新部員と夢の過去を知るという話。その2
部室を抜け出した……逃げ出した。
学校からほど近い高級マンションの最上階の一室、高雪の表札の部屋に夢は駆け込んだ。
「はぁ。 何で……逃げてるんだろ?」
柔らかく、ふかふかのベッドに身体を預け、夢はじっと真っ白な天井を睨みつける。
「もう……やだ……いやなんだよ」
まず、同じ学校だと知ったときから歯車が狂いかけていた。
玉池 香織……さんと離れたくて。
離れたくて今の中学にお金と頭で勉強して入学し、一人暮らしを始めた。
なのに、入学式の日に玉池 香織さんを見つけたときの絶望感。
同じ制服を着て、平然と佇む姿に恐怖を感じた。
ずっと一緒。 全部一緒。
住む世界が違うはずの同級生に、付き纏われ。
なのに、何故か気が合って。
親友と呼べるレベルまで仲良くなって。
「なのに、私は……突き離す……」
仲良くしたいと思ってるのに。
身体が言うことを聞かない。 拒絶する。
「どうしたら……いいの?」
諦めるしかないのか。
でも……そんなの……絶対に……
「絶対にいや!」
天井と同じく真っ白な壁に、オレンジのハートのクッションを投げる。
ボフ! と、一瞬音が響くが、再び静寂が訪れる。
「あーあ。 私って……何のために……」
……生きている?
生きる意味って、何なのだろうか。
深く考えすぎかもしれないけれど、どうしても考えてしまう。
「私……関係築くの下手くそだなぁ」
夢は、ベランダの戸を開く。
そして、裸足で広すぎるベランダに出て、正面に輝く夕陽をぼんやりと眺める。
「……綺麗だなぁ。 もう、日没か……」
秒単位の日没カウントダウン。
太陽は明日も繰り返し登り、没する。
「私は……もう、登れないよ……」
頭の中で、今までのエピソードが次々に浮かぶ。
同じクラブの仲間。 クラスの仲間たち。
家族、親戚。 そして……玉池 香織さん。
「ごめんね……疲れてたんだ……」
そう言って、夢はベランダから半身を乗り出した。
と、同時に夕陽が完全に没した。




