詞的な夜
空に浮く真っ暗闇に、あどけない少女が一人いた。踞って泣いているようだった。少女は、こんな真っ暗な世界を見たくないのだろうか。
確かに、まだ幼い少女にはあまり寂しすぎた。
独りぼっちな少女。
もう見ていられなくて、可哀想で、私は手を伸ばした。そっと驚かせないように、少女を囲う扉にノックする。
少女が静かに顔を上げた。
少女の瞳が私を見つめる。瞳の奥に、素直に訴える憂いが見て取れた。薄い涙の膜が張っていた。
心配しないで。さぁ、何も言わずについて来て。君を一人になんかさせたくないんだ。
優しく、少女の耳元に語った。
少女がこの手を取ってくれるまで、待つ。
少女の瞳に私が映る。初めて瞳が、色を伴って映る。光りがある確かな、生きた瞳。
その白色の手が、私の掌に預けられた。
少女は泣いた。微笑みながら、泣いていた。
救われた、と。少女は呟く。
やっと救われた、と。少女はまた呟いた。
あぁ同じだ。少女の言葉に頷く私。
あまりに嬉しそうに少女が呟くものだから、私も救われた気持ちになる。とても傲慢かもしれないが、私たちは似ていると思った──────