タダ飯
「…ハグッ…!ムググッ…はむっ!!」
「店員さん!このメニューのこっからここまで全部、三人前ずつお願いします!!」
「そうだ、食え食えっ!今日は全部俺が奢ってやる!好きなだけ食って、飲んで、騒いでくれ!!」
俺達は二日続けて例の店で食事中だ。
…まあ文句無しに美味いし、何よりタダ飯だ。
人の金で食う飯は格別に美味い!
「…隊長、酒代は経費じゃ落ちませんからね?」
「ぐっ…、お、俺の奢りだと言ったろう!?お前等も遠慮無く食えば良いだろう!?」
「もういただいてま〜す!あ、チョウチョさんそっちのお料理少し頂戴!」
…昨日と違うのは、防衛隊の面々も同席しているという事。
キンナラやカルラをはじめ、店は緑色のツナギを着た隊員達で貸し切り状態だった。
アシュラはひとしきり泣いた後、一転して上機嫌になり、そのまま流れで宴会となった。
美味い飯を食い、酒の入った隊員達が少々騒がしい。
…まあ俺は飯が食えれば、多少五月蝿かろうが気にしないけど。
「アシュラさま、参考までに申し上げますと、この人数で一晩飲み食いを続けた場合の支払いは、ざっと150ナットから200ナットになります。」
「…よしお前達!明日は早朝からスクラップ山の穴に潜るから、今日はここらでお開きにするぞ!」
『えぇ~!?』
突然の終了宣言にザワつく隊員達。
「アシュラ…お前から誘っておいてそりゃ酷いだろ…。」
「ぐぬぬ…。…よし、俺も女だ…!じゃああと一時間!残り一時間は好きなだけ注文しやがれ!」
でも一時間なのな。
アシュラからタイムリミットが宣言されたことにより、隊員達は我先にと追加注文をしていく。
中にはしびれを切らし、勝手に厨房に入って自分で料理し始める奴まで現れ始めた。
…何だろう、見ていて店員さんが哀れだ。
「…これって、あと一時間で収集がつくんですかね…。」
「…だ、大丈夫だ!文句言う奴は俺が責任をもってつまみ出す!」
…。
…責任、とは…?
結局その後、一時間経っても帰りたがらない隊員達を、アシュラが店外に放り出すのに更に一時間ほどかかった。
「…サイゴー…頼む、少しだけ金を貸してくれ…。」
「…アシュラ…。」
残念女2号誕生の瞬間だった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
宴会がお開きになり、帰り際に青い顔のアシュラと明日の打ち合わせだけ済ませた俺達3人は、装甲バスへと戻ってきた。
「まさか二日連続で宴会になるとはなぁ…、流石にキツイぞ…。」
「そうですねぇ。昨日は平気でしたが、いくら飲みやすいポンシュでも量が量ですからねぇ…。」
ケロっとした顔で言いやがるが、帰り道の途中で1号はゲロりやがった。
出すモン出したからかスッキリした顔しやがって…。
「お二人とも、明日の準備は私がしておきます。もうお休みになられては?」
「…悪いなベータ、甘えさせてもらうわ…。」
「あ、私も今日拾ってきたお宝の整理しますんで、ノブさんは寝てていいですよ。」
…なんか俺だけ駄目な奴みたいになってるが、お前吐いたんだからな!?
俺がシャベルで穴掘って片付けたんだからな!?
…だが言い返すだけの気力が残っていなかった俺は、今日の所はおとなしく寝る事にした。
…チョウチョめ、後で覚えてろよ…?
眠りに落ちる寸前、最近すっかりステータスチェックを忘れている事に気付き、最後の気力を振り絞って自分に千里眼を使った。
【西郷信人】
(人間戦車)(隊長のイイヒト?)
人間 25歳
生命力/13
力/8(7+補正1)
体力/8
知力/7
敏捷/6
運/7(6+補正1)
ESP/クレヤボヤンス
サイコキネシス〈制限付き〉
(状態:酩酊)
〈西郷くんへ〉
カードはどれくらい発見できたかな?
実は見つけづらい場所ほどレアなカードが配置してあるんで、頑張って集めてね!
何とか気力だけでチェックをしていた俺だったが、限界だったのかいつの間にか眠りに落ちていた…。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ノーブーさん!朝ですよぅ朝!アシュラちゃんとの約束の時間になっちゃいますよぅ?」
「…うぅ〜ん…、もうそんな時間なのか…。」
なんか全然寝た気がしないぞ…。
…そういえば、なんか寝てて五月蝿かったような気がする…。
「さぁ!顔を洗ってご飯が済んだら出かけましょう!ふんふんっ!」
「…お前、妙にテンション高くない?」
「ああ、私昨日寝てませんからね!色々いじってたら楽しくなってきちゃって!」
…昨夜の騒音はコイツか…。
って言うか、あれから寝て無いのかよ。
…そんなんで今日の探索は大丈夫なのか?
ベータが呼びに来たので朝食をサッと済ませ、顔を洗って目を覚ました俺達は防衛隊本部へ向かった。
本部へ到着すると、昨夜の連中とは思えない程規則正しく整列した防衛隊員達に俺達は出迎えられた。
「来たかサイゴー、こっちは準備万端だぞ!早速出発しよう!」
「こっちも準備OKだ。…約一名変なテンションの奴がいるけどな。」
「アシュラちゃん!今日は探索頑張りましょうね!ふんふんっ!」
「お…おう…。」
…このテンションがいつまで持つのか…。
若干の心配を残しつつ、俺達と防衛隊はスクラップ山へと移動した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
スクラップ山に到着し、穴の入口までやって来た。
アシュラは穴の前に立ち、怪訝な表情を浮かべていた。
「昨日サイゴー達が潜った穴はコレか?」
「そうだ。」
「そうか…よりにもよって『底無し穴』だとはな…。」
「?何ですか、その『底無し穴』って?」
俺が疑問に思った事をチョウチョが聞いてくれたので、俺は黙ってアシュラを見る。
「…この穴は地盤が脆くてな。過去に何人もの探索者が崩落に巻き込まれて行方不明になっているんだ。…ここに潜るとなると、大人数では危険だな。…隊を幾つかに分けよう。『底無し穴』に潜るチーム、周辺の別の穴からアプローチするチーム、この場で待機しサポートに徹するチームの3つに別れ、各チームはリーダーの指示に従う事!チームリーダーは俺、キンナラ、カルラだ。」
俺達はアシュラ隊と一緒に『底無し穴』へ、キンナラ隊が別の穴へ、カルラ隊がサポート…って事か。
今更知ったが、チームリーダーを任せるって事はカルラってただの受付嬢じゃ無かったんだな。
…あとキンナラも隊ではそこそこの役職らしい。
「あ、そうだ。昨日潜った時に穴の内部の地図を描いたんだ。万が一の為にアシュラに預けとく。」
「お、そうか。それじゃあ預かって…何だこの地図は!?恐ろしく詳細に描かれてるぞ!?お前等昨日どんだけ探索したんだ!?」
アシュラが俺の地図を見て奇声をあげた。
俺はアシュラの耳元に近付き、他の連中に聞こえないようそっと呟く。
(…俺のESPで実際歩いてない道も分かるんだよ。帰りにも確認しながら来たんで描き間違いは無いはずだ。)
(…サイゴー、ESPってのは便利なモンなんだなぁ…。さっきも言ったが、この穴は地盤が脆い。掘ってる途中で崩落する事も多いんで、正確な内部地図が無い状態だったんだがな…。)
そうこうしているうちに隊の編制も済んだようだ。
アシュラが隊を率いて穴へと向かって歩いて行く。
「サイゴー、一度に入ると崩落の危険がある。先に行くぞ。」
「おう、俺達もちょっとしたら行く。」
アシュラ隊が全員穴に入り、キンナラ隊は何処かへ行ってしまった。
カルラ隊は穴の入口付近に簡易テントのような物を張り始めた。
「…サイゴーさま、そろそろよろしいかと。」
「そうだな、俺達も行くとするか。」
「…あ…なんか私、眠くなってきたかもしれません…。」
俺はチョウチョの尻にサイコキネシスで『空気』をぶち当て、穴へと向かった。




