攻める直前に反乱があったらしい。朕は知る由も無かったが、攻め込んだタイミングとしては好機だったのだ。だが『あの男』、瞬く間に反乱を鎮圧し国を一つに纏めおった。そのままバラバラにしていれば恐らく、我らは労する事無く上陸し、征服出来ていたものを……。
「そう上陸さえ出来て入れば……あの様な小国など!」
『朕』は諦めぬ。必ず、必ず『神の国』に上陸し、黄金を掻っ攫い、『あの男』を処刑して見せる。
我が国での反乱は気がかりだが……必ず、我らに傷を負わせた報いを受けさせる!
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問1:『朕』とは誰の事か?
問2:『神の国』とはどこか?
問3:『あの男』とは誰の事か?