本物の仲間だった
俺は、とある人物の事を思い浮かべる。
奴は、俺にとって本物の仲間だった。
偽物などではないし、代わりなどいない人間だった。
だから、裏切るはずがないんだ。
それなのに、周りの人間は俺の気持ちなんて考えず、「あいつは偽物だ」とばかり言ってくる。
確かに状況を見れば、奴は俺の仲間なんかじゃなかったんだろう。
一人で暴走してモンスターの群れにつっこみ、仲間を危険にさらし、
攻略方法をきかずにダンジョンに突進し、仲間の言葉をきかず、
魔王と戦う時も回復や支援魔法を受けず戦いきり、仲間の事を信用しなかった。
そんな奴、普通なら仲間とは呼べないだろう。
けれど、俺はあいつの事を本物の仲間だと思っている。
あいつは、仲間を死なせたくなくていつもモンスターの討伐には一人で行動していたし、
ダンジョン攻略では、未来予知でいつだって正確な攻略方法を掴んでいたし、
魔王と戦う時は仲間の消耗を抑えるために一人で頑張っていた。
だから、他人から見たら仲間には見えないんだろうけど、
俺にとっては、本物の仲間だったんだ。