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凶獣の王(R15版)  作者: ナナシ
第二章 タパパ村の青年
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第62話 怪物

「レクス、そっちいったよ!」


「うん!」


 黄色い毛皮の犬型の凶獣がこちらへと迫り、跳躍した。レクスの頭部を切り裂こうと爪を振り上げている。遭遇するのはこの凶獣ばかりだ。どうやら、この辺ではメジャーな凶獣らしい。

 

 さっきは強いと感じていたが――レクスは左足を移動させて凶獣の左側面へと回る。あれだけ、素早いと感じていた動きが今はとても遅く感じる。ルカの言っていた通り、魔核を吸収したことで身体能力が向上しているようだ。凶獣の爪が空を切り、レクスは大剣を上段に構えて、一気に振り下ろした。


 凶獣の体が両断されて、血が噴出する。鉄のように硬かった皮膚が、今や簡単に剣を通すようになった。身体能力だけではなくそれに付随して、武器の力も向上するらしい。絶命した凶獣の傍によって、レクスは左手をかざす。


 黒煙が舞い上がって、それが左手に吸い込まれていくのだが――レクスは違和感を覚えた。これまでと違って、力の向上する感覚が薄くなっていたのだ。


 どういうことだろう、と困惑していると、


「あんまり強くなってる感覚が少なくなってきたんじゃない?」


 レクスの考えを読むかのように、ルカが言った。


「同じ凶獣を狩ってばかりいると、強化が鈍くなっていくんだよ。だから、もうここの凶獣をこれ以上狩ってもレクスは強くならない」


「つまり、強くなりたいならもっと強い凶獣を倒さなくちゃいけないってこと?」


「そういうこと。だから、もう強化はやめて魔核を抜き取るだけにしましょう」


 ルカの言葉にレクスは頷き、湿原の奥へと進んでいく。犬型の凶獣は相変わらずたくさん現れたが、すでにレクスの敵ではなかった。倒したら、魔核を抜き取る。凶獣とはいえ、たくさんの命を奪うことは気分がよくはない。単なる自己を慰める意味で、レクスは心の中で手を合わせた。


 凶獣を狩って進んでいくと、やがて、木々のツタが地面を覆っている場所へとやってきていた。なんとなくこれまでの場所とは雰囲気が違っていて、もうすぐ出口なのではないかと、レクスは気分が高揚していた。そのまま歩こうとしたところで、


「待って」


 ルカがレクスの進行を遮るように手を広げた。そのままレクスに動かないように目で静止の合図を送り、ルカは膝まづきじっと地面を見ている。


「レクス、わたしについてきて」


 言葉の意図がわからなかったが、レクスはルカの言う通りにした。ある一帯を避けて、回り込むようにしてルカとレクスは移動した。じりじり、と虫の鳴く声が聞こえてくる。湿度が高いのか、額から玉のような汗をかく。出口はまだなのか、と焦れていたときであった。

 

 サガトの街が見えてきた。ようやく目的地へとつく。レクスが喜んだ瞬間であった。それを目にしたのは。


 湿原の出口に血だまりが出来ていた。その周辺には人の死体があった。見るも無残な姿で。臓物をまき散らし、四肢は欠損し、脳が露出していた。生々しい光景にレクスは思わず吐きそうになるが、なんとかこらえた。


 ルカも顔をしかめていたが、そこは熟練のハンターだ。血だまりへと近づき、かがんだ。


「まだ、血が新しい……死んでからそんなに時間はたってないよ」


「……ここの凶獣にやられたのかな」


 あまりにも直視に耐えない光景なので、レクスはルカからやや離れたところに立っている。


「ううん、それはない。これ見て」


 ルカが死体の首を指さしている。正直、見たくないのだが見ないわけにもいかずにレクスは渋々視線をやった。首の皮がめくれて、骨が露出している。そちらに意識を向けないようにして、ルカのさすものを見る。それは黄色い色をしたペンダントのように見えた。


「ハンターは色によって強さの階級わけがされててね、上から順に、赤、黒、黄、緑、白色といった具合に協会に決められてる」


 意識したことはなかったが、ルカの首にもペンダントがあった。それは黒色に輝いている。ということは、ルカはかなり上のハンターということか。


「この人たちの階級は黄色。黄色のハンターがここの凶獣に後れを取るとは思えない。それに、死体の数が五体。五人もいてこんなひどい目にあうなんて明らかに普通じゃない」


「じゃあ、この人たちをやったのはここの凶獣じゃないってことだね」


 となれば、誰がこの人たちを――そこまで考えて、レクスの脳裏にある考えがよぎった。それは、


「もしかして、研究所が送ってきた凶獣なんじゃ……」


「その可能性は高いと思う。でも、姿がないね。どこかに行ったのかな? それなら、今がチャンスかもね。この隙に逃げて――レクス、後ろ!」


「――え?」


 ルカがいきなり鋭い声を上げたので、レクスは背後を振り向いた。


 そこにはひび割れた鎧をまとう異様な姿を持つ者がいた。ひび割れた鎧からは紫とピンクの混じった皮膚をのぞかせている。皮膚からは血管が浮き出ていて、どくん、と鼓動に合わせて脈打っている。ひび割れた鎧から除く赤い目がレクスに焦点を合わせた。


 こいつも、凶獣なのか。


 鎧の凶獣――キュクロスは、身の丈ほどもある巨大斧を片手で軽々と持ち上げて、それをレクスに向かって振り下ろす。


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