星なき夜のアウロライズ 第二話 歌う魔剣
ドォォォォォォン!!
大地が、悲鳴を上げた。
丘の麓から、耳を裂く警鐘が響き渡る。
カン! カン! カン! カン!
「ライル、何が起こっているの……!?」
指さした先で、街を照らしていた最後の希望――
魔石の光が、次々と消えていく。
漆黒の闇が、刻々と街を呑み込んでいく。
「……逃げろ、リノン」
ライルが剣を抜いた。
その顔は、今まで見たことがないほど蒼白だった。
「旅の始まりは、中止だ」
闇の向こうで、何かが蠢く。
数千の獣の咆哮が重なり、ひとつの音になる。
「来るぞ」
ライルの声が、震えた。
「――『世界を喰い終えた』奴らが」
夜は、まだ。
何ひとつ、終わっていなかった。
いや、むしろ、始まったばかりかもしれない。
ドォォォォォォン!!
大地が裂けた。
丘が揺れ、空気が破裂し、何かが吼えた。
「伏せろ、リノン~!!」
ライルに突き飛ばされ、あたしは地面を転がる。
次の瞬間、丘の麓の村が、闇に噛み砕かれた。
それは、巨大な獣だった。
いや、獣の形を借りた"夜"そのもの。
巨大な胴体は黒煙のように輪郭が曖昧で、
鬼のような頭、無数の蛇の尾、猛禽の翼。
そして、目が無数にあった。
闇の奥で、星の名残のように冷たく瞬いている。
魔石灯が次々と潰され、光が悲鳴をあげたように消える。
闇が、物理的な質量をもって村へ流れ込んだ。
「世界喰い……か!」
ライルが歯を食いしばる。
剣を振るう。
白銀の剣閃が夜を裂いた。
だが、斬ったはずの闇が、笑った。
刃が通った部分から、黒い靄が溢れ、
次の瞬間、影が牙となってライルを弾き飛ばす。
「っ……!」
「ライル!!」
あたしは『アウロライズ』を抜いた。
歌う剣が、今までにない高い音を放つ。
――チリリン、チリリン。
祈りのような、悲鳴のような音。「行け……魔剣よ!」




