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ヤスデ修理店

 目が覚めると、硬いベッドの上だった。

 …正確には、ワークベンチを二つ繋げた物に、ボロ布をのせた物の上だ。

 ゆっくり上半身を起こすと、微かに頭に鈍痛を感じた。


「あ…!!」


 声の方に目をやると、坊ちゃん刈りの少年が立っていた。

 室内で遊んでいた様子の少年は、車のおもちゃを持ったまま俺を見て固まっている。


【ノミ】

人間 8歳

生命力/6

力/3

体力/5

知力/6

敏捷/6

運/4


(遺伝子異常有り)


 千里眼で見えたステータスはこんなだった。

 …そういえば、さっきの女の子には千里眼かけそこなったな…。

 咄嗟に「女性のステータス勝手に見て良いの?」とか思っちゃったんだよね…。

 …別にスリーサイズが見える訳でもないのに。


「お…、おねえちゃーん!!お客さん起きたよー!!」


 ノミ少年は部屋の外へ飛び出していった。


 …しばらくボーっと待っていると、ドタドタと足音が近づいてくる。


 バタン!っと勢い良く扉が開かれ…。

 部屋に飛び込んできたのは、例の女の子だった。


 細身のメリハリの『無い』体に、デニムっぽい青色のつなぎ姿。

 …なんだろう、車の整備士とか、そういった職業の人か?

 仕事の邪魔にならないようにか、肩位まではありそうな黒髪をポニーテールにまとめているし。


「本っ当にすいませんでしたぁ〜!!」


 見事な土下座だった。

 終末の世界とはいえ、ここは元・日本。

 200年経っても最上級の謝罪は土下座のようだ。

 土下座する女の子に、今度はちゃんと千里眼をかけてみる。


【チョウチョ】

人間 19歳

生命力/15

力/10

体力/9

知力/18

敏捷/10

運/8


(状態:降伏)

(遺伝子異常有り)


 …これはもう、認めざるをえないのかな…。


 うわっ…私のステータス、低すぎ…?

 さっきのノミって子供と良い勝負だったぞ…?


「私…頭に血がのぼっちゃってて…。店長の命の恩人にとんでもないことを…。」


「あぁ、えっと…。チョウチョ…さん、でしたっけ?もう大丈夫ですよ。幸いたいした怪我では無かったみたいですから。」


 どうやら俺が気を失っている間に、じいちゃんが色々と説明しておいてくれたようだった。

 …今回のことは、俺にはむしろ良い教訓になったな。


 正直まだまだ平和ボケしていた所があった。

 俺、事故で死んだのに。

 折角のPSIサイも、俺が気を抜いてたら宝の持ち腐れになっちまうな。


 チョウチョさんに頭を上げてもらうと、俺は別室に案内された。

 中に入ると、じいちゃんと先程の少年がテーブルを囲んでいた。


「やっと起きたか。俺を助けておいて俺の身内に殺されかけるとか、お前マジウケる!」


「店長は…!!本当に失礼ですよ!!」


 俺は少し安心していた。

 この世界の人って、まさかみんなじいちゃんみたいな喋り方なのかと内心不安だったんだ。

 ココに来て何人か出会った人達は、わりと普通の喋り方だったからね…。


「そいじゃあ…改めて。俺はここ、『ヤスデ修理店』の店長やってるヤスデだ。助けてもらってマジ感謝。」


「もう…店長は…。あ、私はここの店員でチョウチョっていいます。」


「そいで…、こっちのちっこいのが俺の孫でノミだ。」


「…ノミです…。おじいちゃんを助けてくれてありがとう、おじさん。」


 オウフ…。ナチュラルにおじさんとか言われちゃったよ…。

 俺まだ25歳なのに…。


「…じゃあ俺も、改めまして。俺は西郷信人って言います。」


「サイゴーノブヒト?…馬鹿みたいに長ぇ名前だな。」


「ちょ…、西郷が名字で、信人が名前ですから。」


 俺の言葉に、三人の顔色が変わったように見えた。


 え…?

 俺…なんか変な事言ったか?


「お前…、貴族だったんか?」


「え?」


「それかまさか…ファミリーの関係者なんじゃ…。」


 意味が全然分からない。

 これって200年前の人間と、今の人間とのカルチャーギャップというヤツなのだろうか…。


「…とぼけんな。名字持ちとか貴族か、勘違いした悪党位のもんだ。」


 そう言うとじいちゃんは右手で机の上のナイフを…。


「ちょ!待ってください!!俺、実はかなり遠くから旅して来たんで、こっちの常識とか分からないんですって!」


 …しばしの沈黙。


 じいちゃんはしばらく俺の目を見つめて…、ナイフを置いた。


「…悪ぃな。…俺の不注意で危険人物を店に入れちまったのかと思って、ビビったわ。」


 軽口で謝っているようだが、じいちゃんは頭を机にくっつく程に下げて謝罪している。

 

 …なんだか終末の世だってのに、色々複雑なことになってるみたいだなぁ…。

 ちょっとウンザリ気味の俺に、じいちゃんは事情を説明し始めた。

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