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一から銃

「いやぁ…実に素晴らしい!これで幾つの村が、行商の仲間たちが命を救われることか。設計図はしかるべき技術者に渡して、出来る限り早く生産体制を整えよう。」


【ハチノス】

人間 37歳

生命力/27

力/18

体力/20

知力/28

敏捷/3

運/11


(部位欠損:右足)

(遺伝子異常有り)


 ステータスチェックをしていて気付いたが、よく見ればおっさんは右足が義足だった。

体を模したような代物ではなく、金属製の棒が足首から先に付いているような感じの、粗野な作りの物だ。


「そうそう、代金だったな。物が物だけに適正価格が難しいのだが、これでいかがだろうか?」


 おっさんが机の上に置いたのは、通常の倍以上はあるサイズのナット。

 それを一束、つまり十個だ。


「?あの、これって…?」


「ノブさん、これは一つで1000ナットの価値がある『大ナット』ですよ。」


「大ナット?…これまた重そうな…。」


 一個で1000ナットってことは、1万ナット分か。

 …そうか…。


「…えぇ!?こんなにですか!?」


 あまりの金額に思考が追いつかなかった…。

 普通、設計図数枚でそんな金額をポンと出すか?


「別に驚く程でも無いだろう。この設計図がこれから生み出す利益を考えれば、多すぎるということも無いと思うが。ああ、無論誰でも買えなければ意味が無いので、法外な金額設定にするつもりは無いがね。」


 そう言われるとそうか、と思う。

 今現在この世界にどれくらいの人々が生活しているのかは知らないが、今まで無力だった人々にも怪物や略奪者に抵抗する武器が手に入るのだから。


「それと…アエオンのトラックの件だったな。こちらも確認次第、相応の金額を…と言いたい所なんだがな。第三行商団の手持ちの資金は、今渡したのでほぼ底をついてしまった。そこで相談なのだが、アエオンには今現在我々が持っている物資を丸ごと渡し、残りは書状を発行するので後日ナットで支払いという形ではいかがだろう、アエオンの使者殿。」


「とりあえずはしばらくの食料が確保できれば問題無いので、それで結構です。」


 あっさりと商談のまとまったハチノスのおっさんは、チョウチョと熱い握手を交わした。

 

「そうだ、おっ…ハチノスさん。俺用の銃器をベータに作ってもらいたいんで、火薬と金属部品を少しと、製作機材をお借りできますか?」


「おお!まさかこの場で製作するのかね!?…ウルテ、技術班を全員呼んで来い!トラックから機材も運んでくるように伝えてな!これは貴重な経験になるぞ…!」


 このおっさん、ノリノリである。

 いや、まあ気の良いおっさんなんだろうけどさ。


 しばらく待っていると機材を担いだ人達が次々とテントに入って来る。

 …ちょっと…、何人いるんだよ…。

 そこそこ広いテントとはいえ、この人数じゃいささか狭いぞ…。


「…ベータ、もし結構時間がかかるようなら、俺外で待ってていいかな?」


「作業時間は…3時間15分を予定しております。そうですね、終わりましたら声をかけさせていただきますので、どうぞ外でお寛ぎください。」


「ノブ殿は見ないのか?もったいないのぉ…。」


 いや、俺はこの先何度か見る事になるだろうし。

 俺はおっさん達に軽く会釈をし、テントの外に出た。


「ん~、なんか腹減ってきたな。」


 時刻はもう昼だ。

 駅ビルに戻って屋台にでも行こうかと思っていると、ミノとウルテが外に出てきた。


「あ、ミノさん!ちょうど良かった、昼飯奢るんで美味しい店案内してもらえませんか?」


「ノブさんも昼食ですか。それでしたら私におススメの店があるのですが、ご一緒にいかがですか?」


 ウルテさんがそう言うので、快く承諾してついて行くことにした。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「…いやぁ~、美味かった…。」


「お気に召したようで、何よりです。」


 俺はカラになったどんぶりを名残惜しく眺めていた。

 ウルテおススメの店は、ラーメンに良く似た麺を出す店だった。

 麺が少しパスタっぽかったのだが、そんなことは全く気にならない程に美味だった。


「エキの村は我々行商団が頻繁に訪れるからか、いつの間にか食事の質が高くなっていましてね。私達も訪れる度の食事が楽しみになっているんですよ。」


 ミノがコップの水を一口飲んで呟いた。

 満足げな顔を見るに、ミノの口にも合ったのだろう。


「それにしても、驚きましたよ。」


「…ああ、ベータの奴ですか。アイツ一人で何でもできるんで、俺の感じる劣等感がすごいんですがね。」


「いや、それもあるのですが。朝の件で、ミノに少し小言を言いましてね。その後姿を見ないと思っていたら、突然団長の車に『銃器の設計図を販売してもらえることになりました!』なんて言いながら飛び込んで来たものですから…、何事があったのかと。」


 ああ、そりゃそうなりますよねぇ…。

 

 店を出て、行商団のテントに戻ってみると、まだ作業は続いているみたいだった。

 …時折、テント内から歓声のようなものが聞こえるのだが、ベータは何をしてるんだ?

 

 俺の方は特にやることも…。


 あったわ。

 ステータスチェックがまだだったわ。


 【西郷信人】

(ノブさん)(サイゴーさま)

人間 25歳

生命力/12

力/7

体力/7

知力/6

敏捷/5

運/6


ESP/クレヤボヤンス

   サイコキネシス〈制限付き〉


〈西郷くんへ〉

探し物の方は順調なようだね。

実はこっちも、お待ちかねの救済処置の準備が整いました!

詳細は…次回更新にて堂々公開予定!

…それでは、楽しい終末を!

 

 …。

 …あ、体力と運が地味に上がってるぞ…。

 …この調子、この調子…。


 …。

 正直、神様のノリが分からない…。


 その後、本当に特にやることも無くなったので、ウルテさんとミノさんに頼んで行商団の売り物なんかを見せてもらったりしながら時間を潰した。


 …そして…。


「サイゴーさま、ご注文の品が完成いたしました。」


 俺達三人の所にベータとチョウチョ、おっさんがやってきた。

 ベータ以外の二人は、何と言うか…、恍惚の表情だった。


「…すごかった…、すごかったんですよベータちゃん。神懸かった精密な動作で…。」


「…いや、全ての作業が常識離れしとった…。これはもう、何としてでもソルティを我が第三行商団にも迎え入れねば…。」


 …どうやら二人にとっては至福の時間だったみたいだな。


「それじゃあ、早速見せてもらおうか。」


「はい…、こちらになります。」


 そう言ってベータが取り出した木箱には、長い筒状の銃が入っていた。


「これは…ショットガンみたいな物か?」


「おっしゃる通り、こちらはショットガンタイプの銃でございます。」


 ベータが銃を構えて、人がいない方向にある壁に向かって引き金を引く。


 …ッ!!!!


 耳をつんざくような轟音とともに、眼前の壁が大きく抉れた。


「少々音が五月蝿いのが難点でしょうか。それと連射には向きません。一度に装填できるショットシェルは2発となります。」


 2発か…、確かに少々少ない。

 それでも、俺のサイコキネシスと併用すれば充分戦力になるな。

 

「そして、こちらにご用意したのがマシンガンタイプの銃になります。」


「…はぁ?もう一丁作ったのか?」


「本来ならサイゴーさまのご要望の『連射』と『範囲攻撃』を一つの銃で両立できれば良かったのですが…、何分機材不足でございました。申し訳ございません。」


「いやいやいや!良いって!よく二丁も作ってくれたよ、ありがとなベータ。」


「…叱咤するどころか、褒めていただけるとは…。至極恐悦でございます。」


 ベータがもう一つの木箱を開けると、…なんだっけなぁ、マンガとかで見た覚えがあるんだが…。

 Tの字の形をした銃が入っていた。

 

「こちらの装弾数は30発でございます。フルオート射撃が可能ですが、少々命中精度に難があるのが及第点でしょうか。」


 …インなんとか…、何だっけなぁ…。

 …いや、ちゃんと聞いてるよ?でも何か気になっちゃってさ。


 俺が考えている間にベータの試射も終わり、二丁の銃が俺に渡された。

 …うーん、流石に俺が両方持ってても、宝の持ち腐れな気がするなぁ…。


「…よし!チョウチョ、マシンガンの方はしばらくお前に預けることにする。」


「…うぇ!?…あの、良いのでしょうか?」


 チョウチョが伺うような目で、ベータをチラリと見る。


「…もちろんでございます、チョウチョさま。チョウチョさまも既に、私の護衛対象でございます。」


 チョウチョはしばらく、マシンガンを抱いたまま目を瞑っていた。

 許可がおりたのが嬉しかったのか、はたまたベータの言葉自体が嬉しかったのか。

 

「…ドゥフフ…。チョウチョスペシャル…いや、刹那五月雨…?あえてのチョウチョブラックRXとか…。」


 銃の方だわ。

銃とか好きだけど詳しく無い系の人です。ツッコミお待ちしております。

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