表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/30

少しの……

なんて、甘い話があればいいのに。


いやいや、ダメだろ。彼女いるもんね。


と言うか、そもそも甘い話もクソもない。俺の味覚を刺激するのは、得体の知れない〝苦味〟。唇にあるのはあたたかな感触ではなく、無駄に焼きたてほやほやの炭クッキー。


「……食え」

「うっ……」


突き刺さるような、光の消えた目で笑う夢。夢もこんな顔をするんだね。

俺だって好きでここにいるわけじゃない。死神ジョーカーが俺に微笑んでしまったのは、俺に運が無かったからだろう。でも、食べないのも失礼だよな。


「サク……」

「ど、どうかな?」


しっかりと味わって、感想を言う。


「あれ? 美味い」

「ほんと!? よかったぁ……」


◇◆◇


錬金部屋からの脱出に成功した俺は、今回の調査報告をするために部室へと向かっていた。体育館前のウォータークーラーでパサつく口の中を癒しているとき、体育館を使う部活……おそらくバスケ部の女子が話しているのが耳に入った。


「あの……なんだっけ? 最初はややこしい名前だったクラブあるじゃん?」

「あー、助け屋(仮)部でしょ?」


俺たち、そんなふうに呼ばれてたんだ。

考えたら、最近人助けなんて全然してないし、してても校内清掃ぐらいだもんな。


「噂だけど、あれ、消されるんだって」

「あって無いような部だもんね」


消される。廃部、ということなのか?


◇◆◇


「雷。食べて感想を聞かせてちょうだい」

「アドバイスとかも、お願い!」

「おぉ……ふ……」

「永海、夢、それはやめたほうが……」

「天町くんが死ん……危険だよぅ」


部室に戻ると、奇妙な風景が広がっていた。永海と夢が雷に炭クッキー(美味)を勧め、勧められた雷は断るに断れずに目を泳がせている。咲は雷を助けようと頑張り、香織は失礼極まりないことを言いかけた。


いつも通りの、見慣れた風景。


なのに、さっきバスケ部女子が話していたことが心のどこかに引っ掛かっている。


「久保っちゃん」

「久保っちゃんて呼ぶな。なんだ?」

「ちょっと……話があるんだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ