まさかの説明回
ちょろちょろ書き直してます。
※色々調べてて今更勘違いに気がつきました。ESP→PSIに変更します。
「…あの…それは…、俗に言うポストアポカリプスという奴でしょうか…?」
『ポスト…何だって?そういう言葉があるのか?意味は?』
「ええと、災害やら戦争があって文明が崩壊してる的な世界観?なんですけど…。」
『ああ!じゃあそれで合ってるな。どうよ?そんな世界なんだけど。』
どうよって。
マジか。
普通、異世界転移って言えば魔法やモンスター、獣人がいるファンタジーRPGの世界が定番じゃないんすか。
それが。
どうしてこうなった。
どうも俺が行く異世界は、放射能や荒くれ拳法家、ヒャッハーな人たちが蔓延る、俺の理想とするファンタジーとはかけ離れた世界らしい。
ガッカリだよ神様…。
喜んじゃった分、余計に落ち込むよ…。
『…あのさ、俺、一応お前の考えてる事とか分かっちゃうんだわ。神様的な存在なんで。…説明、続けても大丈夫か?』
「…ああ、スンマセン…。ちょっとショックが大きかったもんで…。」
『もうわかってると思うが、残念ながら転移先はお前の望んでるような世界じゃあ無いんだ。』
…神様の話をかいつまんで説明すると。
ポストアポカリプス物でよくある設定だと、核爆弾が落ちて〜なんてのが多いけれど、俺の行く世界は少々事情が異なるらしい。
まあ結局、世界中に爆弾が落ちる所までは同じなんだそうだが、その爆弾ってのが後の世で『キマイラボム』とか呼ばれる極悪兵器で、爆弾としての威力こそソコソコなものの、一帯に住む生物の遺伝子をメチャクチャに組み替えるという最悪の爆弾だったらしい。
このキマイラボムのせいで地球上から既存の生物はほぼ絶滅し、巨大だったり異形だったりといった怪物だらけの星になってしまうと。
…核爆弾よりたちが悪いんじゃあるまいか。
『…まあさ、物は考えようだぜ?人間の遺伝子も色々と組み替わってるから、中にはお前の好きなケモミミ少女?っぽいカンジのもいるかもしれんし。』
…そんなバイオでマッドなのはケモミミ少女と言って良いのか?
それに俺が好きなのはあくまで天然モノのケモミミ少女ですし。
神様の説明は更に続く。
俺の行く世界は今から約200年後の地球だが、俺のいた地球じゃあ無い。
俗に言うパラレルワールドらしい。
神様はいくつかの地球のパラレルワールドを管理している存在らしい。
パラレルワールドと言っても、歴史上の有名人が別人になっていたり、商品名が微妙に異なったりといった程度の「if」の世界なんだそうだ。
そのパラレルワールドのどの地球でも、同じ時期にキマイラボムが落ちてしまうらしい。
折角育った文明や生態系が、この爆弾のせいで全てオジャンになってしまった。
神様からしてみれば、自分が育てていた花壇に除草剤を撒かれたような気分だったようだ。
だから神様も意地になってキマイラボムを阻止しようと色々と画策したらしいんだが、ことごとく失敗。
どうも神様自身が手を出しすぎると、時間の強制力みたいな物に邪魔されるんだそうだ。
…結局、神様でもこの運命は変えられなかった。
で。
こーなりゃせめて、崩壊後の世界で人類を導く事で運命にあらがおう、と。
どのパラレルワールドでも極少数の正常な遺伝子を持った人類は生き残るらしいのだが、時がたつにつれて過酷な環境にその数を減らしてゆき、最後は絶滅。
…ちなみに俺のいた世界は、キマイラボムが落ちて5年で正常な人類が絶滅するらしい。
なので、そんな過酷な世界の中でも可能性が高い世界に俺を送りこむと。
そこでなんとか生き延びて、繁栄しろと。
「…なんか、最後の方とか投げやりぎみじゃないっスか…?」
『バッカ、そんなわけないだろ!俺が直接干渉すると問題が起こるから、これでも練りに練った結果なんだよ!それに、お前の行く世界では生殖能力を持った正常な遺伝子の男はもういないんだが、女の方はまだいくらか生きている。…なら可能性に賭けてみるしかねーだろ。』
繁栄しろったって男が俺一人じゃ子孫はみんな俺の子供じゃん!とか思って、よくよく話を聞いてみると、どうも俺は「元・日本地区担当」らしい。
俺以外にも人類の繁栄の可能性がある地区には何人か担当の者が送り込まれると。
んで、各地の担当が頑張って子孫を増やした後は、その子供達がなんとかしろ。
…まぁそうなるか。
俺も自分の子供達が身内同士で…みたいなのは嫌だし。
「…はぁ。…まあしょうがないっスね。どっちにしろ俺は一度死んでる身ですし。…やれるだけの事はやってみますよ。」
『おお!やってくれるか!よっしゃ、頼んだぞ日本代表!』
「…前世では童貞のままで死んだんで、あんまり期待されても困りますがね。」
『…ま、まぁなんとかなるさ!そんじゃ早速送るぞ!』
神様が俺に向かって両手をかざす。
俺はあわててそれを止めた。
「…わっ!ちょ!待って下さいよ!!いくらなんでもこのまま送るのは酷くないっスか!?よくある転生モノだとチート魔法の一つも餞に持たせてくれるもんですよ!?」
俺の言葉に、神様はまたしても首を傾げる。
コイツ何言ってんの?みたいな顔で。
『…逆に聞くけどさ。お前のいた地球上に、魔法とかあったの?』
「…そりゃあ…、もちろん無いっスけど。」
『…だろ?魔法なんて無ぇよ。』
…いくらなんでも無茶だろ。
チート能力も無しにオタクの俺がどうやってヒューマン○ス様達と戦えっての。
『う〜ん…魔法は無理だが…、PSIの類いならやれんでもない。』
「…サイ?PSIって…超能力ですか?…超能力は実在してるんですか…。」
『おう。それにお前が行く200年後の世界では、遺伝子変化の影響からPSIを発現しているヤツもそこそこいるぞ。もっともお前の場合は遺伝子を書き換えたら元も子もないから、違ったアプローチで付与するがな。』
なんということでしょう。
それじゃあ何ですか?
俺が昔、TVで見て嘘臭ぁ〜と馬鹿にしていた自称・超能力者の中にも、もしかすると本物の超能力者がいたのかもしれんのか。
今更だが。
『…それじゃあ、この中から好きなものを選びな。…俺が過度に干渉すると件の強制力が働いちまうから、やれるのは一つが限界だがな。』
神様が右手を横に振ると、俺の脳内にずらりとリストが浮かぶ。
「…では、遠慮なく。」
これから行く世界で生存する為に必要な能力…。
俺はじっくりとリストを眺め、熟考の末に一つを選んだ。
『…本当にソレでいいのか?もっと実用的なPSIもあるだろうに。』
「いえ、これでお願いします。…多分、これが必要になるんです。」
『…まあお前が良いならそれでいいけどよ。そうそう、お前はこれでPSIが使える素養を持つことになる。運良く『きっかけ』があれば、他のPSIも使えるようになるかもな。』
なんと!…これはありがたい話だ。
うまくやれば他の超能力…じゃなかった、PSIも使えるかもしれんと。
俺がお礼を言おうとすると、神様は再び俺に両手をかざす。
『そんじゃ、行ってこい!頑張って繁栄しろよ!』
声を出す間も無く、視界が真っ白になる。
…こうして俺は、神様にお礼の言葉も言えないままに異世界へと旅立ったのだった。