48
翌朝。
俺達を乗せたゴリアテは、オッサンの指示のもと集落からひたすら北へと進んで行く。
集落を出てからずっと、例の壁沿いに直進を続けている。
「…それで?これから会いに行く相手って、どんな奴等なんだ?」
『…人並外れたカリスマ性を持つ頭目と、その頭目を崇拝する狂信者どもだ。』
俺の質問にアブさんが答えた。
集落から今前まで黙りっぱなしだったのに、いきなり喋るからちょっとビックリしたぞ…。
狂信者…か。
異形の怪物が闊歩し、暴力が支配するこんな狂った世界じゃあ、力のある奴に心酔してしまう人の気持ちも、まぁ分からなくもないけど。
俺だってPSIというチート能力を貰ってなかったら、マトモな精神状態でいられる自信は無いからなぁ。
「奴等の頭目…イヨって言うんだがな、これがまた曲者でな。求心力もさることながら、実力の方も桁外れなんだ。」
…イヨ?
…え、まさかカリスマ性って、アイドル的な意味での?
マジで?
そりゃあ俺だって、前の世界にいた頃は多少なりともアイドルなんかもカバーしていたけど…。
荒廃した世界に、アイドルと熱烈なファンの集団か…。
…なんだろう、すごい場違い感が否めない…。
『その上奴等の教義なのか知らんが、揃いも揃ってほとんど裸みたいな格好をしおって…。まったく、こっちはやり辛いことこの上ない…。』
…。
「…オッサン。」
「?なんだ、怖い顔して。」
「…そんなにオッサン達がやり辛い相手なんだったら、俺が話をしてみようか?」
「…え?そりゃあ有難い話だが、本当にいいのか?」
「…いや、誰にだって相性はあるさ。それに、ここまできたら乗り掛かった船ってヤツだ。」
「…ノブさんって、結構最低ですよね…。」
「チョウチョさま、男性の反応としては正常でございますよ。…サイゴーさまは些かムッツリではございますが。」
『へっ、へっ、変態なんだなぁ!』
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
しばらく走ると、延々と続いていた壁が途切れた。
道は段々と険しくなっていき、辺りの景色も岩肌が目立つ山道といった感じになり始める。
そうこうしているうちに、うっすらと霧が景色を包みこみ始めた。
ゴリアテはフォグライトを点灯させ、千里眼を頼りに見通しのきかない道を突き進んで行く。
何度目かの急な坂道を乗り越えたる。
すると、道の先に微かにだが明かりが見えた。
「…もしかして、アレか?」
「ああ、あそこが奴等の根城だ。」
その明かりに近づくにつれて、建物の全貌が明らかになってくる。
険しい山道にあまりにも不釣合いな、メルヘンチックな西洋風の城。
未だ辛うじて点灯を続けている、カラフルなネオン管。
錆の浮き出た看板に書かれた、「ご休憩」と「ご宿泊」の文字…。
「…ラブホテルじゃねーか!!」
根城じゃなくて寝城でした。
…誰が上手いことを(ry
「?あの、『らぶほてる』って何なんですか?」
「チョウチョさま、ラブホテルとは性行為を行う為の宿でございます。」
「…はっ、はぁっ!?」
「?私の説明、分かり辛かったでしょうか?…性行為とは男性の生殖器を…」
「ちょっ!!分かりましたからっ!理解しましたから詳しく説明しないで下さいっ!!」
生産組が否生産的な漫才をし始めた…。
しっかし、よりにもよってラブホを拠点にしとるとはなぁ…。
…まぁ、部屋数や寝具には困らなそうではあるよな…。
「…気持ちは分かるぞ。俺なんて最初に来たときは、遠路はるばる歩いた挙げ句のラブホテル発見だったからな。馬鹿馬鹿しすぎて乾いた笑いが出たわ。」
…そりゃあ笑うしか無ぇわ。
しばらく呆気にとられてしまったが、気を取り直してゴリアテを前へと進めた。
淫猥を通り越して毒々しいショッキングピンクの看板には、これまたピンク色のネオンで『HOTEL 48』の文字が瞬いている。
…アイドル的な意味でか?
…いや、元々の施設を考えれば、体位的な意味の方なんだろうなぁ…。
そのまま近づこうとすると、中から数個の人影が飛び出してきた。
なにやら慌ただしい雰囲気になってきたな…。
…とか思ったけど、考えてみればコッチから建物が見えてるんだからアッチも見えてるよな。
こんな霧の中から突然ゴリアテが現れたら、騒ぎにもなるか。
「怪物かっ!?…いや、これは車かっ!?」
「なんて悪趣味な…!」
「ドクターの所の鉄砲玉か!?」
これ以上騒ぎが大きくなる前にと運転席についた外部スピーカーのスイッチを入れ、マイクに話しかけた。
『…あ~、あー。俺たちは話し合いに来た。今から降りていくから、突然攻撃とかしないでもらえると有難い。』
俺のメッセージを聞いて未だザワザワとしているようだったが、このままでは埒が明かないと意を決してゴリアテから外へと降りた。
…そんな俺を出迎えたのは、ブーメランパンツのみを身に着けた、屈強なガチムチ達の姿だった。




