第一章 はじまり
初投稿です。
文章の書き方はよく知らないので、所々無茶苦茶な文章があるかもしれません。
時代の変化を象徴するの中にはよく携帯電話やインターネットが挙げられる。
確かにそれは人々のライフスタイルを大きく変えた。
誰しもが情報を発信し、受信できる世の中というものは今では当たり前だが、昔は夢物語で想像の世界だった。猫型ロボットの愛用品もこれから現実となる世の中が来るかもしれない。
未来は誰にも予測できはしない。
現に携帯電話の爆発的な普及を誰が予測できたのだろうか。きっと、それから世界のあり方を大きく変える出来事が起こってもそんなものは誰にも予測できないほどにぶっとんでいるのかもしれない。
否、いるのかもしれないのではない。ぶっ飛んでいたのだ。
今から世紀を遡って、世界は大きく変わった。
世界を変えたのは一本の動画。複数の動画サイトにアップされた動画はあげられては消されていったが不死鳥のごとく蘇った。
かつての神話にこのような話がある。『お前のうpした動画を一日1000本消してやる』と言われた投稿者が『それならば一日1500本の動画をうpしよう』と言い返した神話である。その伝説はこの動画から始まった。
動画のタイトルは『サルでもわかる魔法の使い方』だった。
そんな怪しくて、胡散臭くて、くさそうな動画は当初誰もまともに目を向けなかった。でも、必死さすら感じられるほどの削除と最うpの応酬は2chの掲示板の住人達を熱くさせた。
何故なら胡散臭い動画ではありながら、削除の理由は不明。消すと増えるプラナリアの如き根性溢れる動画の行く末はどうなったのか?確定的な陰謀が張り巡らされたこの動画は荒らし動画やなりすましの動画などに重宝され、どこかにいるであろうこの動画の存在をなかったことにしたい者たちの思惑とは裏腹に一大ブームを築きあげてしまった。
そんな中、短文をつれづれなるままに書いて発信できる情報発信サービス『ササヤイッター』にある報告が上がった。
『魔法つかえたんだけどwwwwwww』
広い範囲に発信されたこの情報は大部分のネットユーザーに釣り針が大きすぎるとか中学生2年生並の病気と言われたが、投稿者の人脈、口コミからその信憑性は驚くほど速く拡散した。
『マジだったwwww』
『俺も使えたwwww』
『今度動画アップします』
最初の呟きが大きなうねりとなるのには1週間もかからなかった。
『サルでもわかる魔法の使い方』は本物だったのだ。
こんなことを誰が予想しただろうか?世界に魔法が広がるなんて誰が予想したのだろうか?
さて、こうなってくると当然の疑問がある。この動画は誰かから危険視され、誰かの手によって消されていったのだ。『魔法』が広がることを良しとしないものの何かしらの力が働いたことは誰にも分かっていた。
胡散くさそうな陰謀論が跳梁跋扈したが、驚くべきことにその陰謀論はそこそこ的を得ていた。
犯人は国の中枢だった。国の中枢の偉い人たちははるか昔から魔法の存在を知っていたのだ。
ここで広まった魔法というものを具体的に定義することは困難だが、まぁロープレとかシブリとかホッターとかのみんなよく知ってる空想の絵空事の魔法と言っても差し支えはないものである。魔法が広まったら、魔法による選民思想の波及や魔法による犯罪、国外でいえば戦争の在り方を変えかねないものであることだとか、魔法の存在が秘匿され続けてきたそれらしい理由は上げればいくらでもある。
…が広まってしまったものはしょうがない。もうどうにでもなーれ。
政府は魔法の存在を公に認め、魔法の存在は常識と化した。
これからの世の中を憂うものは沢山いたし、不安を口にせずにはいられない人たちもいた。ノストラダムスの大予言はこのことを指していたのだという人もいた。いつものことだ。人類は滅亡する。
でも、いくらみんなが不安がろうがどんな未来が待っていようが、時間は過ぎていく。そして現在、世界が核の炎に包まれることもなく、独裁者が登場するわけでもなく、当然世界は滅亡していない。
魔法の存在は一人一台携帯電話を持つのと同じくらい違和感を感じなくなっていた。当然、魔法が浸透していったかどうかはまた別の問題であるのだが。
そして、ここに一人の少年がいた。推薦によって早々と高校受験を終えた一人の少年の物語である。
彼は全国の新一年生と同様に新しい高校生活に期待と不安を抱いていた。確かに昨日まではそうだった。
今日の彼は憤っていた。
「ふーーざーーけーーるーーな!!」
少し不愛想で怒りっぽいが真面目でこれといった問題行動を起こしたこともない常識的な人間だと通知表で書かれていた俺でも、声を荒げてキレざるをえないことはある。
例えばそれは決まっていた入学が取り消され、いきなり別の高校に入れられ一人暮らしを強要されることになるとかだ。しかも、この通知は入学式の1週間前に来たのだ。
「いや、でも学費も寮の家賃も免除なんだし悪い話ではないと思うんだよ。」
父親からそう説明されるが、俺は納得しない。
「そもそも俺は特待生で入学が決まっていたんだ。なのに何で今更そんな話になるんだ!」
「まあいいじゃないか。簡単には入れる高校ではないんだし、きっとお前のためになると思う。」
「断る!何が悲しくて寮生活なんてしなくちゃいけないんだ。」
「もう決まったことなのよ。それにもう近高には入学辞退の連絡入れちゃったし…。」
「だから何でそれを俺に黙ってやるんだ!」
俺の怒号に両親はばつの悪そうな表情で歯切れの悪い返答しかしてこない。いきなり進学先が変わるなんてぶっ飛んだことを強要するからにはそれなりの理由がなければ納得しない。いや、あっても納得なんてしないけど。
それなのに、条件がいいだの、進学就職に有利だの、もう決まっただのカビの生えた答えしか言わないのならば俺は怒っていいはずだろう。
この先いろいろと口うるさい攻防があった。どうあがいても頑なに俺の要求を無視する両親に不満と違和感を抱えながらも、もはや俺の通うはずだった高校への入学資格はないことが判明したことと月の小遣いが両親の経済感覚からして怪しいほど貰えることになったため、俺は半ギレながらも両親の指定する高校へと進学することになった。
クソがなんでこうなったんだ。
電車で3時間、バスで30分。その高校はあった。
私立邪馬奧魔法学園
校門からして荘厳ででかい。校内の敷地は大学ほどあるんじゃないかってくらい広い。俺の通うはずだった公立近居高校の10倍くらいある。
今日は入寮の日だ。とはいっても俺はいきなり入学が決まったから本来の入寮の日とは違う。俺は胃がキリキリするのを抑えながらも、校門に足を踏み入れた。
しばらく歩いていて気付いたことがある。始業式にはもう少し日が空くが人がいないわけじゃなかった。ちらほらと人はいる。
なのだが、通りがかる人からほぼ確実に変な目で見られているような気がする。まるで不審者でも見るかのような視線はとても居心地が悪い。とにかく、俺は事前に渡されたパンフレットの簡易地図を頼りに寮に向かうことにする。
そう思って手元のパンフレットを見直していたのだが、何やら周りがざわつき始めた。何かあったのだろうか、と心配になり始めたそのときだった。
「ちょっ、ちょっとそこの人ー!! そこで何をやっているんですかー!!」
微妙に緊張感にかける女性の声が聞こえた。多少驚きはしたが別に俺が誰かに咎められる行為をしているわけでもないため、多分俺のことをじゃない他の誰かのことだろう。
そう結論付けて俺は再び歩き出した。
「ふえ、ちょっと無視しないでくださーい。あなたですそこのあなた」
え、オレェ?
何でぇ?
あたりを見回すと、女性が一人こちらに向かって走ってきている。やっぱり俺のことらしい。多分、学園の教師か何かだろう。
メガネをかけた若い女性は俺の前までたどり着くと、いったん深呼吸してこちらに指をさす。
「何でこんなところにいるんですか! ここは立ち入り禁止ですよ!」
「え! そうなんですか」
そういう看板とかもないし普通に通れると思っていた。正直言ってなぜここが立ち入り禁止なのかわからない。
「すみません、すぐにここから離れます」
あり得るとすれば時期限定の立ち入り禁止区域だってところだろうけど、何か立ち入り禁止区域にしてはちらほらと人が集まってきているような気がする。
「いや、あの分かってもらえればいいんですけど」
「あと聞きたいことがあるんですけど」
「え、えと何ですか?」
「学生寮ってどっちですか?」
俺は何の気なしに質問したつもりだったが、なぜか女性の顔つきが変わる。
「な、なな! 学生寮に行って何をするつもりですか!」
なぜか女性が声を荒げる。
「そんなの決まってるじゃないですか」
寮に行くになんて入寮の手続き意外ないと思うんですけど。
「決まってるですって!あわわわ。ダメです!とにかくそんなことは許可できません。だから今すぐ帰ってください。警察を呼びますよ。」
そういうとその女性は校門の方へ向けて俺の背中を押す。
「いや、ちょっと待ってください。俺はこの学校の新入生です」
「そんな見え透いた嘘、いくら私でも騙されません」
俺が何か悪いことをしたのだろうか。有無を言わさないその態度ははっきり言って意味不明を通り越して異常ですらある。
もしかして俺、来る学校を間違えたのか?そう考えるがすぐに否定する。校門にて学校名は確認した。間違ってるなんてありえない。
俺がこの学校に入学することは間違いないのだ。
現にその証拠はカバンの中にある。入学証明書、身分証明書。埒があかないので俺はそれらを突きつけることにした。
「くらえ!」
俺は証拠品を突きつけた。
「ん、何ですかこれ」
俺から入学証明書、身分証明書、その他諸々の動かぬ証拠を手渡されたその女性はそれらを熟読する。動かぬ証拠だけあって、その女性は金縛りにでもあったかのように固まってしまった。
その後、ぴくぴくと震える手で何度も何度も書類を確認する。そしてひきつった顔でチラチラとこっちを見る。
「え、ええ、ええええ!ありえませんこんなの。でも偽造書類には見えないし、確かに正式な書類」
「ありえないって何ですか。俺は一週間前半ば強引にこの学校の入学が決まったんです。それなのにあり得ないってどういうことですか」
「確かにこの書類は正式なものですけど、きっと何かの間違いです。そうとしか考えられません!」
この女性はなぜこんなにも頑なに否定するのだろうか。この狼狽えっぷりをみている限り、確かに何かしらのっぴきならない事情があるらしい。がそんなのっぴきならない事情って何だ?
「だって、ここ女子高ですよ!!」
女性の悲鳴にも見た叫びが轟いた。女性の狼狽えっぷりは半端なかったが、この男は同じくらい狼狽えることになる。
だってここ女子高ですよ。
女子高ですよ、プロデューサー。
女子高、女子高!!!?
「は? はあああああああああああああああああ!!」
校門を抜けると、女子高だった―