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第Ⅳ章 入学式

 入学式の日がやってきた。新たなる門出に期待と不安を膨らませている生徒が大半の中、とりわけ異質な存在があった。


 音無 黄鞠である。


 新入生が体育館にてずらりとパイプ椅子に座っている中で一人だけ周囲から浮きまくっており、整列されたパイプ椅子の並びは黄鞠の所だけ反発しあう磁石みたいになっていた。黄鞠は入学式の時間帯は針の筵で無限とも思える地獄の拷問を強いられることになった。


 石動先生に女装して女子して入学するという乙女の作法的な提案があったが、黄鞠は死んでも嫌だったし、もう半分ばれているので却下した。


 黄鞠はここ数日間で気分を落ち着ける術を身につけていた。


 激昂して札意が湧いてくると、金属バットを握りしめ気分を落ち着けるのだ。だが今は入学式の最中、こんなところにまで金属バットを持ち込むわけにもいかないし持ち込んだら婆を見た瞬間頃しかねなかった。


 しかも、学園長が壇上に上がってした話はあてつけかのような男性軽視のフェミニズムに富んだ発言ばかりだったのも黄鞠の札意を増長させた。


 この学校での目的は、あのタコ外道婆を何としても暗札することだと胸に刻み込んだ。でも暗札が俺の目的でも女装なんて絶対しないがな!


 長く苦しいし入学式が終わり、これから長く苦しい学園生活が始まったのである。


 黄鞠の配属されたクラスは1年A組である。入学式を終えて、それぞれのクラスへ移動して自分の席に移動しても黄鞠は客寄せパンダみたいな目を向けられていた。


 いや客寄せパンダならまだ敵意や嫌悪感が無い分まだマシだが、皆が黄鞠を見る目はまるでゴキブリを見る目のようだった。


じょうじもうおうちかえりたい。


 その時黄鞠はあることに気付いた。


じーっ


 隣から視線を感じたのだ。チラチラではなく、じーっとこちらを見ている。


 隣にいたのは銀髪で小柄で高校生とは思えないミニマムサイズの女子だった。


 魔法というものが普及してからは、その血統は一種のステータスだ。当然、そんなものかんけーねーよという一般的な家庭においてはそんなステータスなくていいし、魔法を使えるものと使えないものとも諍いは起きてはいない。


 高度に文明が進んだ結果、魔法なんてあれば便利だけどなくても全然問題ない世の中だったから魔法が使えるものと使えないものとの争いはないけれど、使えるもの同士の争いは結構シャレにならない。とそんな噂を黄鞠は聞いたことがあった。


 魔法はサラブレッド的なものがあるので、魔法使いたちは常に優秀な血統を求めているのだ。


 つまり、日本という国にもハーフやクォーターといった人たちが増えた。この女子も髪の色的にそうなんでしょう。多分名推理だと思うんですけど。


「本当に男子がいるの」


 目を合わせるといきなり話しかけてきた。いきなり話しかけられたことと、そもそも話しかけてくる女子がいると思わなかったのでちょっと困惑した。そんな黄鞠の困惑を意に介さず、隣の女子は話を続ける。


「女じゃないのに何でこの学校に入学したの?」


 無視しようかとも思ったが、あんまり敵を増やすのもどうかと思ったので答えることにする。


「好きで来たわけじゃない、無理矢理入れられたんだ。」


 女子は首をかしげる。


「腑に落ちないの。」


「それは俺が言う言葉だ、一番腑に落ちていないのは俺だっつーの」


「ちょっと手を出すの」


「テ?何でぇ」


「いいからだすの。」


 よくわからないが右手を差し出す。その手に小さく細い掌が触れる。


 黄鞠は不思議な感覚を感じた。不思議な感覚だけあって表現しづらいが決して不快な感覚ではなく、言うなれば聴診器を当てられているような感覚だった。


 数秒後、その掌を離す


「へー、貴方って結構才能があるの」


「ひょ?才能って、魔法の才能?わかるのかそんなこと」


「私にはわかるの。このくらいの才能ならスカウトされても納得なの」


 その女子は淡々と話す。あんまり表情と感情の起伏がない女子だ。


「スカウトって、あれか。一週間前に俺の決まっていた公立高校の推薦を握りつぶして、強制的にこの学校に入学させたあれか」


スカウトというか拉致じゃんよー。


「それはスカウトというより拉致なの、でも一週間前ってのはおかしいの。魔力検査の結果はもっと前に出てるはずなの」


「魔力検査って、三年の後期にやらされるあれ?」


「それなの」


「その時 インフルエンザだったから、病院で検査受けたの最近だぞ」


「それなの。検査の結果を受けて見逃さなかったの」


「俺の検査結果とか漏れているのか?個人情報とかどうなってんだよ」


「魔力検査の結果は例外的に魔法関係の教育機関には公開されるの」


「はえー」


ん?ってことはまさか。謎が解けてきたぞ!


「読めてきたぞ、だからこんなに急な話だったのか。しかも話が急だったから書類不備なんて起こしたんだ」


「書類不備でここに入学することになったの?正直、驚嘆に値するの」


「ああ、そうだ。それもこれも全部あの糞外道婆のせいなんだ」


「流石にかわいそうなの」


「でも、書類不備が分かった時点で入学取り消しでいいと思うんだけどな」


 事実、俺を含め多数の人が抗議したってほどでこれが一番の謎だ。だが、黄鞠はこの後限りなくそれっぽい答えを聞くことになる。


「あー、それはもしかするともしかするかもしれないの」


「な、何か心当たりがあるのか?」


 その女子の表情はあまり変わらなかったが、なぜか俺をかわいそうなものを見る目で見てくる。まあ、俺は十分かわいそうなものなんだけどさ。


「魔法関係の教育機関は他の魔法関係の教育機関と常に争っているの。特に素質のある学生の取り合いは顕著なものなの。優秀な卒業生はそのまま人脈につながるからなの」


「結構エグイ話なのね」


「そこで素質のある学生を確保したはいいけど、その学生は女子ではなく男子だった。男子の入学は認めたくはないけど、もしここで入学を取り消したら確実にほかの学校にとられるの。もしとられた男子生徒が優秀な卒業生になったら、その学校の人脈になって力をつけるの。入学を取り消して素質のある学生を他校に流すより、飼い殺しにする方を選んだの」


 正直、この話聞きたくなかった。

意味不明なこの入学の許可をだした理由としてはかなり信憑性に足るものだったしそれが権力争いの犠牲というのなら、人権がないじゃない。しかも、あのクソ婆だったら俺の人権認めなくても気にしなさそうなところがさらに腹立たしいのだ。


「それ、俺完全に被害者じゃねーか」


俺を地獄に叩き落とし、かつ自分の都合が悪くなるのでフォローすらしない。挙句の果てにテント生活を強いるこの学園はいつか滅びるべきじゃないんですかね?


「まあ、私の推測は所詮推測でしかないの」


「救いはないんですか」


「同情に値するの」


「その、悲しげな眼でこちらを見るのやめてもらえません?」


ようこそ絶望学園へ!!


氏ね!


「でも、ありがとうな。いろいろ教えてくれて、えーと」


 かなり話し込んでしまったが、そもそも初対面で名前も知らない人だった。


「シグノ。シグノ アンシェストなの」


「ああ、俺は音無。音無 黄鞠」


「女みたいな名前なの、だから間違えられたの」


「……そうですね」


もう何も言えない。


「同情に値するの」


 やさしさが身に染みる。地獄に仏とはこのことだ。


「はーい。皆さん、ご入学おめでとうございます」


 そういって、担任の教師が入ってきた。おめでたくなんてないです。


「私がこのクラスの担任を務めさせていただく石動 雛です。これから一年間よろしくお願いします」


 担任の教師は偶然にも、石動先生だった。そう思ったが、これ絶対偶然じゃねえな。絶対貧乏くじひかされたゾ。


「それでは、皆さんにも順番に自己紹介をお願いしますね」


嫌だよー。


 子供のころの予防注射の順番待ちのような感覚を覚えながら、自己紹介は進んでいく。


「えーと、沖田 直です。みんなよろしくー」


ん?


 黄鞠はどこかで聞いたような名前を聞いた。声の方向を向くと、そこには以前出会ったハードゲーマー系の女子、沖田 直の姿があった。


 同じ学年だったのか。しかも同じクラス。


ダブったのかな。


 その後すぐに黄鞠の自己紹介の順番が始まる。俺は気まずいし嫌なので、ささっと終わらせることにする。


 自己紹介の際にはほとんどの女子生徒はこっちを向きもしなかった。なるべく無視したい存在なんでしょうね。


「音無 黄鞠です。よろしくお願いします」


 3秒で自己紹介を終わらせて黄鞠は席に座った。多分、このクラスで今のところ最も短い自己紹介だったが、仕方ないね。


「え、えーともう少し何か一言ありませんか?」


 そこは空気呼んで流してくれよ頼むよー。


「……とくにありません」


「そ、そうですか。では次の方お願いしますね」


 その後も滞りなく自己紹介は進んでいく。黄鞠は適当に聞き流していた。しかし、その途中に黄鞠は聞き覚えのある名前を耳にする。


「土井中学校から来た細矢 胡桃子です。よろしくお願いします」


ほそやくるみこ?


 黄鞠はその名前には聞き覚えがあった。


 でも最近ではない、結構前に聞いた名前だ。保育園じゃなくて多分。小学校の頃だ。小学何年のときかは全く覚えていないし、声も顔も姿形も全く覚えていない。これが胡桃子とか珍しい名前じゃなかったら、絶対に思い出してなかっただろう。


 ただずっと苗字がほそやくで名前がるみこだと思っていたことが印象に残っていただけだ。


 うーん、多分本人何だろうけど俺が名前だけ辛うじて憶えていたぐらいだから、向こうはまったくもって俺のことを知らないだろう。それがどうしたって話ですけどね。せっかくだが赤の他人だ、他人。滞りなく自己紹介は終わり、軽くカリキュラムの説明があった後解散となった。


俺もテントに戻ろう。


 居心地がクソ悪く一刻も早くここから逃げたかったため、黄鞠は速足で学校から出た。途中、ほとんどの女子から視線を感じた。見世物じゃねーぞゴルァ!!


 黄鞠は自分のような腫物に自分から近づいてくるようなやつはいないと思ったが、玄関から外に出たとき肩を叩かれた。


 後ろを振り向くと、そこにはなんと同級生だった女子、沖田 直がいた。


「やっほー、いえーい。まさか同じクラスだったとはねー驚いたよ」


「あ、ああ俺も驚きました」


「にしてもすっごいアウェーだねー。クラスのほとんどが君の敵だよ」


もし私の願いごとが叶うのならば、人権をください。


「本当にクッソ聞きたくない情報ありがとうございます」

 

「まー元気だしなって、特別味方になってあげるとかそういうのはないけど。私自分が可愛いからね」


 男子と仲良くしてたら、他の女の子との人間関係が危なくなってしまうから仕方がない。そう言う沖田先輩?は無慈悲だったが飾らないところは結構好感持てる。


「そーですか、そりゃ立場があるだろうし構わないですけど。あのー一つ聞いてもいいですか?」


「おう、何でも聞いてあげますから」


ん?何でも聞いていいのか。じゃあ遠慮なく。


「ダブったんですか?」


ズコーっ!!沖田先輩が綺麗な芸人滑りを見せた。


「大丈夫ですか?沖田先輩」


「違ーう!何で私が留年してるみたいになってるのさ。新入生だよ新入生」


「え?何かそれにしては先輩たちと仲良さそうだったし」


「私は社交的なの!」


「そうですか……それはすみませんでした」


「敬語をやめたまえ!私は先輩じゃないんだから」


「そ、そうか。それで何しにきたんです……来たんだ?」


「そりゃ、これから一緒のクラスで過ごすわけだし、挨拶と連絡先貰おうと思って」


「それマジ!携帯電話に連絡先なんて絶対増えないと思ってたよ」


「さーて、じゃあさっそく。」


 とその時黄鞠は重大なことに気が付いた。最近携帯電話なんて全く使わないから気が付かなかったことがある。


「俺テント生活だから、携帯充電できない…」


 俺の携帯電話はただの機械の箱だってことだ。きっと今更携帯電話を持っていないといった人物より珍しいだろう。


「くう、不憫すぎて涙がでますよ」


「すみません、またの機会に」


「娯楽がないならせめて今度マンガ本でも貸しましょうか?男子にハァハァ…読んでほしい本があるんでしよハァハァ…」


 息を荒くして獣のような眼光を向けてくるその姿にはいい予感がしなかった。持っていたらさらに誤解を招きそうな本を受け取るわけにはいかない。


「本当ですか!?場合によっては焚火の燃料になりますけど」


申し訳ないが×本はNG。


「な、なんてことを!!分かりました、ホモの要素がないのをお貸しします」


この学園にホモの要素一つもないから。


「そりゃあどうも……」


「じゃ、私は行きますよー行く行く。あ、あと周りに人がいるときには私に話しかけないでくださいね。一緒にいて、友達に噂とかされると恥ずかしいし……」


 そう言って沖田先輩、いや沖田は去っていった。なんで初代TKMM知ってるんだ?守備範囲が広すぎない?


「おうちかえろう」


 黄鞠は自分の住処に帰ることにした。明日から始まる新たな学園生活はとても嫌だった。


 帰ろうと学園に背を向けたとき、後ろから服の裾を引っ張られた。ん、沖田先輩かな?黄鞠は振り向いてその姿を確認する。


 そこにいたのは、何と全く知らない女子生徒だった。


だれ?


 黄鞠の背後に立っていたのはオレンジががった茶髪の女子だった。俺を暗札死に来たんですかね?とっさに警戒し構える。


「あ、あの……音無君だよね、音無 黄鞠くん」


 そう話しかけてくる謎の女子生徒、名前を知っているということは同じクラスメイトなのかもしれない。だが、話しかけてくる意図が見えなかった。だって女子生徒は殆どが敵だって言ってたし。


「ああ、そうだけどどちら様ですか?」


黄鞠がそう聞くと、謎の女子生徒は少し表情を曇らせた。


「えっと私、細矢です。細矢 胡桃子、覚えて…ないかな」


 謎の女子生徒が恐る恐るといった様子で聞いてくる。細矢、ほそやくるみこ?黄鞠はその名前だけは辛うじて憶えていた。


「アッー!もしかして小学校が一緒だった細矢さん!?」


「やっぱり!只野小学校の音無くんだよね!一目見ただけで分かったよ」


 え、マジっすか?俺は名前しか覚えていなかったし、小学生のころ話したことがあるといった記憶はないし何より小学校の頃の事なんか全体的に覚えていないぞ。なのに覚えているなんて、記憶力いいのね。


 そして黄鞠は目の前にいるかつての同級生に全くノスタルジーを感じていなかった。黄鞠は目の前の人物の容姿を見ても初対面としか思えなかった。中学校で同じクラスになっていたともなれば覚えているが小学生の頃に同じクラスだっただけの女子の顔は一人も覚えていなかったのだ。


 仮に覚えていたとしても成長しすぎて見る影もないだろう。


 身長は伸びて、顔立ちも高校生相当になり胸のサイズも大きくなっている。面影は残っているのだろうが、面影すらも思い出せないのならばもはや初対面と同じである。


 黄鞠と彼女は中学校では全くと言っていいほど顔を合せなかった。


 ん、ちょっと待てよ、顔を合せなかったどころか同じ中学に進学してないんじゃないか?自己紹介のときには俺の卒業した中学とは別の中学だと言っていたような気がする。


 中学校では顔を合わせる可能性すらなかった可能性が存在する?


「あれ?もしかすると中学校は別だったのか?」


「あ、うん。私は魔法に適性があったから中学校は魔法特別科がある学校に進学したの」


そーなの?じゃあホントよく覚えてたっすね。


「申し訳ないけど、俺は名前しか覚えてなかったよ」


「そっかー、結構前の事だからね」


「あー、あのさ。そりゃ分かったけど何か用でもあるのか?」


「え!あー、えっと、そのあの、さっきあのあれあの」


 予想外にあたふたする細矢だった。しかし、黄鞠は『そもそも聞くことなんて一つしかない』ことに気付いた。


「って愚問だったな。そりゃここ女子高なのに何で俺がここにいるかってことだよな」


「あ、うん。そ、そうそうそれだよ。何で女子でもないのにこの学校にいるのってことだよ」


「それはだな、少し憶測が入っちゃうんだけど……」


 黄鞠はそれから聞くも涙、語るも涙、金属バットなしには語れない悲劇のストーリーを語った。


「というわけなんだ」


「そっか、そうだったんだ」


 黄鞠は金属バットなしでは語れない悲劇のお話をしたつもりだったが、細矢の表情は心なしか嬉しそうだった。


「何でちょっと嬉しそうなんだよ」


「え?いやいや別にそういうつもりじゃないよ。ただ知ってる人がいて

安心したっていうか、それだけだから!」


「そう?悪いな、ちょっと最近嫌なことがありすぎて卑屈になってるんだ」


「そうなんだ。あのっ、私困ったことがあったらいつでも相談に乗るからね!」


「あ、ああ。もしもの時は頼むよ。じゃあな」


「あっ、うん。またね」



 黄鞠はそういって去った。いいやつじゃないかと普通ならば思うだろう。ここが普通の学校であれば、あれこいつ俺に気があるんじゃね?と思ったところだ。


 だが、黄鞠は同時に沖田の言葉も気にかけていた。


 黄鞠はテントに帰る道すがら、今の出来事について考えていた。それは今の一連の出来事をどう解釈するのかである。


 細矢は確かに同級生だった、それは間違いない。だが正直に言って学級内でとりわけ会話があったわけではなく、クラスメイトという枠組みから外れた場合俺たちの関係は『他人同士』と言うに相応しい。中学校も別、なのにも関わらず俺をよく覚えているといった。


 黄鞠は細矢が話しかけてきた理由を邪推している。わざわざ接触してきた理由に裏があるかもしれないと疑っていた。


 ここは本来女子高であって、アウェーだ。アウェーは当然敵だらけだとはっきりしている。


 考えすぎかもしれないし、それに越したことはないがその行動の裏に敵意があるとしたらどうだろう。今の行動が一気にきな臭く思えてしまう。しょうじきこわい。


 ざっくり行ってしまえば、小学生が同じだったからというのを口実にハニトラ仕掛けてきてるんじゃないのってことだ。細矢の外見のレベルは高い。その容姿のレベルの高さをみたらきっと告白とかされただろうし、誰かと付き合ったこともあるかもしれない。


男を騙す技術高そう。


 それも黄鞠の疑心暗鬼の原因だった。


 そして、罪を被せて退学なんてさせられたら……まあそれはそれでいいけど完全に女性不信になるぞ。そうではないと断定できるほど黄鞠は細矢 胡桃子という人物を知らない。


 反面、腫物扱いの黄鞠に対して顔合わせでいきなり話しかけて来た。この行動は女子同士のヒエラルキーに影響してこないだろうか?入学からある程度時間がたった後なら、女子同士で結託して退学オペレーションを画策出来るかもしれないが、今の時点では人間関係なんて殆ど無いだろう。


話しかけたら立場が悪くなるかもしれないのにそのリスクを省みず話しかけてきたという視点から考えると、推測できるのは二通りある。


 細矢の行動に裏は全くない純粋な善意からの行動か、裏にドロドロの悪意を抱えた行動か二つに一つじゃねーの?黄鞠はそう推測した。


どっちにしてもこわいよー嫌だよー。


 黄鞠がこの学校に来て一つ学んだことがある。


 どんな社会もやさしさだけではできてはいない。殆ど味方のいない現状で、手放しに他人を信じてはいけない。


黄鞠は自分を戒めた。

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