一難去ってまた一ニャン
翌朝目を覚ますと、異変が起こっていた。
…鉄柵の周りに、中型犬サイズの動物が集まっていたのだ。
ただ…。
「何これ…、猫のケツ…?」
そうとしか形容のしようがない生き物だった。
姿形は、頭の無い猫。
…いや、実際は頭に相当する部位はある。
…尻尾をピンと立て、ビッシリと牙が生えた肛門が俺を威嚇している…。
…可愛さは微塵も無い。
俺はキマイラボムの恐ろしさを初めて実感していた。
「…おお、ネックレスが集まってるな。丁度良いや、朝飯にしよう。」
…今じいちゃんが恐ろしいことを言った気がする…。
俺、まだ寝ぼけてるみたいだ…。
じいちゃんはカブの荷台からボーガンを取り出すと、器用に柵を登っていく。
アレ?足怪我してなかったっけ?と思ったが、よく見るとボーガンを持った右手と怪我した左足を使わずに柵を登ってた。
じいちゃんマジ器用。
ひょいっと柵のてっぺんに腰をかけたじいちゃんは、ネックレスと呼んでいたケツ猫にボーガンの狙いを定めて引き金を引いた。
…飛び出した矢が、牙の生えた肛門に突き刺さった。
『ニ゛ャー!!』
「肛門でニャーとか鳴くんじゃねえ!!!」
まだ起きたばっかなのに…昨日と同じ位疲れてる気がする…。
矢が刺さって動かなくなったケツを、矢に結んであったワイヤーのような物をたぐり寄せて回収するじいちゃん…。
マジでアレ食うのか…。
その後、同じような狩りを繰り返し、四尻ほど狩ったところで残りのケツは逃げていった。
…じいちゃんが、ケツの毛皮を剥いでいる…。
字にすると汚すぎる。
そしてたまたま五七五になった。
だから何だ。
手際よく解体されていくケツ共に、俺は思い出したように千里眼をかけた。
【ネックレス】
動物 3歳
生命力/0
力/10
体力/11
知力/3
敏捷/14
運/2
(死亡)
生命力ってのがHP的な奴なのかな?
しかしイカンな。
クレヤボヤンスは俺の生命線なんだから、次回からは『怪物を見かけたらまず千里眼』を徹底しなければ。
小一時間後。
俺の目の前には二つの猫の丸焼きがケツを並べていた。
…最初から頭が無かったからか、はたまた火が通った姿になったからか。
もう肉だった。
忌避感はあまり無い。
…いや、もうコレが猫だと思うのはやめよう。
頭も無かったし、こういう生き物なんだ。
そう思おう。
「そういや、大昔のネックレスはちゃんと首があって、愛玩動物としてヒトに飼われてたらしいぜ。」
猫でした。
味は不味かった。
猫好きな方、申し訳ありません。