chapter4 お披露目その1
サプライズをしようと決意してから数日。
オレは、いつ・どのタイミングで“お披露目”すべきか、ずっと考えていた。
夜は、完全にアウト。
父上も母上も日中は忙しくしてる姿をよく見るし、夜に見せてしまったら、興奮で寝られなくなるかもしれない。
そうなると、翌日に響くかもしれないしな。
だから、お披露目は――朝か昼がベストだろう。
そう考えながら、今日もオレは母上に抱かれて、父上が兄姉に剣術の稽古をしている様子をじっと見つめていた。
■ ■ ■ ■
そして、翌朝。
いつもどおり母上が迎えに来てくれて、リビングに向かって歩き出す。
きっとこのまま朝食の時間になるだろう――
チャンスだ。今日、お披露目してしまおう。
ちなみに補足しておくと、オレが“言葉を発する”ことについては、父上も母上も知っている。
転生して3ヶ月が過ぎたころ、最初の言葉を発したんだ。
あのとき、両親は大はしゃぎしていた。
それからというもの、両親にベッドに連れられ、みんなが寝静まった夜に少しずつ練習を重ねてきた。
魔法の詠唱訓練も兼ねて。
母上に抱かれてリビングへ向かう途中、オレは気持ちを引き締める。
そして席に座らされ、目の前には今日の朝食――もちろん、オレはすでに離乳食だ。
最初のころは少し慣れなかったけど、母上の胸を吸うのがどうにも苦手だったオレとしては、この変化はとてもありがたかった。
今では、家族みんなの料理が揃うのをちゃんと待てるくらいには慣れている。
離乳食になってからは、いつもオレの食事から最初に出される。
たぶん、熱を冷ますためなんだと思う。
その後、料理がすべて並んで、朝食が始まる。
父上が最初に箸をつけ、続いて母上。
それからようやく、オレたち子どもたちの食事が始まる――そんな順番があるらしい。
転生してこの家に生まれたときから、ずっとそうだった。
ミルクのころは、オレはメイドに預けられていたけれど、それも母上が食事をとるためだったのだろう。
上位貴族に近い立場らしいし、そういう“仕来たり”があるのかもしれない。
オレはそんなことを考えながら、スプーンで食事を掬って口に運ぶ。
……うん、美味い。
「きょ……本日も、美味しいですね」
言葉遣いには気をつけなきゃならない。
この家は貴族社会の中でも、きちんとした振る舞いが求められる。
前世でも男爵家の生まれだったから、ある程度の礼儀作法は学んだけれど、ここまで厳密ではなかった。
兄さんも姉さんも、面倒くさそうにしながらも一生懸命指導を受けている。
そんなことを考えつつ、オレが静かに食事を楽しんでいると――
“カチャッ”
テーブルから食器がぶつかる音が聞こえた。
視線を向けると、母上が肩をピクピクと震わせ、父上はフォークを持ったまま、オレを見つめて固まっていた。
……サプライズ、成功である。
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