二人が去るという話。その2
「パーティーの準備……」
「お前ら二人に任せたのが……」
「間違いだったわね……。」
現在、四時半。 虎之介と桃には、五時に来てくれと伝えてある。
で、俺、雷、永海は学校の用事をしていたから、咲と夢に準備を任せていた訳だが……。
机(長机→ゴージャス机)の上には、コップ(マグカップ→高級ティーカップ)とクッキー(何か高いやつ)が綺麗に並べられている。
「あの……これ、どうしたの?」
俺はおそるおそる夢に聞いてみる。
「買った。」
「……嘘でしょ? 合計の値段は……?」
「んー。 0が五個? 六個?」
……一、十、百、千、万…………。
雷が叫んだ。
「お嬢!! 金の乱用はやめてください!」
「え? 一ヶ月のお小遣いの四分の一だよ?」
「ほ、ほおぉぉぉぉぉ…………」
雷がばたりと床に倒れた。
もうだめだ。 雷が瀕死だもん。
「で? あと十五分で来てしまうけれど、どうするの?」
知らぬ間に十五分が経過していた。
さすが永海。 いつも冷静だな。
彼氏が瀕死だってのに、超絶ブリザードの目で見ている。
「やり直すか? もう、これでいいか。」
「「「いいんじゃない? 時間無いし。」」」
よくある女子の団結力が発動した。
実はティーカップの中の紅茶とクッキーが目当てなのは、言わずとも知れる。
◇◆◇
五時。 ぴったりに部室の扉がノックされた。
「えーっと……何か凄いね。」
「……残念ながら同意です。」
これが、部室に入ってまず発した二人の言葉だ。
「ま、それが妥当な感想だろうな。」
虎之介が俺の耳元で小さく囁く。
「……何これ? どういう状況?」
「ああ、これはな……」
まず、雷。
机に突っ伏して何かをブツブツ言っている。
聞き取れる単語は、夢、お小遣い。
次に、永海。
超絶ブリザードの目で、彼氏を見つめている。
次に、咲&夢。
二人で楽しそうにおしゃべり中。
「まぁ、見た通りだ。」
「で、ですよねーー……。」
「……じーっ…………」
「……目つきが怖いぞ? 桃さーん?」
「……じーっ…………」
桃の目線の先にあるもの……それは……
「クッキー、食べていいんだぞ? 紅茶も。」
「本当!? やったぁー!!」
桃、クッキーに一目散。 ボールを追う、犬のよう。
「「……パーティーが成り立たねぇ……。」」
俺と虎之介は、お互いに顔を見合い、苦笑いを交わすのだった。