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第7章 いつもの

電気がほとんど消えて仄暗い女子寮をのっそのっそと歩く人影があった。


音無 黄鞠である。


テントという巣の中から出てきた黄鞠の目的はただ一つ。ほぼ貸し切り状態の大浴場に行くことだった。


ただそのまま女子寮にで出入りするのは誤解を招く可能性があるので、着ぐるみ(頭だけ)を着て潜入をしていた。○ビー君はやめろと言われたのでソチもんの着ぐるみを着ていた。ちょっと前一大ブームを築き上げた所謂ゆるキャラというやつである。


有名どころは梨の妖怪だ、おれあいつきらい。何故なら、名前ネタに繋がりかねないからだ。


おとなっしーだなっしーとか煽られたら、手が出そう。


ともあれゆるゆるで愛嬌のあるキャラクターが老若男女に受けたのだ、ソチもんはくまのゆるキャラである。元々のデザインはそんなことはないのだろうが、ぬいぐるみになる過程で性犯罪者の目をしたクリーチャーとなった。


多分女子にも大人気ですね。


なるべく音を立てないように抜き足差し足、熊のように歩いていく。そして電灯のついている大浴場にたどり着いた。


黄鞠は着ぐるみの上を取った。


「ぷはー、やっぱり着ぐるみは視界が悪いな。さーて今日もパパッと風呂に入ろう。」


黄鞠はクマの生首を脱衣スペースに置く。この学園は金だけは充実しているのか大浴場も広くて豪華。しかも今の俺は多人数でせまっ苦しい思いをしながら入浴する必要がないので、その開放感はまさに宇宙。


やりたい放題し放題、今この時間、この大浴場は俺様の城だ。


いえーい。


黄鞠はすぽーんと服を脱いだ。そしてタオルを巻いて浴場へと入った。


「フフーフフンフン、フンフフンフンフンフンフン、フーフフフンフン、フンフフフーン…。」


鼻歌交じりに扉をガラッと開ける。


「ふーんふふーん、あ?」


なにかがおかしい。なにがおかしいのだろうか。


それはね誰もいないはずの大浴場に人影があったから。しかも一人二人ではなく、5人ほどだ。扉を思いっきり開けたその音に視線があつまる。


何が起きたのか?


簡単なことだ。

 

女 子 が 入 っ て い た!!


その事実を受け入れるにはとてつもなく長い時間を要することになる。黄鞠は驚き戸惑っていた。今までの人生でこれほどまでに冷静さを欠いたことはなかったのだ。この時の最善の選択は扉を開けた瞬間に扉を閉めることだったことは後になれば『そりゃそうだった』と思う、しかし少なくとも今はそんな思考に至ること能わず。


そして、男が入ってきた事実を入浴していた女子たち気が付いた。


「き、キャーーーーーーーーーーーーーー!!!」


女子たちが悲鳴をあげる。


「ファッ!お前ら何でこんなところに。」


「お、男が入ってきた!?イヤーーー!誰か助けてーーー!!」


大声で話を大きくしながら、近くにあったオブジェクトをこっちに投げてくる。


石鹸、シャンプー、ケロリン等々。


「色魔、クズ、変態、強姦魔、サイコパス、歩く下半身!!」


ヒステリックになりながら変態系統の罵倒を浴びせて、なおも女子たちはオブジェクトを投げまくっていた。とにかく投げれられるものなら何でも投げていく。


「痛い、いたーい」


ガスっ!!ケロリンが顔面に命中する。


「だから痛えっつってんじゃねーか!」


ちょ、ちょっと待った。どうなってるんだこれ!!今は女子の入浴時間じゃないはずだ。なのに何でどうして?困惑して何が何だかわからない。


黄鞠は顔面に直撃したケロリンに目がくらんでいたが、何とか現状を理解しようとする。思わず前方を見ると、見覚えのある女子が顔を真っ赤にして立ち尽くしていた。


細矢 胡桃子が顔を真っ赤にして混乱していた。


「え、えええ何で音無君がここに…。」


あたふたと混乱する細矢は冷静さを欠いていた。どうすればいいかわからず慌てふためいてしまった細矢には一瞬の油断が生まれてしまった。


その油断が悲劇を呼んだ。


はらり。


細矢の身体を隠していたバスタオルがはらりと落ちる。


そしてその真正面にいた黄鞠は、そのバスタオルで隠されていた部分が露わになった姿が目に入ってしまった。その姿は細い脚に綺麗なくびれ、真っ白で雪のような肌、何よりもその大きな胸が露わになってしまった。女性の裸くらいはインターネットで見たことはあるが、生で見る女性の裸はまた別物の良さがあるとかふざけた感想を抱く余裕など、今の黄鞠にはなかった。


あれだよ、あれ。

女性型ターミネーターが裸でマシンガンを撃ちまくってきても、全く興奮しないようなあれだ。と心の中によぎったのはそんなあほな感想であったほどに今の黄鞠は冷静さを欠いていた。


普通に考えて、今考えるべきことは一刻も早くこの場から去ることでした。次やるときは直します。(次はない)


そしてその光景を見て、冷静さを失った黄鞠は完全に思考停止していた。人間本当にどうしようもないときは何も考えることが出来ないし、体が固まってしまうものだということを黄鞠は身をもって学んでいた。


「っっ!!!!」


細矢はとっさにバスタオルを拾い上げてうずくまった。そしてバスタオルをしっかりと体に巻き付けた後、拳を握りしめた。


「…エンハンス、グロウストレングス」


そう呟いた細矢は黄鞠の方に向かって走る。その表情は恥ずかしさと怒りで真っ赤だった。


「え?ちょ、ちょっと待て今のはふかこうりょ」


「バカ―――――――!!!!」


彼女の顔と拳が真っ赤に燃える。恥じらう乙女の女子力が黄鞠を襲った。細矢の女子の力とは思えないほど重い一撃が黄鞠の顔面を打ち抜く。当然、隙だらけの黄鞠にはクリーンヒットし、黄鞠はその場でふらついた。


黄鞠はふらつく体のバランスを何とか支えようとしたが、投げられてこっちに飛んできていた足元の石鹸を踏んでしまった。地面を踏みしめてバランスを取ろうとする力は摩擦でスライドし、彼の体はひっくり返った。


「おぶえ」


幸か不幸か、黄鞠は頭を打って気絶してしまった。


やがて騒ぎを聞きつけた人が浴場に集まってくる。話はこれ以上なく大きくなっていった。せっかくの申し開きも半裸で気絶している状況では、申し開きもクソもなかった。



変態男子、大浴場に侵入!?

今までおとなしかった男子が本性を現す。

性欲の化身であった男子は入浴中の女子風呂に堂々と侵入し変態行為に及んだ模様。


これ以上男子をのさばらせてはいけない。

何故なら次に狙われるのはあなたかもしれないからだ。


                     邪馬奥魔法学園 壁新聞部発行号外より抜粋



黄鞠が大浴場を覗き変態行為に及んだというお話は初代TKMMボム級の波及効果で全校生徒に広まった。


女子たちは水を得た魚、燃料を得たイナゴの如く黄鞠をバッシングする。


その翌日、黄鞠が耳を澄ますと周囲から男 変態とワードがどこからでも聞こえてくるほどだった。そして、どうしてこうなってしまったのかと苦悩する黄鞠はこう思っていた。


氏ね!!!!!


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