二人が去るという話。(完)
その後はみんな好きなことをしたり、時折自然に集まって、いままでと何も変わらず雑談をしたりした。
突拍子もなく、「優君は、好きな人いないの?」とか、話題に出てきたりもした。
背中に冷や汗を流しながらも、さらりと回避した。
そんな俺を横目に、永海と雷はいちゃいちゃしている。
二人とも笑顔だ。 弾けるほどの笑顔。
周りのみんなも笑顔! もちろん俺も笑顔!
◇◆◇
そんなこんなで、時間が過ぎた。
「「あっ! もう、こんな時間!」」
気がつけば、六時半。
とっくに生徒の下校時間は過ぎている。
何故先生に怒られないか? そんなの……
言いにくいが、永海の脅しのおかげである。
「虎之介……桃。 行ってしまうんだな……」
「ま、暇があればいつでも遊びに来い!」
「またね。 お二人さん。」
「絶対来てよね! 待ってるから!」
「新しい学校でも、頑張ってね!」
俺たち五人の言葉に、二人は……
「はい! 絶対来ます! お土産持って!」
「みんなが来てくれても、いいんだよ?」
最後まで、元気に返事をしてくれた。
「「では、また! 絶対、会いましょう!」」
◇◆◇
新入部員の二人が、転校してしまった。
寂しい。 とても静かになった気がする。
でも、あの二人にとっては新しい一歩で旅立ちでもあるのだ。
あの二人なら、楽しくやっていけると俺は思う。
少し重い静寂が、部室を支配していた。
泣いている者はいないが、皆、思い耽っているようだ。
「コンコン……」
突然の扉をノックする音が静寂を破った。
ちょうど二人とは入れ違いになってしまったが仕方ない。
おそらく、手続きに時間がかかったのだろう。
「俺が出るよ……」
俺は、ドアをゆっくりと開く。
もちろん、扉の向こうにいた人物は……
「よっ、優! はい、好き好きのちゅー♡」
彼女の唇が、俺の頬に触れた。 きゃー!!
「おっ、おい! いきなり…、な、何を!」
「ん? ちゅー?」
「改めて言うな……心臓が爆発する。」
「んもー、照れちゃって!」
もちろん俺の彼女。 玉池 香織ちゃんである。
部室が、凍りついている。
アツアツカップルも、カチンコチンだ。
「香織? 改めて自己紹介したら?」
「うん。 そだね!」
香織は、すうっと息を吸い込んだ。
「新しく入部しました! みんなも知ってると思うけど、玉池 香織です! よろしくお願いします!」
またまた、楽しくなりそうだな。