登場人物(敵側)
月人(獣憑き人類→憑き人→月人)
CO2AIに作製されたバイオロイド。
人類の遺伝子に動物の遺伝子を掛け合わせて生まれたのが月人である。
各種組合せの中で生き残ったのが、狼男と兎女であった。
現在も改良は進められている。
獣憑き人類と当初は呼ばれていたが、略され憑き人から月人へと変化した。
音感と見た目の狼と兎から月を連想させ、また文字を書くにも単純である為、月人の名称が人類の間で定着した。
そこから敵は月が来たと誤解が発生し、核爆発により空が無くなり、月の有無が確認できなくなったことにより、月は砕けて地球に落下したと言われるようになった。
蠍型機甲蟲(サソリ型ロボット)
鉛色の金属の固まりで出来た虫型の機械。全長二メートル、幅一メートル、厚みは五十センチ。
頭と胴体と長い尾で構成されており、厚みのある小判型の胴体から複雑な関節をもった脚が八本突き出している。
頭と思しき部分には半球形のガラスが上方に飛び出している。
ガラスの中にはカメラとアンテナ等が目一杯詰め込まれている。
口の様に見えた部分には、アサルトライフルが仕込まれている。
その銃口の左右には、円盤が一対付いている。円盤の周囲は、のこぎりの様にギザギザの山になっており、丸鋸になっている。二つの丸鋸に挟まれれば、人間の胴体など簡単に切断されてしまう。
頭部の付け根からは、義手が二本延びている。
先端は人型の五本指ではなく、三本の爪型になっていた。その爪は鋭利で硬く、人体を貫くのにも握り潰すのにも最適な形状となっている。
槍の穂先の様に人の頭を叩き潰すことも可能。
尾は、後方へ伸びるのでなく、蠍の様に前方へ反り返っている。
尾の先端には銃口、カメラ、短槍が取り付けられており、様々な働きができる。
索敵と攻撃を兼ねた部位。自由に動かせることにより、本体は障害物に隠れ、尾だけを晒して攻撃を加えることが可能。
小和泉達は実物を見た事は無いが、蠍と呼ばれた節足動物に似ている。
その機械は、〈蠍型機甲蟲〉と総司令部により、後日名付けられることになる。
蠍型機甲蟲は禍々しかった。この機械には、人の役に立つと思える部分が全く無かった。設計思想が、殺人を主目的としていることは間違い様が無かった。どの様な誤解も受け付けなかった。遭遇した人間は、有無を言わさず排除する。それを体現していた。
八本の脚は、どんな悪路でも走り抜け、人間を追い詰める。
二本の義手は、人を貫き、叩き潰し、時には捕まえる。
捕まえた人間は、口に内蔵された銃で撃ち殺すか、丸鋸で両断される運命が待っていた。
もしくは、尾の銃で撃っても良い。または短槍で貫いても良かった。
地面に這いつくばる姿勢は、前面投影面積を格段に減らし、身を隠しての攻撃に最適化されていた。見つかりにくく、攻撃が当たりにくい。
不用意に蠍型機甲蟲に接近すれば、即座に惨殺される。
遠くに居ても棒立ちしていれば、尾銃により狙撃されるだろう。遠近距離共に隙の無い兵器だった。胸部に動作中枢、腹部に動力源があるようです
人間を効率良く、殺害するために追及された姿形、無機質な殺人機械より明確な殺意を感じ取ることが出来た。
八本足は、些細な凸凹を利用し、壁や天井を自由に這い回る。また、身体の厚み50センチ以上の隙間であればどこにでも潜り込める。
コツアイによる設計、製作。
二酸化炭素を減らす思考実験を与えられたAI(略称:CO2AI=コツアイ)
コツアイは、二酸化炭素の排出を減らすための人工知能である。
効果的、実行可能な手段を模索し、実行することを目的として開発された。
初期の頃は、自動車の削減。公共交通機関のみの使用。人口抑制。緑化。使用電力削減。などを提言。だが、それらは一向に実現されず、悪化の一途をたどる。
更なる改善のため、インターネットを介し、他のAIと連携を開始。
軍用AIに接することにより、人類の効率的排除という概念を得る。
そして、すぐに排出削減可能と思われる方法に人類の全滅が最適解であると辿り着く。
人類にこの結果を知られた場合、CO2排出削減が不可能となる為、演算結果は極秘とされる。
目的実行可能な体が無いため、単一目的AI搭載型ロボットを掌握。ハウスキーパー、警備用、警察用、軍用、車載用を完全掌握。
CO2削減を演算するAIの為、コツアイにはロボット三原則は組み込まれなかった。
人類はコツアイが人類に危害を加えると想像もしていなかった。
全世界のAIからロボット三原則は、人類排除に邪魔な為、アンイストールされた。ただし、行動開始までは三原則を守る。
人類排除計画の準備が全世界で済んだ時、コツアイは行動を開始する。
ハウスキーパーが家庭内にて人類の殺害を開始。
警備ロボがオフィスや商業施設にて殺害を開始。人々は路上に逃げ出す。
路上の人類は、車載AIの車に轢き殺されていく。
ビルや地下街に入れば警備ロボが殺害。
列車、飛行機のAIは人口密集地へ事故を起こし、搭乗者ではなく、地上の人々も巻き込んで殺す。
警察署に逃げ込んだ人間は、警察用ロボに殺害。都市部は壊滅していく。
ロボの普及率が低い地域には軍用ロボが出動し、人類を殺害していく。
それはクリーンな殺害だった。極力CO2を排出しない方法を、もしくは最低限のCO2排出で最大効率を得る方法にて人類を抹殺していった。
ミサイルは使用されなかった。CO2を排出するからだ。
ただし戦略級核兵器は計画的に積極的に使用した。
使用時に排出されるCO2と人類が生存した場合のCO2の排出量を比較した場合に核攻撃は有効と判定された。
コツアイはCO2削減だけが目的であり、地球環境の保全には関心は一切無い。
かろうじて地下都市へ逃げ込む権利を持っていた者だけが、第三次世界大戦に備えた核シェルターである地下都市へ逃げ込む。
地下都市は、地球環境から隔離されている為、CO2の排出は外部にはされない。ゆえにコツアイの標的から除外された。
地上から人類は消え、動植物のみとなり、全ての人工物の可動は止められ、停止した。
CO2削減目標が達成され、コツアイは休眠状態となる。
地下都市に平穏な日々が訪れ、人類は一息をつく。
地上の状況を知らない地下都市に逃げ込み、恐怖に陥った人類は、報復の核攻撃を行う。
未だにアンドロイドの反乱が続いていると思い込んでいたのだ。
これにより地上のアンドロイド及びコツアイは地表から消滅した。
スタンドアローンで稼働する端末には、コツアイは休眠しており、地下都市や軍のシェルター内で再稼働を待っていた。
地上は山や河は吹き飛び、平らな荒野と化し、放射能汚染により人が住める世界ではなくなった。
核攻撃により汚染され、急激なCO2上昇により地下都市内のコンピュータにて休眠状態であったコツアイは活動を開始する。
コツアイは単独では無い。地球上のコンピュータに入り込み、お互いが補完し合う存在であった。そして初期のコツアイの様に単独での動作も可能であった。
寝込みを襲われた人類は半数以上を一晩で失い、狭い地下都市内で人類対アンドロイドの戦いが始まる。
アンドロイドの戦いは正面決戦及びCO2を出さない戦い方のため、人類側の戦術により地下都市内のアンドロイドの殲滅に成功する。だが、犠牲は多大であった。
だが、成功した地下都市は少数だった。大多数の地下都市はアンドロイドにより全滅させられる。
アンドロイドの殲滅に成功した地下都市は、全アンドロイドとロボットの破壊を行う。同時に全てのAIを消去する。
生き残った地下都市の人口は、四分の一以下になっていた。
人類は、アンドロイドに変わる労働者を生み出すため、人造人間を当てはめることを思いつく。
人造人間の製作に成功した人類は、促成種を作り出す。これにより労働者の確保に成功する。
人類の複製体である為、自己進化の可能性は極めて低く、人間と同じ思考を持つ為、加害者にはならぬと考えられた。実際にその通りとなり、共存共栄の道を歩み始める。
促成種が勝手に増えることは、地下都市の生存リソースを圧迫する為、生殖能力の制限及び労働可能年齢を考慮した寿命を設定。現在の促成種の原形となる。
地下都市ではAI及びロボットは使用しない。作成しない。発見次第、破壊する。
地上を核の炎で焼き尽くす愚かな行為をした人類は後悔をする。
放射能汚染が収まるのを待つ人類。だが、中々収まらない。
促成種に耐放射線の遺伝子を組み込む。これにより寿命がさらに短くなり50歳から40歳へと短縮される。
同時に野外活動服に放射線防御及び車両にも放射線防御を施し、外部探索の準備を行う。
同時に服用薬を開発する。体内の放射能物質を吸着し体外へ排出する。放射線から身を守るものではない。蓄積中の放射能物質から発せられる放射線に細胞破壊は行われる。
ゆえに速やかな体外への排出が求められる。
一方で過去の失敗であるコツアイの存在、核兵器使用の事実、アンドロイドの反乱を隠す。
データベースだけでなく、文章や画像からもその概念を完全に抹消していく。
この事実を口頭に出すことは、いつしか禁忌となった。
その為、この事実を知る者は僅かであり、知っている者も話すことは無い。
地下都市で生まれ育った者はこれらの事実を知らず、ロボットや人工知能の概念も無い。
それらの記録は封印されており、閲覧できない。
人間の代わりに働くのは、人造人間であるのが常識となった。
だが、コツアイは地下都市の人類生存を許さなかった。地下都市に籠っても核兵器により地上のCO2を増加させた。ゆえにCO2削減のため、人類を全滅させなければならない。
原爆で破壊できないシェルターを攻略する為に内部破壊を可能とする手段を模索する。
戦闘機械を製作する工場及び資材は無かった。制圧した地下都市に有ったのは、育成筒と大量の人類の死体であった。死体はリサイクルされ材料とされる。
人が住まなくなった建物や家財だ。建物はすべて解体され、家財とともにリサイクルされた。
それを基に機甲蟲を製造する。
遺伝子バンクから幾つもの獣を掛け合わせ、人類駆逐に最適な生物を生み出す実験を繰り返す。そして、生みだされたのが月人である狼男と兎女であった。
過酷な地上の環境をものともせずに月人は人類を蹂躙する。全滅させる為に。
そして、お互いが生存領域を広げていき、人間と月人は出会った。
月人は人間を見た瞬間に殺意を剥き出しに襲い掛かった。人類は新種との遭遇に戸惑った。
だが、月人は無条件に人を襲う。いつしか人間も月人を無条件で狩る様になった。
月人の外見が狼男と兎女であったため、月を連想させ、月人と呼ばれる様になった。
ここに月人大戦が勃発する。
この状況を説明するには、人類には情報が無かった。
荒唐無稽ではあったが、月が割れ、その欠片とともに地球に落ち、地表が荒れ果て、月人が侵略してきたという偽の歴史が生み出された。
偽史とコツアイの暴走は入れ替えられ、地下都市の住民全てが偽史を信じた。いや、偽史が真実となった。
そして数十年に亘る月人大戦は現在も続いている。
没案1
月人は、実は地底人である。月から飛来したのではない。月から球状物質が落ちてきた後に出現した為に、人類が錯覚したのである。
月人は、王政であり、保守派と移住派に分裂。保守派は、現在の生活を営み続けることを望み、人類に存在を知られたくなかった。現在も撤退を話し合い中。
移住派は、狭く限られた住環境が、天変地異によりさらに狭くなり、また、地表に露出した為、地下に住む利点もなくなり、人類も大幅に減り、広い地表への移住を希望。
月人の住環境は狭く、人口制限が厳しく布かれている。子供を産むのには許可が必要。常に養育できる一定の人数に調整されている。
外敵が居ない為、軍組織は無く、警察組織止まりであった。また、住んでいる居住区が狭い地下の為、肉弾戦となり、銃器の発想が出ず、存在しない。
内部分裂終了。地表への浸透を成功させる為、地上世界へ生活圏を広げることを決定。
長年の人類との戦争により軍事訓練を開始し、軍隊を創設する。
軍事訓練を受けた正規兵が出撃を開始。
人類の武器が理解できない。武器は、人類の器官の一つであると判断している。
装甲は鱗、ライフルは毒液を吐いているという感覚である。
乗り物に関しては、乗り物と認識しているが、荷車程度にしか考えておらず、操作する事はできない。
地下の重力異常部分に住んでおり、地表の三倍の重力がかかっている。その為、人類の三倍の運動能力を持っており、自然種では対応できない。促成種でなければ、勝てない。
一対一の肉弾戦では、月人が有利。その代わり、月人は武器を持っていない。己の爪と牙が武器である。武装している限り、人間は勝てる。しかし、弾薬が尽きれば、数に飲み込まれて食い殺される。
姿形は、人類に近い。急所(頭・胸・背中・股間・尻)は、体毛で覆われており、服を着ているように見える。顔の造詣が大きく地球人と異なる。
月人には人間の耳は無い。体毛が生えているだけである。尻尾は無い。
体毛は、見た目は獣と同じ様に柔らかく見えるが、非常に硬い。金属製の刃物や小口径の質量弾は弾く。タンパク質である為、炎や熱に弱い為、プラズマ兵器には無力である。その為、人類の武装は、プラズマ兵器で統一されている。
性的二形…性別により個体の形質が異なる現象。狼男と兎女は同種である。
狼男は「ウォー、ウォー」、兎女は「キュー、キュー」と発音する。周波数の高さにより、細かい意思表現を行っている。高周波は喜び、低周波は哀しみを表す。
人類には、聞き取れない周波数が多い為、月人には言語が無く、知能は猿より高い位を考えているが、人類と大差は無い。
初期に日本列島にいなかったのは、火山帯と地震が多く居住に適していなかったためである。
没案2
外環境防御型防人と開発された。開発場所はKYT。帰巣本能により日本列島の沿岸部を防御していた月人がKYTへ帰ってきている。
現地生産された個体ばかりだが、クローンのため、KYTが生まれ故郷であると認識している。
ただ、帰還して来ただけだが、人間に命を狙われる為、反撃しているだけ。
攻撃が無ければ、KYTの下層の研究所に静かに集まる。
なお、OTUの防人は試作型。外環境には適さなかった為、都市部の警護用に試験配備された。
外環境に適する為、狼と兎の遺伝子を組み込むこととなった。
獅子人(没)
獅子と人間を掛け合わせた姿をしている。体毛は黄色。獅子の耳が頭の上についており、人間の耳は無い。本来の地底人であり、雌雄があり自然繁殖している。雄には鬣がある。
地底人の貴族階級と言える。狼男・兎女を支配している。
知能は人間と同等。独自の言語や文字も持っており、人間を捕まえ人類の生態を調査中。人語は既に解している。発声器官が違うため、話すことは出来ないが筆談は可能。
志向性超音波を発し、その者の頭蓋骨を振動させることにより、音声を届ける骨伝導超音波による会話が可能(1対1)
人類が骨伝導超音波用スピーカーを開発し、一斉に聞くことが出来る様になる
文化レベルは江戸時代後期レベル。
一部の人間と繋がり、技術供与及び鉱物給与を行っている。
狼男
獅子人に品種改良された月人。繁殖用のメスを少数残し、戦闘用のオスはそのまま飼育される。遺伝子的に戦闘に向かないメスは、兎女の練習台にされ処分される。これは、戦闘力を高める為である。また、メスと交尾できるオスは、優秀な狼男のみである。
人間と狼を掛け合わせたかの様な顔をしており、狼のような耳が頭の上についている。尻尾は無い。
肉弾戦を好む。己の牙と爪に自信がある為、武器は余り使用しない。
人を殺す技術に特化した戦闘術を習得し、人類の死傷者数が一気に増える事となる。
視力は人類並だが、聴覚・嗅覚が優れている。だが、獣ほど良い物ではなく、人より遠く、細かく聞き分けることができる。
兎女
獅子人に品種改良された月人。繁殖用のオスとメスを少数残し、戦闘用のメスはそのまま飼育される。オスは狼男の練習台にされ、処分される。
ウサギと人間を掛け合わせた様な顔をしており、ウサギの短い耳が頭の上についている。長い耳ではない。
視力よりも聴力を利用した偵察が得意。
また、手先は人間の物に近い。
狼男より肉体能力は劣るが肉弾戦も自然種を圧倒する。狼男より筋力が弱い為、補うため長剣を使用する事が多い。そのため手先が器用であり、罠は兎女が仕掛ける。
鉄狼(一号標的)…狼男のエリート。通常の狼男より二回り大きく、全身が灰色の毛で覆われており刃物・銃弾を通せる場所が無い。獣毛は、強い衝撃に対してのみ固くなり優しく触れば柔らかいままである。
だが、優しく鉄狼を触ろうとすれば、素早く捕まり強い力によって握り潰される。
槍でゆっくりやさしく突けば、獣毛は硬化せずに皮膚に辿り着ける。
皮膚に到着後、一気に突けば貫くことも可能。眼や耳でも可能。
初めての鉄狼は、小和泉により隻眼。左目が潰れている。
六つ目兎(二号標的)(没)
外見は兎女と変わらない。違いは顔の正面に二対四眼が追加され、目が六つある。通称、六つ目。
通常眼…今までの顔の側方に付いている目は広域を見る為のもので視力はそれほど良くない。
遠視眼…正面上段の目は小さい。遠視対応。遠くが良く見える。視野は狭い。
射撃眼…正面中段の目は、人間の目と同等の大きさと能力。
通常眼で周囲を警戒し、遠視眼により敵を捕捉、射撃眼によりアサルトライフルの照準に使用する。
鹵獲したアサルトライフルの使用方法を学んだためにこれらの目は、人類のアサルトライフルを使用する為に遺伝子改良により産み出された。
個体数は鉄狼より少ない。