エピローグ 少年少女の行く末は――?――2023年
「――どう? お姉さんのお話。面白かった?」
少し夕焼けが深くなった公園で、おとぎ話を――昔話を聞いていたのは、いつの間にやら二人。
「…魔王は、幸せだったのかな。運命に呪われて、だけど最後は報われて」
残っていたのは、最初の背が高めの男の子と、途中からやってきた、その姉らしい、高校生ほどの女の子である。
「キミはどう思う? 魔王さんは、運命に見放され続けて不幸だったのか。最後は少し幸福で、幸せだったのか」
最初に威勢よく返事をした坊主頭や他のガキ共は、遠くの方で球蹴りをして遊んでいる。
「…わかりません。だって、それは体験した彼にしかわからないことだし、何より、僕はそんな境遇じゃありませんから」
現実的で、だけどどこか優しい答えが返ってくる。
「だけど、」
「え?」続いた言葉に呻きが漏れる。
「最期の一瞬だけ、彼は嬉しかったんだと思います」
そこで、少年は、傍らの女子高生と目を合わせ、その手を握る。
「大切な人の顔を見ることができたんですから」
快活な、綺麗な笑顔が二つ浮き上がった。
「――ありがと。参考になったわ。あなた達も仲良くね」
えへへ、と笑う少年に背を向けて、自分は公園を出た。
熱くなった目頭を押さえながら、団地の路地を歩く。
優柔不断だけど現実的で、大切な人のいる良い子。
最近の子にしてはよくできているじゃない。
うれしいけど悲しい気持ちを抱いて、陽が沈みかけた空を見上げる。
早く壊そう。こんな世界。
「彼達の伝説すらない世界なんて悲しすぎるもの」
球仲未來――再生と存続の女神様はそう呟くのだった。