異世界転移【ハードモード】
初投稿です。
突っ込み所だらけの小説ですが、どうぞよろしくお願いします。
気がつけば、見渡す限り一面星空だった。
…言ってる自分でも意味不明だ。
自覚はある。
ただ、そうとしか言い用が無い状況だった。
漆黒のだだっ広い空間に、煌めく星々。
たまに流星も横切っていくし。
…もう間違いようが無いでしょ。
宇宙だコレ。
俺宇宙にいるわ。
不意に、自分がドコに立っているのか気になって足元を見ると、遥か下の方に巨大な地球?が見えた。
…おおぅ…、地球は青かったってか?
今の俺の顔色もさぞかし青い事だろう…。
「…って、俺浮いてるのか!」
立っている地面なんか無かった。
地球らしい星の遥か上空、少なくとも地球全体が視界に収まるほどの高度に、俺の体は浮遊している状態だった。
…いやいや、おかしいだろ。
そもそもなんでこんな状況になってるんだっけ…?
ふと気がつけば、俺の右手には握られたままのコンビニ袋。
…あ…なんか思い出してきたぞ…。
こんな事になる前の、俺の最後の記憶…。
俺こと西郷信人は、残業が終わって帰宅する途中だった。
いつものように家で弁当を食べながらネットサーフィンをしようと、いつものコンビニに立ち寄り、翌朝の分も含めて食料を購入し、店を出た。
そこに。
ここらでは最近めっきり見かけなくなった、珍走団操るバイクが突っ込んできた。
…これが、俺が思い出した最後の記憶だ。
冷静に考えると、この状況って…。
俺、死んでるよな…。
…マジかぁ…。
うだつのあがらない会社員生活も五年を過ぎ、たまの休みはゲームかネットの日々。
特に異性とのイベントフラグも立つこともなく…。
享年25歳。
…なんとも冴えない人生だった…。
………。
…いや、まてよ…?
この状況って…すっごい覚えがある。
事故死からの見知らぬ異空間…このパターン…。
自他共に認めるオタクの俺は、良〜く知っているじゃないか。
…まだワンチャン残っている、のか…?
…そう、リーチ状態だ。
あと一つ…!この状況であと一つ要素が重なれば確定だ…!
頼む…!
死んだ俺が言うのも変だが、一生のお願いだ!
…頼むから、出てきてくれ…!!
『…なんだか必死すぎて登場しにくいなぁ…。』
「転生キターーーーーー!!!」
目の前に現れた白衣の男を見た俺は、思わず跪いて天を仰ぎ、歓喜の声をあげた。
突然の死、見知らぬ異空間ときて、妙な服装の人物の登場とくれば…。
間違い無い、異世界転生だ。
25年間、特別良い事もなかった人生だったが、死んでから最大のチャンスが来るとかどんな皮肉だ。
…欲を言えば、よくある美人の女神様だったら更に嬉しかったが。
『…どうもお前は、かなり察しの良い奴みたいだな。俺が説明しなくても、この状況を理解してるみたいだし。』
「もちろんです神様!俺は死んでしまったけれど、神様がワンチャンスくれるんですよね!!」
目の前の白衣の男…いや、俺と同い年位に見えるから白衣の青年?の問いかけに、興奮から早口気味に答える俺。
…いや、仕方が無いんだって。
興奮してたのもあったけど、自分の得意ジャンルになると早口になるもんなんだよ、オタクは。
『ワンチャンス…か。チャンスと言えば、そうなのかもな。…それじゃあ、これからお前は別の世界に転移させられるってことも、もう理解してるのか?』
「はい神様!!俺は神様から特別な魔法や伝説の武器をもらって、剣と魔法の世界に転移するんですよね!!…って転移なんですね、転生だと赤ん坊からやり直しなんで正直安心しました!」
俺は止まらない。
自分でも少し恥ずかしいくらいだが、今回ばかりは仕方が無いと諦めて下さい、神様。
…だが、ここで初めて白衣の青年は微妙な表情で首を傾げた。
『…やはり、双方の認識に少し食い違いがあるな。』
「はい?」
意味が分からずポカンとする俺を無視して、白衣の青年はアゴに手をやり何やら考え始めた。
『…なんつーか、世界観がなぁ。…説明が難しいんだよなぁ…。』
「?」
何やらブツブツつぶやいた後に、何か思いついたのかこちらを見て一言。
『お前、確かオタク気味だったよな?…じゃあさ、「北○の拳」とか「○ADMAX」って、どう思うよ?』
…その一言は、俺が理解するのに十分すぎる言葉だった。
俺の異世界転移は、どうやらハードモードが確定したようだ。