夢のような出来事。その2
登校中、咲にあることを伝えられた。
「昨日の永海、変だったでしょ?」
「ああ。 少なくとも普通じゃなかったな。」
「気付いてたんだ。 あれは重い病よ……。」
「……!! び、病名は……?」
「はっきり言います。 あれは恋の病ね!!」
「は? 恋の病?」
「ま、私は監視してるから。 頑張りなさいよ?」
あの後、門の所で咲とははぐれた。
俺は、一人で靴箱へと向かいながら呟いた。
「恋の病ねぇ。」
「悩んでいるようだね?」
「あぁ。 そうなんだよ。 って玉池!?」
「みんなのアイドル! 玉池 香織ちゃんでーす!」
「で? よく俺が悩んでるのわかったな。」
「えぇっ!? スルーですか!?」
「……スルーだ。」
「はぁ。 何故わかったかと言うとだね……」
玉池は、一拍開けてから言った。
「難しい表情してるから。」
まったく、よく人のことを見てるやつだ。
「よくわかったな。 質問していいか?」
「はい。 どうぞ言ってみなよ!」
「恋の病って、どんなの?」
「…………恋の病、ですか?」
「ああ。 恋の病だぞ?」
玉池は、思い出した様に顔を紅く染め、言った。
「こ、恋の病は……病は……こういうことよっ!」
「おっ!! た、玉池!?」
「ちゃんと……抱き締めて……。」
玉池は、俺の胸に顔をうずめて抱きついて来た。
「ドキドキするでしょ……?」
「う、うん。 かなりドキドキする。」
「これが恋の病……かなっ。」
玉池は俺と目を合わせずに、ギュッと抱き締めてくる。
仕方ないな。 俺も抱き締めてやろう。
朝からカップルでもないのに抱き締め合う俺たちであった。
周りから聞こえた羨みの声は……きっと気のせいだ。