解答2
問1:『君』=『彼』とは誰の事か?
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解1: ナポレオン・ボナパルト 『小伍長』『人命の浪費者』『コルシカの悪魔』
コルシカの生んだ鬼才にして、フランス皇帝。
フランス革命の火を受け継いだかの如く、イタリア戦役でオーストリア軍を次々に叩きのめした。
そこで生まれた数々の伝説・神話では物足りないと言わんばかりに。エジプト遠征では遠方の国々の解放・政治改革を繰り返す。
更に彼の物語は加速し、クーデターを起こし政治家のトップ(執政)、更には皇帝へと駆けあがる。
アウステルリッツ三帝会戦という、世界史史上最も芸術的な戦いも生み出した。
だが彼は、あまりにも速く走り過ぎた。欧州は彼の侵略的な改革に反発し、友好関係を装い牙を研ぎ続けていた。
敗北、そしてエルバ島への流罪。それでも彼の野望は尽きない。
王政復古が失敗するや否や、エルバ島を脱出し再び皇帝に即位。
勢いそのままに、プロイセン王国の老元帥・ブリュッヘルに勝利する。
世界をより良く。世界をよりフランス的に。世界をより自分色に……。
あまりに純粋すぎる彼の野望は、一人の英国人により阻まれる事となる。
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問2:『この村』=『あの場所』とはどこか?
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解2: ワーテルロー村 (ベルギー)
「恐らく、この地で決戦だ」
舞踏会場でナポレオンの快進撃を耳にしたその英国人は、迷わず地図上の一点を指さしたという。
そして最終決戦は、ワーテルロー村から1~2kmほど離れたモン・サンジャンの地で繰り広げられることとなった。ナポレオンはラ・ベル・アリアンスに本営を構え、眼をギラつかせて憎き英国人に戦いを挑む。
即ち、世に名高い『ワーテルローの戦い』。英雄の予言は驚くほど正確だった。
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問3:『僕』とは誰の事か?
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解3: 初代ウェリントン公爵/アーサー・ウェルズリー 『鉄の公爵 ―アイアンデューク―』
その時代、英国に二人の英雄有り。
一人は『トラファルガーの英雄』・海のホレイショー・ネルソン。
そしてもう一人が『ワーテルローの英雄』・陸のアーサー・ウェルズリー(ウェリントン)である。
ナポレオンがツーロンで華々しいデビューを飾った一方で、アーサーは初陣でいきなり自軍敗北という現実を突きつけられる。それでも彼の精神力は凄まじかった。
「負けたなら、その敗戦を糧とする事が出来る」――彼は敗北により一段成長してインドの統治へ向かう。
マイソール王国との戦争に勝ち、盗賊を征伐し、遂には司令官としてマラータ戦争に勝利。
「戦う事は、知る事だ。知ろうとする事そのものだ」
アーサーは信条そのままに、著しく成長していく。
欧州に帰還すると、彼もナポレオンと同じく勝ち続けた。だがこの二人の戦場は、悉くすれ違い続ける。スペインでアーサーが勝利すれば、彼の帰国後ナポレオンがスペインで勝利する。リスボンでアーサーとリヴォリ公爵=アンドレ・マッセナが死闘を繰り広げている間、ナポレオンの眼はロシアへ向いていた。
直接対決のないまま、アーサーは約10人のフランス将軍・元帥を退ける。
そして流罪を経て復活したナポレオンと、遂に運命のワーテルローで出会う。
戦争の天才ナポレオンに対し、アーサーが選んだ作戦はシンプルだった。一貫してミスを待つ。プロイセン軍が来るまで、耐え続ける。それが彼の軍人人生で得た最も確実なプランであった。
失敗から成長したアーサーに対し、早熟のナポレオンの能力は落ちていた。勇猛ながら指揮官としてスルトに劣るネイに指揮を、スルトに参謀を、そして最強の元帥ダブーは戦場では無くパリ防衛に回すという人選ミス……。
そしてアーサーに数日前敗北したフランスのネイ元帥は、支援なしに騎馬兵を突撃させた。
イギリス・プロイセン同盟は砲弾で騎兵に損害を与え、確実に戦力を削いでいく。それでもまだギリギリの防御戦は続く。
「もう少しでブリュッヘルの救援が来る。彼を信じて、最後の一人になるまで戦え!」
アーサーの叱咤激励はギリギリのところで同盟軍を踏みとどまらせる。そして間に合った老元帥ブリュッヘルの追撃により、同盟軍は勝利する。ナポレオンの野望は、ここで潰えたのだ。
ナポレオンとアーサー。二人の英雄が生まれたのは同じ1769年。
ナポレオン誕生の約4か月前、彼の栄光の伝説……その阻止者が産声を上げていたのだった。
次問投稿は早ければ土曜となります。