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5.出発! 機械人間都市

 レイとエリーは月明かりが差し込む倉庫に足を踏み入れた。


「一体ここになにが?」


 エリーは、あたりをキョロキョロと見渡すが、特にこれといったものは、見当たらない。


「まあ、みていろ。アルファ、頼む」


 アルファは、ホログラムになって、レイの持つタブレットから飛び出し、魔法を放つように指を振る。


「カモフラージュ装置、解除します」


 アルファの声に合わせて、青白い光が波紋のように駆け抜けた。すると、空間が歪み何もなかったはずの場所に突如、大きな車が現れた。


「うわぁ! なんですか? この車」


 見たことない大きな車の出現に、エリーは目を白黒させた。

 車の種類は、キャンピングカー。

 簡単な寝泊まりができる大きな車である。


「これは、単なるキャンピングカーじゃないぜ!」


 驚いたエリーをみて、レイはきらりと目を光らせる。


「コイツは、どんな悪路も走破できるキャタピラ仕様にも変形可能だし、前面はゾウに当たっても壊れない衝撃吸収バンパーで出来ている。さらにはチェーンソー、ドリル、マジックハンドといろんなアタッチメントでどんな障害もものともせずに進んでいくぜ! さらに水陸両用にもなるんだぜ! どうだ。すごいだろう。」


 研究者の性なのか、レイは無限に自慢し続ける。


「そ、そうなんですか(情報量が多すぎる……)」


 エリーの頭には、レイの言葉のほとんどが入ってこなかった。


「聞いてるのか? まあ、いい。とにかく、こいつでお前を保護してくれそうな知り合いのところまで連れて行ってやるよ」


「保護……?」


「一旦ここからは、すぐ離れた方がよさそうだからな。安心しろ、ちゃんとお前の手足は治してやるから」


「私はホムンクルスになりたいわけでもありません」


「なら、IPS細胞を使ったクローン技術で治してやるよ。それならいいだろう?」


「クローン?」


「まあ、そうだな。簡単に言うと、お前の元の細胞を抜き取って培養し、新しい手足を作るだけだ。普通に傷がふさがるのとそんなに変わらないぞ」


 エリーは、クローン技術とは自分の体の一部を再生するようなもの――そう聞いて、エリーは納得し頷いた。


「はい。お願いします」


「おうよ」


 エリーは助けてもらった上に、治療方法にも口を出し、『さすがに図々しすぎかも』と自分の神経の図太さに苦笑した。なんというかレイには、なんでも言ってしまえる親しみがあった。


 だからこそ、つい言葉が出てしまうのかもしれない。


「私を治療した後は、レイさん達はどうするんですか?」


「俺たちは、そのまま、機械人間の中枢都市アルデアを目指す」


 エリーは、一瞬迷った。 ここで頼むのは、さすがに都合が良すぎるんじゃないか――?


 けれど、あのまま放ってきてしまったみんなのことを思うと、黙っていられなかった。


「私も連れてってください」


 レイは一瞬、目を細めた。

 だが、すぐに渋い顔に戻る。


「俺は、危険な場所に子供を連れて行く趣味はねぇよ」


「私は……私のように無理矢理、機械人間にされそうな子供達……友達を助けたいんです!」


 エリーは、置き去りにしてきてしまった友達がたくさんいることをレイに説明した。


「なら、条件がある」


「条件?」


「お前の手足を元に戻すのはお預けだ」


「はい……」


 エリーも理解していた。機械人間都市から脱出できたのも、機械の手足のおかげである。好き嫌いでいえば、嫌いなものではあるが、間違いなく役立つものだった。


「俺が可能な方法で、できるだけ身の安全はまもってやるが命の保証はできないぞ。それでもいいのか?」


「はい!」


 レイは、エリーの目をじっと見た。その瞳にゆるぎない決意を感じて諦めてようにため息をついた。


「はあ、しかたねぇな。連れて行ってやるよ」


「ありがとうございます」


 ふわりと現れたアルファが、やれやれと肩をすくめる。


「マスターは、相変わらず押しに弱いですね」


 揶揄されて、レイの顔は一気に不機嫌になった。


「うるせーよ。それより、いざというときエリーを操作できるように、リンクしておけ」


「はぁーい」


 アルファが、少し気の抜けた返事をした。

 

 優秀だが、自由気ままなアルファにレイは肩をすくめながらエリーの顔を見た。

 エリーは、顔がこわばり、少し緊張しているように見えた。

 

 レイはそんな彼女を一瞥し、少し考え込むように腕を組んだ。そして、ゆっくりと口を開く。


「そうだな。一緒に行動するからには、俺とお前の関係がないというのも問題だろう。……だから、エリー今日からお前は、俺の弟子だ」


「弟子?」


 エリーは思わず聞き返した。


「そうだ」


 レイはにやりと笑い、エリーの肩をポンと叩く。


「危険な旅になるからな。それなりに、覚悟と知識がいる。道中いろんなことを教えてやるよ。だから、俺のことは先生と呼ぶように」


 エリーは驚いたままレイを見上げたが、やがて小さく息を吸い込むと、しっかりと頷いた。


「はい。先生。よろしくお願いします」


「よし」


 レイは満足そうに口元を歪めると、キャンピングカーのドアを開けて指を立てる。


「さあ、乗り込め! 出発だ!」

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