ガルーナの街にて
あの爆発事件から1週間がたった。
私達はグネリア王国に密航し、村で協力者に合流後、隠れ蓑になる貴族の家に潜伏することになるらしい、服装もそれに合わせて平民のような麻の布の服を着ており、いつもの服と違って肌に摺れるのが気になって少し気持ち悪い
今はナターシャが買いつけた馬車に乗りグネリア王国とメタロ王国の国境を隔てた国、ガルーナに向かって進んでいた。
立ち寄った村で聞いた話によれば、お父様の執務室で何者かにより爆発、お父様はそのまま帰らぬ人になったらしいが、死体がどこにもなく、死体が粉々になったのではないかという意見や、最初から居なかったとか色々と言われているが、私は生きていて欲しい……その思い一筋だ。
「ファルファ様」
「ナターシャ、そろそろですか?」
「……それよりも最近寝れていますか?」
「……いえ、あまり……」
「はぁ……私が起きている意味がないではないですか」
「すみません……」
「謝るくらいなら今からでもいいので寝てください、あなたの体重程度なら大丈夫ですので」
「それはその、地味に体重が重いって言ってませんか?」
ムスッとした顔でじっとナターシャを睨む、ナターシャは無視してそっぽを向いた。酷い、私が重いだなんて……年頃の女の子なんですけど!?
なんて思っているとルーシェが私の頭の上でその小さな手で頭を撫でていた。
「大丈夫だよ、ファル、あなた軽いよフェルに比べたらね?」
「それは大人の母上と淑女の私を比べないで!?」
「んー、フェルの若い時の方が淑女だったけどな?……」
「だな」
「そうね」
「もー!3人ともぉ!?」
「お静かに、精霊の方々とお喋りはいいですけど、中々に奇っ怪ですよ?」
「うっ……ごめんなさい、というか知ってたんですね」
「陛下から色々聞いておりましたから、見えませんけど」
「あぁ、そうだ、私の力を分けてあげるよ、ファル、その人の肩を触ってみて」
ルーシェに言われるまま、ナターシャの肩を触る、ルーシェは実態化して私の手を重ねるようにナターシャの肩を触る
「この者にひと時の契約の継承を、精霊の眼を持って我ら精霊の加護を」
「何を言ってるんです……か……ほぅ、貴方がファルファ様の契約精霊様ですね?まぁ、私からしたらそれ以上話すことは無いのですが」
「ねぇ、貴方、友達少ないでしょ」
「普通の人に見えることが出来ない精霊様方に言われることでは無いと思いますが」
「ねぇ!この人に魔法うっていいかな!ファル?」
「こらこら、ダメだよ」
「これは一定時間の間、一般人が精霊様とお話出来るということでいいですか?」
「えぇ、まぁそうだよ、ファルとの会話は楽しいからさ、まぁ?さっきの話をするとねー」
「やめてよ!ルーシェ!」
そんな会話をしながらも遠目に高い城壁が見えてくる、ナターシャは私にフードと被るように促す、言われるがまま、置いていたマントを羽織り、フードを被る。関所のところまで来たのか周りはザワザワと話し声がしている
「とまれ、荷物はなんだ」
「日用品と衣類です、あとは妹が1人、男性不信なのであまり近寄らないで貰えると幸いです」
「ふむ、分かった少し中を見るぞ」
ナターシャが頷いたのかガシャ、ガシャと鎧を着た人が中を覗いてきた。確かに荷馬車には私と衣類と日用品の石鹸を詰めた箱が何箱かあったがそれのためかと思いつつも中に入ってくる騎士の1人、箱を確認し私をちらりと見るとナターシャの注意があってかあまり顔を見てこようとしなかったので優しいようだ
「よし、女二人と衣類と石鹸で銀貨8枚と銅貨5枚だな」
「分かりました」
「……よし、通れ、問題は起こすなよ」
そのまま馬車はガルーナの中に入っていき、ある場所で止まった。扉をノックする音、私は何も知らないのでじっとしていた。
「ファル、大丈夫みたいだよ」
「うん、わかった」
ナターシャがルーシェに合図したのかルーシェに言われるがまま、馬車を下りるとそこは薄暗い裏路地でナターシャが白髪の老人と話していた。
「ファルファ様、この方は元ノーブル公爵家、執事長のハウェル殿です」
「おぉ、フェル様のお嬢様でございますね……確かにお顔もフェル様にそっくりでございますね……」
「……グネリアの血を引くの人間でありますが、メタロの血を引く私を恨まないんですか?」
「……メタロ王国は……フェル様を匿ってくださいました。お礼を言いたいほどです、あの”お方”が変わられてからこの国は廃れております」
「あのお方とは?……」
「グネリア王国現王妃、エリーザ・グネリア様です」
「つまりは……」
「はい、フェル様の姉君に当たります、貴方様からしたら叔母上様に当たりますね」
「どんなお方だったのですか?」
「あのお方はそれはそれは、大変お優しいお方でした。ある日までは……」
「ある日、とは?」
「話が長くなりますゆえ、とりあえず中へ」
ハウェル様は私たちを部屋に入れると質素なテーブルに4つの椅子があり、その椅子のひとつには大きな魔女帽子をかぶった女性が顔を机に突っ伏して寝ていた。私は苦笑いしながらもその人の反対側になる椅子に座る、ナターシャは私の隣に、ハウェル様はその女性の隣に座った。ハウェル様は深い溜息をつき、私を見つめ語ってくれた。
まずはグネリア王族の話を致しましょうか、グネリア王族は代々、黒髪、赤眼の魔眼持ちでした。その魔眼の名は精霊眼、精霊と意思疎通ができ、普通なら見えるはずのない精霊を見ることが出来る魔眼です。そして膨大な魔力に基本4属性全てが扱え、歴代の国王様や王妃様の中には更に特殊2属性のどちらかを扱える方々がいらっしゃいました。
第1王女のエリーザ様。第2王女のフェル様、第3王女のブルーム様、この御三方は大変仲がいいご姉妹でした。
フェル様、ブルーム様は基本4属性が扱えましたが、エリーザ様は扱うことは出来ませんでした。ただエリーザ様は特殊2属性の光、闇が扱え、フェル様は光だけ扱えました。
エリーザ様は民を助けたい一心で回復魔法を練習し続けておりましたが、フェル様やブルーム様が基本四属性で学んでいる姿を見る度にどこか寂しそうに見てらっしゃいました。
ある日、フェル様たちはいつもの遊び場であるグネリア王都の郊外で遊んでおりました。この時フェル様は10歳、ブルーム様は9歳、そしてエリーザ様は13歳でした。
そこでお3人は山賊に襲われたのです。
護衛も連れていましたが手練の輩だったらしく、くしくも全員やられ、御三方とも捕まってしまったのです。
アジトに連れていかれ、一緒の檻に放り込まれ、食事はろくに与えて貰えず、ろくに寝れない日々が1週間ほど続いたそうです。そんなある日フェル様が光の精霊王の加護を授かったのです。フェル様が言うにはぼーっとした意識の中で誰かに呼びかけられたと仰っておられました。
そしてフェル様は光属性に強い適性を持つことになり、檻からを脱走することが出来ました。そのままフェル様は今までの仕打ちを返すように山賊たちをその場で殺して回りました、ブルーム様は熱にうなされていて覚えてないらしく、その現状を知ってるのはエリーザ様だけだったと言われております。そのエリーザ様にもその時の光景を仰ってくださりませんでした。
その日からエリーザ様はフェル様を避けるようになりました。
それから3年が経ち、フェル様13歳になると火と水の精霊王と出会い加護を授かりました。
ブルーム様は12歳になると四属性最上級全ての魔法を扱えるようになり四属性の天才児などと呼ばれておりました。
ですが、エリーザ様は16歳、王立魔法学園に通ってらっしゃいましたが四属性が扱えず、扱えるのは光属性と少しの闇属性のみ、元々闇属性の文献は少なく、覚える魔法が少ないとされてきたので仕方ないのですが……周りの方々からはいい評判をあまり聞きませんでした。王族なのに4属性が使えない、ただの回復魔法しか使えない無能な王族だと……エリーザ様はその状況に耐えきれず学園を去りました。そして自分の部屋に引こもるようになりました。
それから4年の月日が流れたある日です。突如引きこもっていたエリーザ様がでてきたのです。目元はクマが色濃くのこり、髪は地面に引きずるほどまで長く、好んで着ていた白のドレスから嫌いだった黒のドレスを着るようになり、まるで別人になったかのように不気味な笑みを浮かべていたのです。
そこからは不思議なほどトントン拍子でした……エリーザ様は突如結婚し、陛下は操られたように王位をエリーザ様の旦那様、バルガス様にお渡しになりました。そして、数日後病死という形でお亡くなりになられました。
その王位を移す前に陛下はエリーザ様の変化に懸念されていたのかノーブル公爵家当主でいらっしゃいました、アーグ様にブルーム様を嫁がせました。
陛下はフェル様にも結婚させようとさせましたが、フェル様はお父様のお力になりたいと仰られ、陛下は王国最強と言われた王国魔法騎士団の団長にフェル様を選ばれました。
そのあとの話は……
彼がその続きを話そうとすると隣に居た女性がムクリと起き上がってきた。彼女は黒いドレスを身にまとい黒髪、赤眼を持っていて、胸元はかなり空いており男性が見たら刺激的すぎて目を背けるだろう、アルドも今ちょうど、そうした。
「お目覚めですか、ブルーム様」
「ええ、ごめんなさいね、客人を出迎えなくて、あら、この子がフェルお姉様の娘?確かに、顔も似てるし、黒髪にその目は精霊眼、そして精霊王様たちを3人連れてるけど……」
まじまじと私の顔を見てくる叔母様、ルーシェとロザリアは見たことがあるのか、ルーシェが、久々ーなんて言うけど当人は覚えてないのか首を傾げていた。
そんなルーシェたちを見て私は一応王族だからとガチガチに緊張していた。
「はい、ファルファと申します……ブルーム叔母様」
「いいのよ、緊張しなくても、今となってはただの”犯罪者”だから」
とても悲しい表情で自分の事を犯罪者と言う叔母様、何があったか知らない私は反射で聞いてしまった。
「どういう事ですか?」
「そのままの意味よ、”私達”は、はめられたの、エリーザお姉様にね」
どこからともなく水を出してくるとそのまま口に含み飲み込む、多分だがウォーターボールを無詠唱で唱え、勢いを殺しながら口にほおりこんだのだろう、流石天才と呼ばれただけはある、今のも精密な魔力操作がなければ口の中で弾けたり、もしかしたら顔のどこかにぶつかっていて怪我してもおかしくない、私だったら絶対にしない、そんなことを平然とやってのける度胸、そして技量がこの人にはある、その行動ひとつでそこまで見えた
「さて、話の続きをしてちょうだい、ハウェル」
「かしこまりました」
フェル様が18歳の頃、メタロ王国との戦争があり、フェル様は1大隊でメタロ王国軍1師団から当時メタロ王国と国境を隔てた要塞都市ヴェネルヴァを守り抜けとエリーザ様に命じられました。何度も何度も抗議されたのですが……それが限界だとの一点張り、仕方なくフェル様は持ち前の頭脳で何度も苦しい状況を打破して3ヶ月耐え抜きました。ですが、くしくもメタロ王国の最後の抵抗によりヴェネルヴァを取られました。フェル様が敗戦し、帰国すると軍法会議にかけられました。理由はフェル様が敵軍を招いたのではないかという疑問が上層部出たらしく、ありえないと何度も答えましたがフェル様は受け入れて貰えず、そのまま有罪、死刑まで言い渡されたのですが移送中、突如として行方不明になられました。表上都合が悪いので国中では戦死ししたとされておりますが……
ブルーム様は禁忌の薬品である魔物を呼ぶ粉を制作したとして捕まりました。
その調査も違法だと思われたのですが、それを調べていたノーブル公爵家は汚職事件の濡れ衣を着せられお取り潰し、そのまま一家全員夜逃げしたと言われておりますが……真相は
「全員殺されてたわ、私とこのハウェルともう1人を除いてね」
叔母様は胸元から下げていた赤い魔石が着いたペンダントを握りながら悲しそうな表情をしていた。
「そのもう1人と言うのはアントン・グネリア、あなたのいとこね」
「いとこですか……歳は」
「15歳よあなたも確か……」
「15歳です」
「なら今年から2人とも王立魔法学園に通えるわね」
「私はそこで何を?」
「アグウェル・グネリアに接触しなさい、潜入捜査よ」
「あの、その方はどなたですか?」
「今唯一のグネリア王国の後継者よ」
「あの、先程の話ではアントンも後継者なのでは?」
「さっき言ったでしょ、ノーブル公爵家がお取り潰しになった時に殺された事にされてるの、その上今は本人記憶ないし」
「記憶喪失!?今はどこに?」
「私のところよ、本当なら連れてこないとダメなんだけど……」
「記憶を思い出させたくないのですね?」
「えぇ、まぁね、あの子の目の前で家が燃やされて大好きだった何もかもが壊されたから……感情が壊れてしまうのじゃないかと心配なの」
その目には涙が溜まり、今にも溢れてきそうだった。叔母様は腕で拭い、じっと私を見た。
「だから最悪あなた1人で言ってもらわないとダメかもしれない」
「なるほど……」
「師匠、おそ……え?ここは?」
この部屋の奥の扉の方から出てくるのは赤髪の中性声の私と年の変わらない青年だった。彼を見ると叔母様はびっくりしたかと思うと彼に近づいていく、先程まで赤眼だった叔母様は何故か金色の瞳の色に変わっていた。
「あっ!レオあなた部屋で大人しくしてなさいって言ってたじゃない」
「……そしてそのおじさん……どこかで……そこの女は……くろ、かみ、せき……がん……」
彼は私を見ると頭を抱え、座り込んだ。まるでなにかトラウマを思い出すように、肩を震わせて、私の事を恐怖の対処にしているらしい叔母様は彼を抱きしめると頭を撫で始めた。
「大丈夫、私が居るから……あなたを傷つけるやつらなんて、私の相手じゃないんだから、ね?落ち着いて?」
「はは、うえ……」
彼は叔母様を見ると落ち着いたのかむぎゅりと抱きつき、甘えていた。落ち着いたのか離れると私の顔を見つめていた。
「ある程度は思い出した?」
「いえ、全てを思い出しました……母上、ですが、彼女は誰ですか?……私と同じ、いえ、グネリア王族の血を引く者なのは分かりますが……もしかして彼女が父上を?」
「いえ、貴方のいとこのファルファ、私のお姉様の娘よ、それで、アーグを殺したヤツを覚えているの?」
「はい、父上はハウェルに私を任せて、襲撃者と戦っていました」
「相手は?」
「知りません、ですが黒髪、赤眼で男ぽかったです」
「なるほど、やっぱりエリーザお姉様がアーグを……」
2人とも執念に燃えてるのかだんだんと火の精霊が2人に集まっているのが見えた。苦苦いしながらも私は叔母様達を見つめていた。
「あのぉ、ここで大爆発とかさせないでくださいね?」
「しないわよ、はぁあ、嫌になっちゃうわね、感情的になると精霊が集まってくるの、グネリア王族だって教えてるようなものじゃない」
「我々には見えませんからな、ナターシャ殿」
「いえ、私は先程ファルファ様から一時的に精霊が見えるようにさせてもらってるので、確かに精霊が多く集まっておりますね、赤色だから火属性という訳ですか」
ハウェル様は何を言ってるか全く分からない様子だが、ナターシャはルーシェの力で、私には精霊眼があるからよく分かる、かなりの量の精霊達が二人に集まって行っており、叔母様は慣れた手つきであっちに行きなさいなんて言っていてあしらっているがアントンの方は無言でじっと私を見つめていた。
「えっと、その、私に何か用ですか?」
「いや、何でもない、どこかで見たことがある気がしただけだ」
「そうですか、私は無いんですけど……よろしくお願いします、ファルファです」
「あぁ、よろしく、アントンだ」
私達は歩み寄り、握手した、叔母様は嬉しそうに見つめながらハウェル様に何か話していた。
「えっと、叔母様、私とアントン様は魔法学園でアグウェル様に会いに行けばいいのですか?」
「えぇ、そうね、まぁでも今の家名のままだと色々と面倒だし、腹違いの姉弟ということで、魔法学園に通ってもらうわ、確か……今18歳のはずだからあと2年で仲良くなってきなさい!」
「あのぉ、私学園のこと何も知らないんですけどぉ」
苦笑いしながら私は叔母様に説明を求めるとあー……そうだったわと言わんばかりに叔母様は頭を抱えた。
「王立魔法学園は5年制の魔法学園だ、基本的には貴族が多いが中には魔法適性が高いと平民でも入れるが、貴族社会だからな、平民に対する貴族の当たりは強いぞ」
やはりどこでも立場の弱いものは逃げ場がないらしい、ため息混じりにそうですか、と言うとルーシェが頭を撫でてくれていた。
「あぁ、そうそう、私達は魔神信仰集団の情報を集めてるから、貴方達は来週から学園に通うからそれまでに準備なさい?」
「えっと、もう一度いいですか?」
「来週から学園に入るから準備しなさい?」
「アントン様!急ぎましょう!」
「あーその、アントン様って言うのやめてくれないか、姉弟になるんだ、アントンでいい」
「それじゃぁ……その……アントン!急ぎましょう!」
何とか振り絞ったものの、まだ敬語が抜けてなくて頭を抱えている彼を私は外に引っ張っていった。
「私があとを追いかけます、準備物のリストを」
「こちらになります、この街で全て揃うはずですので」
「分かりました。それでは」
「いってらっしゃーい」
私はアントンとファルファ、そしてその後ろを追いかけていく白と赤と青の精霊王様達とナターシャを見送った。
「まさか……ね」
「そうですな、ブルーム様」
「……私は少し出かけてくるわ」
「あら、お茶はいらないの?」
私が出かけようとするといつの間にかにいた白銀の運命がティーポットをとティーカップを3人分を膝の上のお盆に置きゆっくりとこちらに車椅子を進めてきていた。
「あなた、いつの間に居たの……?」
「さっきからずっと居たじゃない」
「……ブルーム様、このお方はお知り合いですか?」
「……知り合いって言うほどコイツのことは知らないわ」
「うふふ、どうも、初めまして……いや、お久しぶりかしら?」
「……あの時はありがとうございました……あなたのおかげで私の命は助かったようなものです……」
「……ハウェル、どういうこと?」
「この方が私が追っ手に追われていたところを偶然通りかかって助けていただいたのです」
「……へぇ、その時この人が使ってた魔法は?」
「……いえわかりません、目の前が一瞬真っ白になって気づいた時には追っ手は全員倒れておりまして、そしてそちらの方がいらっしゃったのです……」
「そうなの、やっぱりあなた……怪しいわね……」
「うふふ、ミステリアスな女って面白いでしょう♪?」
「面白くない!さっさと正体を表しなさい!」
「いやよ、そんなことよりあの子、変装も何もしてないけど大丈夫かしら?うふふふ……♪」
笑みを浮かべながらも彼女はまたどこからとも無く風が巻き起こり、どこかに消えた、部屋には彼女の笑い声が響いていた。彼女に言われた事でなんだか嫌な予感して私は家から飛び出す。家の外では、王国魔法騎士団が家の入口を取り囲んでいた。その中には見覚えのある人間が何人かいた。そして私を犯人として取り立てた張本人、現王国魔法騎士団、団長、ガウェル・アザールの顔を見る。
「あら、誰もノックしてこないと思ったら待ち伏せ?それとも待っててくれたのかしら?」
「ここで反逆者達が集まっていると言う話を聞いたのでな、来ただけだよ、ブルーム様……いや今は四属性の破壊者とお呼びしたらよろしいか?」
ガウェルが悪びれもせずに私の名前を言うがその表情にはどこかバカにしてるようにも取れて周りの団員もくすくすと笑っていた。私は今にも怒りが爆発しそうになりながらもその包囲から抜けようとすると前に騎士たちが立ちはだかる
「どいて?」
「いえ、これは”王族命令”ですので、あなたには大人しくしてもらいましょうか」
ガウェルが火属性の魔法を唱えようとしているのを周りの団員が見ると様々な属性の魔法が至る所から私を狙っていた。
「あのね、そんな魔法で私が怖気付くと思ったの?」
「いくら貴方が天才でも数を揃えば関係ないだろう?」
「バカね、相変わらずあんたは」
「どちらがバカか、今から証明してやろう!「ファイヤーボール」!」
ガウェルが「ファイヤーボール」を唱えると周りの団員たちも「ウォーターボール」や「ウィンドボール」を飛ばしてくる、私は面倒だったので風属性の最上級魔法「トルネード」を無詠唱で唱える、当然のように私に向かって唱えられた魔法を打ち消し、周りの家々の窓ガラスが割れ、突如巻き起こった竜巻に周りの市民たちは叫び助けを求めた。
「ほら、あんた達の仕事じゃない、助けてきなさいよ」
「その前にお前を逮捕してからだ!ブルーム・グネリアぁ!!」
彼は火属性の上級魔法「ブラストファイヤ」を唱えたのか私の足元から火柱が立ち上がる、私はそれを全身で受けた。
「アハハッ!四属性の天才児を倒したぞ!雑魚め!」
「ねぇ、あんた、私達のことを知っててそれ言ってるの?」
火柱の中から私の声がすると彼は顔をひきつらせた。
私が何事も無かったように火柱の中から出てくると団員の1人は私に目掛けて魔法を飛ばそうとしてくる
「ごめんなさいね」
私が一言謝ると飛ばそうとしてきた騎士たちに「ウィンドボール」を唱える、ただし”私”のなので威力は折り紙つき
その団員は余裕そうに同じ「ウィンドボール」を唱えて相殺しようとしたが相殺なんて出来るわけなく、そのまま私の「ウィンドボール」がその1人に当たると体をくの字に曲げ吹っ飛んだ。
そのまま壁にぶつかりその団員は伸びていた。
それを見た団員達は怯えて身構え始めた。
「ば、化け物め!」
「当然でしょ、グネリア王族なのに一般人が勝てるわけないでしょ、まだ戦う?」
「お前ら!飛びっきりのを使え!街がどうなっても構わん!」
「あーあ、そんなことを言っちゃって……仕方ないわねぇ……風の精霊よ、汝の言の葉を我が身に、岩を砕き、木を薙ぎ払う突風よ、我が前に立ちはだかる者を全てを飛ばせ、「トルネード」!」
今度は詠唱ありのトルネード、その威力は凄まじく、起きた地点は地面がえぐれ、周りの何もかもを吸い上げていた。それに巻き込まれた騎士たちは吹き飛ばされ屋根上に落とされたり壁にぶつかったりして伸びていた。数人の騎士団達が詠唱途中だったもので、所々暴発などしてるが気にしないでおこう、
「「うぁぁっ!」」
突然目の前の家からファルファとアントンが私達がいた真隣の家に吹っ飛んでいき、壁を破壊した。
私は目を疑いながらも2人が飛んできた家の方を見る、すると目の前の家が貫通しており、ガラガラと瓦礫が崩れていく中うっすらと見えた、短髪の黒髪、そして目は赤眼、多分だが精霊眼だろう、見た目は18歳くらいの青年だ
「……失せろ」
「待ちなさい!」
一言だけ彼は言うと身体強化で屋根の上に乗りすぐに見えなくなっていった。
「ファルファ!アントン!大丈夫!?」
私は2人に駆け寄ると大した怪我はしてなさそうで安心した。
家からハウェルがとび出てくるとこの場の状況を見て、察したのか私に駆け寄ってくる
「ブルーム様!、あっ、お2人はご無事ですか!」
「ええ、大丈夫、とりあえずここを去りましょう、私の家に行って作戦を練らないとね」
「かしこまりました、ではアントン様は私が」
「ええ、おねがい、ファルファは私が運ぶわ、ナターシャ!居るの!?」
私が叫ぶとどこからとも無くナターシャが飛んできて、膝を着いて頭を下げていた、所々服が破れているのを見ると刺客がいたのかその相手をしていたらしい、
「申し訳ありません、手練の相手をしておりまして……」
「ご苦労さま、とりあえずこの場から離れるわ、着いてきなさい」
「かしこまりました、ファルファ様は私が運びます」
「わかったわ」
私達はアントンが先程出てきた扉に入り、わたしの自宅についた。ナターシャは少し不思議そうに外を見ていた。
私は全員が中にいることを確認すると急いで魔法陣を書き換え、あの場所との道を遮断した。
「……これが魔法ですか」
「ええ、そうよ、まぁ私が最近編み出した魔法だから、そう簡単にはここには来れないはずよ、魔物もわんさかいるしね」
「ほう、そうですか……」
「とりあえず、ファルファは私の部屋に、あぁ、一昨日まで実験してたの忘れてたわ、ちょっとまってハウェル、アントンの部屋あっちだから、そっちにお願いできる?」
「かしこまりました」
私は自分の部屋を片付けるとナターシャを案内し、ファルファをベッドに寝かせた、リビングに戻っていくとハウェルはテキパキとお茶の準備をしていた。ナターシャはそれを見ると私も手伝います、と言ってハウェルの手伝いに行った。
「あいつ何者なの?」
私は窓の外を見ながらも、まるで私達を忠告するように、失せろ、と言って去っていた青年、まさかあれがアグウェルなのか?……確かにグネリア王族の特徴は全て持っていて、アントン達を吹き飛ばしたのも風属性の魔法だろう、緑色の光が見てとれたので間違いは無い、ただ、なぜ殺さなかった。
あのような実力があるならファルファやアントンならすぐに殺せるはずだろう……まるで突き飛ばされるような感覚がした。
「まぁ、美味しそう」
「あんたね、いつも勝手にいるけどあんたのお茶は」
「ティーカップくらい持参してるわよ、あと私に突きつけられてるナイフもしまってくれると嬉しいのだけど」
「用意周到ね!?あなた!あぁ、ナターシャ、こいつは腐れ縁の魔法使いだから気にしないで」
深く考えてる中、急に聞こえる聞きなれた声、やはり白銀の運命だ、私が突っ込む前にナターシャが彼女にナイフを突きつけたが私が止めるとナターシャは直ぐにナイフをしまった。
「ところで、なんであの襲撃があるって分かってたの?」
「……簡単よ、本人から聞いたの」
「あなたは本当に誰なの?」
「さぁ、誰かしら、案外あなたの知ってる人かもしれないわよ?」
「あなたみたいな、何時でもどこでもニコニコー♪ってしてる人間知らないわよ」
「そう、ならいいけど、お茶頂くわね」
「どうぞ、ご勝手に」
「その前にあいつの正体をおしえてくれる?」
「あの子がアグウェル・グネリアよ」
「……なんで私たちに攻撃したの?そしてあなたに襲撃の内容を?」
「……あの子も自分の中で葛藤してるのよ」
「へぇ、なるほどね、それを上手い事つかえば?」
「さぁ?どうなるかしら?」
「ナターシャ、ファルファの身長とか言える?」
「はい、完璧です」
「ハウェル、アントンの身長とかだけ測っといてもらえるかしら、明日もう1回ガルーナに行くわよ、2人の制服を作ってもらわないとね」
「かしこまりました」
私が2人に指示を出していると、どこからとも無くまた風が吹いて彼女は去っていった。ティーカップを置いて、まるでまた来ると言わんばかりで私はため息を吐きながらも来週の2人の入学式に向けて準備を始めるのだった。
そして、後で知ったことなのだが……ファルファ、貴方昔のお姉様より発育いいわよ……お姉様知ったら絶対羨ましがるわね
なんて思いつつも私はまたガルーナへの道を作り始めるのだった。
今回は読んでいただきありがとうございます。
時々私も見返すと思いますが、誤字脱字ございましたら是非ともご指摘いただければとおもいます。
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