中学二年生になったという話。
波本家の朝。
父親と母親は仕事で明け方家を出て行った。
「シャーッ」
カーテンがスライドする音がして、閉じているまぶたを太陽の光が透ける。
「んんっ……。 眩しい……。」
「優ー? 今日は始業式だよ?」
「もう……始まってしまったのか……。」
「仲間に会えるんだよ?」
俺はガバッと起き上がり、朝一番に叫んだ。
「よし! すぐに準備する!」
「鍵、ちゃんと掛けてなー!」
「はいはい。 ちゃんと掛けたよ!」
何だか懐かしい二人での登校。
無関係の人から見ればカップルに見えるかもしれないが、仲のいい双子の兄妹だ。
「ねぇ優ー? 三人変わってるかなぁ?」
「さぁな。 変わってないだろうけど。」
「あっ! 香織だ! おーい!」
パタパタと足音を立て、咲は香織さんの所に走って行った。
「あーあ。 全く朝から元気だなぁ……。」
ふっと俺の肩に何かが触れた。
「オッス波本! 春休み中も元気だったー?」
「何だ……玉池か。 お前は元気そうだな。」
玉池 美波。
去年は俺と同じクラスだった女子だ。
俺が部活外で仲良くしていた唯一の女子かな。
……さっき咲が消えた方向から冷たい視線を感じるのは気のせいだろう。
「波本! 同じクラスだったらいいね!」
「ああ。 そうだな。 お前面白いしな!」
うひひっと笑って玉池は靴箱のほうに走って行った。
「あそこかー! クラス分け表!」
驚きのクラス分け発表を俺は見ることになる。




