王立魔法学園
私達が気絶してる間に叔母様が私達二人分の制服や色々と揃えてくれた。そして私達を襲ったのは、アグウェル・グネリア当人だったと教えてくれた。
「あの、あの時アグウェル様が私達に、むぐっ!?」
「ばかっ、母上なんでもない、気にしないでくれ……ははは……」
「あらそう?ならいいけど、なにかあれば教えてね?私は実験に戻るから」
叔母様はそのまま自室に戻っていった、リビングには私とアントン、アルドにロザリア、そしてルーシェの5人しか居ない、ハウェル様とナターシャは2人でガルーナに買い物、もとい調査に出かけている。
「アントン、なぜとめたのですか?」
「……あの事を話せば母上は絶対許さないぞ、私だって耳を疑ったが、あいつは私の父上を殺したんだ、信じられない」
あの事と言うのは私達が家を飛び出し、買い物をしに大通りに向かおうとして裏路地に入ると目の前に立ちはだかったのがアグウェルだった。
黒髪、赤眼、で顔は整っており、服は何故か黒い厚手のコート、首元までしっかりと着込んでおり、コツコツと革靴で音を鳴らしながら私達に近づいてきた。
「お前だな、ファルファ・メタロ、いやファルファ・グネリアと言った方がいいか?」
「……貴方は誰ですか」
「誰でもいいだろう?後ろのやつは知らないが、追っ手が来る前に話をつけるぞ」
彼は自分のことを名乗らず、裏路地の壁にもたれ掛かり話をし始めた。
「……僕は母上をとめたい、あの人は頭がおかしいんだ、昔からいる乳母に聞いたが、今の姿から考えられないほど優しかったらしいじゃないか、なのに僕に人殺しを命令して、10歳の頃からだぞ!?……僕だってやりたくてやってる訳じゃない、あの人に逆らったら命が無いだけだ……だから、僕は……くそ、追っ手が来たな……そうだ、どうせ学園に来るのだろう?僕は生徒会長をしてるからね、生徒会に入ってくるといいそれでは……後の後輩お手並み拝見といこうか?」
話してる最中、何かに感ずいたのか急に身構えていた。彼の話に夢中になっていたが、後ろでは怒りを抑えきれないアントンが火の精霊を集めに集めていた。
「……お前が父上を殺したのか……いや殺したんだ、覚えているからな……恨みを今ここで晴らす!深淵の奥底からの声を聞け、大地は避け、我が憤怒としてこの一帯全てを溶かし尽くせ「ラバブラスト」!!」
突如として彼の足場に出てくる溶岩の柱、だがそれをたった1歩の後ろへの移動で避けてしまう、私は咄嗟に身構えた目の前から魔法の詠唱が聞こえたからだ。
「風の精霊よ、我が手に宿りてその力持って、突風を巻き起こせ「ウィンドブラフト」」
彼が唱えたのは風属性の中級魔法だった、だがその魔法はアントンの出した火属性の最上級魔法である「ラバブラスト」を相殺した。そして2回連続で魔法を放っていたのか”まるで貫通した”かのように私向かって飛んできた。私は咄嗟に「ロックブラスト」を唱えるが相殺できず、威力で負けており貫通された。そこで私は理解した。彼の「ウィンドブラスト」はアントンの「ラバブラスト」を相殺したのでは無い、貫通したのだと、そのまま私は「ウィンドブラスト」を腹部に直撃してそのままアントン諸共家を1件貫通し2軒目の家まで吹き飛ばされそのまま気絶した。
彼は最終的に何が言いたかったのか、それは分からずじまいだった。だから叔母様に聞きたかったのに、確かに叔母様はアーグ様を愛してたから、アーグ様の敵となるアグウェル様の事は信じて貰えないはずだ
「俺は信じないぞ、絶対だ」
「でも、あの言ってた事が本当ならアグウェル様は、私たちの味方になるのでは?」
「それでもだよ!アイツは父上を殺したんだ、信じれるわけないだろう!?」
「だからといって、人の話を聞かずに攻撃するのですか?」
「10歳から人殺しをしてるあいつはただの”死神”だ」
「死神……」
「だってそうだろ?8年で何人殺したか知らないが死神だろ」
「私のお母様は、私の剣の師匠に死神と呼ばれました」
「……それはお前の母親が王国魔法騎士団長だったからで……」
「それとこれは話が違いますか?何人殺したか分からないからって一括りに死神と呼ぶのは私は嫌です、私は彼の話を聞きたいです」
私は涙ぐみながら彼に訴えかけた。彼は何か言いかけたがそっぽを向いてなにか考えるとため息を漏らした。
「わかった、お前の言うことを聞くよ」
「……本当は私も怖いですけどね……」
「ならなんで、あいつのことを信用したんだよ」
「信用はしてません、ただ私と同じ感じがしたので」
「……お前と同じ感じ?……全くそのような感じはしなかったけど……」
「なら分からなくていいですよ、無理に理解しろなんて言っても無理でしょうから」
ぷいとそっぽを向くと、彼は私の機嫌を損ねたと思って少し焦って機嫌を取ろうと何か考えていた。
私が色々と考えているとファルファは急に立ち上がった。
「魔法の訓練してくるので、それでは……あ、今日は1人でいいから着いてこないでよ!」
「おい、まてよっ!」
私の静止を無視して外に出ていった。
「あらら、ファルに嫌われちゃったね、私達」
「お前たち、なんでアグウェルの時”居なかったんだよ”」
そう、この精霊王達、アグウェルと戦っている時、3人とも居なかったのだ。
「えっ?だって私達ちゃんと追いつこうとしてたけど、急に目の前に黒い壁が現れてね、行けなかったんだよ、壁の向こう側で誰かと喋ってる声はしてたけど、それ以上は何も聞こえないし、向こう側にファルが居るって言うのは分かってたから魔法を使って無理やり壁を破壊して下手したらファルや君も怪我しててもおかしくないよ?」
「そうだな、アントン、俺達はファルの契約精霊だが1番に考えるのはファルの命を守ること、決して仕事を放棄した訳では無いが、あの時誰かに邪魔をされたのはわかる、あの魔力、なんか知ってるんだがな、闇属性の魔法なのは分かるぞ」
……つまり誰かに監視をされており、精霊王をつれたファルファを罠に陥れようとした人間、あの場で考えられるのはアグウェルだけだ、ファルファはあんな事を言っていたがやはり私はあいつのことを信じきれないらしい
「でもあの子、闇属性の適性はなかったように思えたけど」
「そうだよねぇ、どちらかと言うと風属性に強い適正があるよね」
ルーシェ達があの男について喋っていたがその言葉が聞こえないくらい私は深く考えていた。
「もしもし?」
私が気がついた時、周りは母上の家ではなく知らない家の中だった。目の前には車椅子に座った目元を布で覆い隠した女がいた。彼女は白銀の髪を揺らしながら私の方を見てくる
「だれだ」
「んー、貴方のお母さんの友達だと思ってもらっていいわよ?」
「はぁ?母上からあんたの話はひとつも聞いてないが」
「それもそうよねぇ、だって私、あなたのお母さんからは邪魔者扱いだもの、ちゃんと情報を渡してるのにっ」
彼女は涙を拭うような素振りをするが、全く心に来ない、いや絶対わざとだよね?なんて思いながらじーっと呆れた顔で見ていた
「こら、女の子を泣かせる男の子はモテないぞー」
「どうでもいい、お前のことを教えてくれ」
「……白銀の運命」
「……2つ名だけか」
「ええ、悪い?」
「……別にいい、それで私を呼んだ訳は?」
「なぁに、簡単よ、アグウェルを信用しなさい、あなたの事だからあの時の事を聞いても信じれてないでしょ?だから、忠告よ、あの子を救ってあげて」
彼女のその言葉を聞いたあと目の前が真っ白になり気がついたら、テーブルの上で気絶していた。
「アントン!探したよ!」
ルーシェが話しかけてくる、わしゃわしゃと頭を撫でてきた
「どこまで探してたんだ?」
「んー?大体この家の周りだけど、目を離した隙にいなくなるんだから」
「……私、やっぱりどっかにいってたんだ……」
「ん?どうしたの?」
「いや、ある女と話した」
「誰にあったの?」
「……すごい変な2つ名言ってた」
「すごい変な2つ名?……どんなの?」
「白銀の運命……」
ルーシェは顔をひきつらせた。まるで思い当たる節があるようで……
「誰か知ってるのか!?」
「し、しらないなぁー……」
「白々しいぞ!」
「ほんとに知らないよ!そんな絶望的なネーミングセンスしてる女!」
「そうか……」
「はぁ……そうだよ、私だってそんな人知らないし」
ルーシェと話していると家の扉が開く、ファルファが息を切らせながら私を見つめた。
「おう、ファルファ、訓練は順調か?」
「順調も何も無いです!急に居なくなって!叔母様も探してたんですから!ばかっ!」
「母上が?」
「アントンぅ!」
私は母上に抱きつかれた、相変わらず、私には甘いらしい、と言うか恥ずかしい!母上の体はすごく柔らかいけど……そのぉ……デカすぎ!何がとは言わないけど!苦しいし!
それから1週間がたち、私達は王都マジェークに来ていた。
私の髪色は黒から金髪に瞳は青くしていた、アントンは髪色は赤から青に瞳は緑色をしていた。
適性が多いと潜入も楽だ、とこの変装魔法をつくった叔母様が言っていた。
「着いたな、”姉上”」
「そうですね、アントン」
最初の頃は納得いかない!みたいなことを言っていたが結局私の事を”姉上”と呼ぶことにしたらしい、相変わらず私の敬語は抜けないらしい
私達は新しい門出を迎える、この王立魔法学園で、新しい友、そして新しい仲間を増やすのだ
今回は読んでいただきありがとうございます。
時々私も見返すと思いますが、誤字脱字ございましたら是非ともご指摘いただければとおもいます。
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