ルームメイトがダム作りの先輩と後輩なの気まずすぎる!
バシィーン!
ビーバー特有のクソデカしっぽで先輩が後輩をぶっ叩いた。
「お前さぁ!もっとマジメに木に嚙り付けよ!」
ぶたれた後輩ビーバーは無言のまま、ふてくされたように斜め下を向いている。
その態度がさらに先輩を苛立たせた。
「何のために俺らの歯に鉄分が含まれてると思ってんの?木を切り倒して川をせき止めてダムを造るためだろ!リーダーもさ、この川を氾濫させて近所の農家涙目にしてやろうぜって言ってたじゃん。みんな頑張ってるんだから、頼むって!な?」
「…自分、毛づくろい休憩行ってきまぁ~す」
「は?待てよ、話はまだ…!」
説教の途中で、後輩ビーバーはすぃーっと泳いでどこかへ行ってしまった。
「チッ、あいつ、舐めた態度取りやがって…」
伐採に疲れて先輩は巣に戻った。
その後、どこをほっつき歩いていたんだか、後輩も巣に戻ってきた。
先輩は顔を背けた。
(気まずいなぁ…こいつとルームメイトになるとき、仕事のあれこれは持ち込まないようにしようって約束したけど、ついさっき説教したばっかりだし…)
「先輩」
「…なんだよ」
「樹皮、食べます?」
「あ、ああ…ありがと」
カジカジ…
「…あの、今日はすいませんでした。なんか、木に噛り付くだけが人生なのかな、って思っちゃって…」
「俺もそう考えた事あるよ。でもさ、ビーバーの人生に選択肢なんかないだろ?明日も早いし、もう寝よう」
「…はい」
翌日。
先輩は一人で川岸にいた。
「ハァ、あいつ朝からいねぇし…まあしゃーないか。オレだけでも仕事しよ…」
「先輩!先輩!!」
「遅かったな、どこ行ってたんだよ」
後輩が息を切らして駆けてきた。
謎の機械を抱えている。
「何だよそれ?」
「近くの農家の納屋からパクってきたんですよ!チェーンソーです!見ててください!」
後輩がスターターロープを何度も引っぱる。
ブルン!ブルン!ブルン…ブロロロロオオロロオ…ブロロロロ!
後輩はしっかりとチェーンソーを持ち、木に回転するチェーンを押し当てた。
ヴヴヴヴヴヴヴヴヴッヴヴヴッヴ!!
バキバキバキバキ…
ドドーーーーーーン!バサバサバサバサ…
大木はあっさりと倒れた。
「どうです先輩?」
「…ああ…お前が正しかったよ…木に嚙り付くだけの人生なんて、まっぴらごめんだよなぁ?!」
二匹は農家の納屋に再侵入し、ありったけのチェーンソーをパクって仲間たちに配った。
その年に作られたビーバーのダムが過去一のクソデカダムだったことは言うまでもない。