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書籍発売記念ss


「さて、どうしたものか……」


 宝飾店のVIPルームで、カイザーは呟いた。

 様々なアクセサリーを目の前にして、眉間にシワを寄せている。

 魔物もビックリな人相の悪さだが、宝飾店の店主であるロイターは顔に笑みを張り付けていた。


「最近は、ピンクダイヤモンドが若い女性に人気でございます」

「ピンクダイヤか……」


 カイザーは、一つ一つのアクセサリーをじっくりと眺めながら、それをつけているアディルを想像していく。


(ピンクダイヤは、可愛らしいアディルによく似合うな。だが、ルビーやエメラルドも似合う……)


 春はアディルの誕生日の季節。

 カイザーは冬のうちからプレゼント選びを開始していたけれど、まだ決めることができていない。この宝飾店にプレゼントを見に来るのも既に十回を超えている。


「オルフェノス様からの贈り物でしたら、何でも喜んでいただけると思いますよ」


 ロイターは、あまりにもカイザーが悩むので、そう声をかけた。けれど──。


「知っている」


 返事はまさかの肯定。


(それが分かってても、悩むのか。どんだけ好きなんだよ)


 思わず半眼になりそうなのをロイターは笑顔でやり過ごす。


「婚約者様とご一緒にお選びになるのは、いかがでしょうか」

「驚かせたいだろ」


(い、意外にもサプライズをするタイプだったか……)


 これは、今日も決まらないな。そう諦めたその時──。


「ここから、ここまですべてくれ」

「…………え?」

「ここからここまですべて包んでほしい」


 カイザーが指先で指定した範囲には、十数個のアクセサリーが並んでいる。


「大変失礼ですが、お誕生日の贈り物とおっしゃられていましたよね?」

「そうだ」

「その、すべてを贈られるのでしょうか?」

「あぁ、すべて似合うからな」


 当然のように頷くカイザーに、ロイターは今度こそ半眼になった。


(たくさん購入してくれるのは、嬉しい。だが、これは違うだろ……)


「オルフェノス様」

「なんだ?」


 普段とは違うロイターの雰囲気に、カイザーはアクセサリーから視線をあげる。


「贈り物とは、お心でございます。多ければ良いというものではございません」

「仕方がないだろう。どのアクセサリーをつけても可愛いんだ」

「そのお気持ちは分かります。ですが、悩みに悩んでその中からご自身のために選んでくれた一点が嬉しいのではないでしょうか。もし、オルフェノス様が逆のお立場でしたらいかがですか?」


(そんなのアディルが選んでくれたものなら、多くても、少なくても、嬉しいに決まってる。だが……)


「……ロイターのいう通りだ」


(一番贈りたいと思ってくれたものを、身につけたい)


「よし。もう少し考えさせてくれ」

「もちろんでございます」


 と、ロイターが答えてから、カイザーがプレゼントを決定するまでにかかった時間は八時間。

 閉店間際にやっと決まったのである。


「明日がアディルの誕生日なんだ。ありがとな」

「それは、おめでとうございます。良い一日をお過ごしくださいませ」


 そう答えつつも、疲労困憊なロイターは、すべて売ってしまえば良かったと後悔したとか、しないとか。


 次の日、プレゼントを見たアディルは目を輝かせ、カイザーはとろけるような瞳でその姿を見つめたのであった。

 

本日、ビーズログ文庫様より発売しました。

書籍タイトルは

『好きです。騎士団長様の婚約者にしてください!! (あれ? 一方通行だと思っていたのに、最近視線が熱い気がします)』

になります。

よろしければ、書籍版も是非!!

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