表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

コネクト 麦畑

作者: 明田ケイ

北海道では農業が盛んだ。ジャガイモにトウモロコシ、ニンジンやタマネギ。食用ユリなんてものも全国でナンバーワンである。

夏も中頃、暑いことはあっても熱いとは無縁の地で、今日も僕は、家の畑のチェックを行っていた。辺り一面、巨大な黄金色の波が、風に煽られ、横一列に手を繋いで走っていく。このまま晴天が続けば明日にでも収穫できるだろう。

麦の出来栄えに手応えを感じ、昼食を取るためにトラックへ戻って行く。するとそこに、僕のトラックの裏にもう一台、トラックが駐車されていた。おじさんは僕に気づいたのか、降車して声を投げかけてきた。

「おーい! 遠藤さーん。小麦さ、良い按配(あんべ)でできちょるね。うちのジャガイモば、いるか?」

「いつもありがとうございます。今年はいい出来ですよ。あっ、小麦持っていきます?」

僕はいたずら的な笑みを浮かべる。それに対して、おじさんは苦笑し、顔の前で手を振った。

「えがってえがって。小麦さそのまま貰っても小麦粉な変えれん。その代わり、週末、いつもの頼むな」

「りょーかいです」

そう答えるとおじさんは満足気にうなずき、またなと言っておじさんはトラックによじ登り、独特のエンジン音とともに去っていった。

「おっと、僕も帰らないと」

家では妻が待っているはずだ。娘も学校で給食の時間だろう。そう思い、マイトラックに乗って家路を急いだ

 

 週末の朝、出来たてのパンを持って役場の前にやってきた。少し冷めているけどしょうがない。数が数だ。

 近所の人からは野菜をたくさん貰っているが、僕が作っているのは小麦だったから、パッとお返しができるわけではなかった。でもそれではあまりに忍びないので、何か出来無いかと考えた結果が手作りパンを渡すことだった。小麦農家兼パン屋。それが僕のお仕事である。

 すでに楽しみに待っていてくれた人に加え、後からも一人二人とやって来てくれる。一軒ごとに回って動くのは、とてもじゃないが時間がかかって出来そうになかった。なので仕方なく足を運んでもらっているが、今ではこれが楽しい。北の人は表情が凍っていると言われることもあるけど、食べ物を食べてみんなでお喋りしていたら、誰だって表情は解けていく。そんな状況を作っていれることがたまらなく嬉しいのだ。

 五人ほど配った所でジャガイモのおじさんがやって来た。

「美味そうな匂いじゃなあ! 遠藤さんや、今日のパンは何じゃけ?」

僕はその質問を待ってましたとばかりに、自信満々に笑顔で答えた。

「今日のメニューはカレーパンですよ! 隠し味にユリ根も加えてます!」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ