書籍化記念SS
風をきり、アディルとカイザーを乗せた馬は走っていく。
(最っ高ーーー!!!!)
アディルは若草色の瞳を輝かせ、遠乗りを楽しんだ。
愛馬のメランからカイザーは、アディルを抱っこして降ろす。
互いに表情は平静に保ったままだが、心の中は大騒ぎだ。
(キャー! こんなにも軽々と降ろしてくれるなんて、何て逞しいの!! あぁ、腕の太さを計測して、カイザー様日記に書き込みたい。公爵家のデザイナーならいろいろと知ってるわよね? 情報横流ししてくれないかなぁ)
(まるで羽根が生えているみたいに軽いな。きちんと食べているのか? 女性に体重のことを聞くのは失礼だろうし……。影にアディルの食事量を報告させるか)
良くも悪くも変なところで似た者同士の二人である。
「あのっ! お弁当を作ってきたんです。良かったら一緒に食べませんか?」
「──っ! ありがとう、嬉しいよ」
カイザーは甘やかな笑みで答え、アディルは頬を赤く染める。
この場にアスラムがいたら、穴という穴から砂糖を吐いていたことだろう。
「じゃじゃ~ん! シェフに聞きながら作ったので、味は保証します。たぶん!!」
お弁当を開きながら、アディルは言う。
大きなランチボックスの中には、お肉や野菜、卵とハムのサンドイッチがきれいに並んでいる。
「こっちはカイザー様ので、これは私のです。おかわり分も持ってきたので、たくさん食べてくださいね!」
そう言いながらアディルが開いたアディル用のランチボックスに、カイザーは動きを止めた。
(……アディルは小鳥が何かなのか?)
「もっと食べた方がいい」
「え?」
「しっかり食べないとアディルが消えてしまいそうだ。たくさん食べてくれ。そうだ。今度一緒にディナーに行こう。騎士団終わりでもいいか」
「は、はいぃぃぃぃ」
(デートに誘われちゃったー!! 仕事終わりに待ち合わせとか、これってラブラブみたい!!)
(アディルの食の好みを調査しないとな。あとは、店もか)
今にも鼻歌を歌い出そうなほどウキウキに、アディルはカイザーへと飲み物を渡す。
「「いただきます」」
二人揃って、手を合わせてサンドイッチを手に取る。
「うまいな……」
一口食べ、微笑みながら言うカイザーに、アディルは安堵の息を吐いた。
「カイザー様は辛いのがお好きみたいなので、シェフ特製の辛いソースを入れたんですよ。お口にあって良かったです!」
「そうか。フラスティア家の料理人は優秀だな。まぁ、アディルが作ってくれたから更にうまいんだろうが」
カイザーの言葉に、アディルは赤くなりながらもようやくサンドイッチを食べた。
「アディルは辛いものを食べるのか?」
「いえ、私はあまり得意じゃなくて……」
「そうか。どんなものが好きなんだ? アディルのこと、たくさん教えてくれ」
アディルは少し悩んだあと、好きな食べ物や、美味しかったお店について話していく。
カイザーは相槌を打ちながら、自身もまた趣向を語る。
食べ物から始まった話は、思い出話など広がりを見せ、互いの新しい一面を知っていく。
(カイザー様情報がたくさん! カイザー様を追いかけて情報を得るのもいいけど、直接聞けるってすごい特別感だよぉ!)
(調べるのもいいが、こうやって聞くのもいいな)
ピクニックから帰ったあと、互いに今日得た情報を書き留めるのだが、当然ながらそのことを二人は知る由もないのであった。
3/13にビーズログ文庫様より
『好きです。騎士団長様の婚約者にしてください!! (あれ? 一方通行だと思っていたのに、最近視線が熱い気がします)』
と改題し、書籍が発売となります。
書籍は全改稿し、更にパワーアップしています。
イラストは、ぽぽるちゃ先生が担当してくれました。
強面騎士団長と暴走令嬢の制御不能な恋、ノベルでもいかがでしょうか?
よろしくお願いいたします。




