名前はまだ無い。
吾輩は犬である。
「わぁー、ワンワンだぁ!可愛いっ!」
名前はまだ無い。
「白いから…シロだねっ」
訂正しよう、
たった今から、吾輩はシロである。
吾輩は、自由気侭な生活を
つい7秒程前まで送っていたのだ。
そう、ものの7秒で目の前の少年の飼い犬となったのである。
「お母さん、飼っても良いって言ってくれるかなぁ……」
またまた訂正しよう、
飼い犬に……なりそうである。
「ただいまぁ~」
「おかえりなさい。あら、素敵なお友達ができたのね。」
おっ、どうやら好印象のよ「元の場所に戻してらっしゃい」
…うでは無いな。
「なんで?ママぁ~、飼っても良いで「家では飼えません」…………。」
「ママぁ…このワンワン、独りぼっちで寂しそうだったんだよ?
また独りぼっちにさせちゃうの?」
こやつ……
吾輩は好きで独りでいた訳なんだが、心麗しき少年なのだな。
よし!
吾輩はこの少年を主とし、付き従う事をここに誓おう。
「じゃあ新太郎が…毎日ご飯あげたり、お散歩できるの?」
「うんっ!ママっ、飼っても良いのっ?」
「新太郎が約束できるならね!」
「本当!?ありがとう、ママっ!
これからよろしくねっ、シロっ」
この日から
シロは
原田 新太郎(6)の
飼い犬になったのである。