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国からの逃亡

今回はメタロ王国からのスタートになります。

「ファル!今日はどこに行くの?」

「んー?北の森かな、魔物たちが出たとか噂聞いたし」

「そっかー、ならロザリアとアルドはお留守番?」

「うん、そうだね、身体強化も慣れてきたし、自分の力だけで倒せるようにならなきゃ」


ルーシェ達と出会って2年がたった。

私は15歳になり、立派な淑女になっていた。

相変わらず、お義母様から虐められてるけど…最近はロザリアが教えてくれた魔力探知のおかげでメイド達のイタズラをよけれるようになってきた。

あるメイドが私の足を引っ掛けようとして平然と避ける私を見て、え?と驚いた顔で見られた時、面白かったなぁ

そんなことは置いておいて、私は今、王城から抜け出して修行のために強力な魔物が出たと言われた北の森に来ていた。

お供にルーシェを連れてきているのは、もしものためである、私はお母さんに似て光属性との相性がいいらしい。

時々聞くお母さんの話は面白く、お茶目な面もあって場を和ませていたらしく、私が笑顔を見せると、ルーシェはいっつも懐かしむように私を見つめていた。


「ここかな?」


魔力探知で引っかかった場所に降りると先に着いていたであろう王国の騎士たちの剣や槍が至る所に落ちており、その中には無印のものもあった。

この世界には、騎士とは別に民間の防衛機関としてギルドが存在する、ギルドは冒険者を使い、商人たちの依頼や民間から来る依頼をこなし、依頼料を受け取り、それを冒険者に渡すという仕事をしている。

多分だがこの無印の武器はここに来た冒険者が落としていった武器だろう、だが所々血しぶきのようなものが木や地面に飛び散っており、悲惨さを物語っていた。


「う、うぅ...」


茂みの奥で男性のうめき声がした。

私はその声を頼りに茂みの中に入ると底には肩をなにか鋭利なもので切られた王国の騎士の鎧を着た男がいた。

私は顔を知られているので着ていたマントのフードを被ると彼に近寄る。


「大丈夫ですか?」

「……ファルファ様……?いやこんなところにあんなお方が来て下さるわけないか……あぁ、大丈夫だ、今自分で止血が出来たところだ、不甲斐ないな、俺だけ助かって……他のやつらは死んでしまったのに、俺は騎士団の名折れだ」

「そんなこと言ってはダメですよ、あなた方はこの国の民を守るためにいるのでしょう?自分もこの国に生まれたのだからあなたもこの国の民の1人、それは自分の命を守れなくて誰を守るのですか?それこそ騎士団の名折れです。」

「……耳が痛いな、俺の娘と歳が変わらない子にそんなことを言われるとは、冒険者なんだろう?あんた」

「……ええまぁ……魔物はどちらに?」

「この先の洞窟にいる、気をつけろよ、奴は強い」


と言うと彼は眠りにつくように気絶してしまった。

息が安定してるので安心したがこの森の奥にそんな場所があるとは知らなかった……とりあえず向かうことにしよう。

と、その前に私は彼の一定範囲内に結界の魔法を貼った。これで魔物たちに襲われる心配はないだろう。


私が洞窟に向かうとやはり人を喰らう魔物だったのか洞窟の中に続く血で書かれた引きづられたような跡があった。

洞窟の中は暗闇で、入ろうとすると死体が腐敗したような匂いと共に血なまぐさい匂いで私の顔は歪む。

私が3年間の間何もしてなかった訳では無い。修行を重ね、このような状況にも何度もあってきたが、やはりこの匂いには慣れないらしい。


「ライト」


これは光魔法を応用したグネリア国でよく使われる初級の魔法らしい。手のひらから光の玉が現れ、洞窟の中を照らしていく

ゆっくりと進みながらも魔力探知で奇襲されないように警戒は怠らない。


「ねぇ、ファル、この奥なんか嫌な感じがするよ」

「ちょっと、ルーシェ、私に話しかけないでよ、今集中してるんだから」

「帰ろ!早く!アルドとロザリアを連れてきた方がいいよ!」


私の服の裾を引き私を来た方向に向かおうとするルーシェ、確かに今回は私も凄く嫌な予感がする……だがここで諦めれば、また次の被害が出てしまう。それを抑えるためにも私が動かなくては……その使命感にかられ、私は洞窟の奥へと進む、ルーシェの妖精化している時はそこまで強く引っ張られないのでただの何処吹く風だ。

1つ、強い反応が魔力探知で引っかかる、そしてそれはゆっくりと私に近づいてきていた。

ドシン、ドシンと地面を揺らすような音ともに、グルル……と唸るような獣の声、ゆっくりとその姿が私の魔法によって照らし出されていく。

それは巨体の熊だった。それも私の何倍もある巨体で腕1本の長さが私の身長と変わらないほどだった。

私を見つけたその熊は私を見つけると、グォォォッ!、と大きな声で威嚇してくる、その声は空気を揺らすほどの大声で洞窟の中を反響していた。


私は腰に携えてた剣を抜くと熊に向かって構えた。

それを見た熊はその巨体から想像ができないほどのスピードで突撃してくる。私は飛びのくとそのまま熊は急ブレーキをかけ、反転してくる。また突撃してくるかと思ったら、私の着地地点を狙って土属性の上級魔法、「ストーンエッジ」を飛ばしてくる、口から放たれたその大きな岩は尖端は鋭くとがっており、あんなものを食らったらひとたまりも無いだろう。私は咄嗟に風魔法「エアブラスト」をその岩に向かって放つ、その強風の弾丸は岩の一部を砕き私の着地地点からずらした。

私は着地するとそのまま同時詠唱、風属性の中級魔法「エアブラスト」と土属性の中級魔法「ロックブラスト」を放つ、先ほど放たれた岩よりかは石程度までしか大きくできないものの、威力は木にめり込む程度なのでそこそこにはある、熊は何とか避けようと洞窟を駆けずり回る、私は後ろに背負っていた弓をかまえ魔力を貯める、そして同時詠唱、今度は火属性の中級魔法「ファイヤーアロー」と水属性の中級魔法「ウォーターアロー」、その二つの矢の形をした魔法は着地地点に向かって飛んでいき、直撃、蒸発した時の水蒸気で魔物は見えなくなるが、魔力探知に反応はあるため私はそのまま魔法を詠唱する。


「氷の結晶、我が手に宿り、その切先にて目前の敵を貫け、アイスエッジ!」


詠唱することによって威力が増すとかルーシェ達は言っていた。私が唱えたのは水属性の上級魔法、先程の石よりも大きく、熊が放った岩よりも大きな氷塊が熊に向かって飛んでいく。

熊は怯んでいたのかそれを受け止めようとするが、自分の体とさほど変わらない氷塊を受け止めることできず貫かれた。氷塊が砕けてぽっかりと腹部が大穴が空くとそのままどさりと倒れ込んだ。

ドロドロとした紫色の血がその場で広がっていく。


「ファル!!危なかったじゃない!」

「ごめんなさい、出来ると思っちゃったから……」

「はぁ、今回は何とかなったから良かったけど……まさかマッドグリズリーがねぇ……」

「そんな名前なんだその熊」

「まぁね、土魔法を得意とする魔物だよ、毛皮は鋼鉄より固くて防具に加工できるから高値で売れるとかでね」

「へぇ、ギルドに置いてったら面白そうだね、持ってこっか?」

「はぁ、全くもう……そういう所フェルと変わらないんだから……」


身体強化でマッドグリズリーを持ち上げるとルーシェが頭を抱えながら私の後ろを着いてくる、外に出ると朝日が登ろうとしており急いで私は王都の北門の所に死体を投げつけ、踏み台にするとそのまま王城に向かって屋根から屋根へと飛んでいく。

自室に入ると1年前にお父様が付けてくれた。お付きのメイド、ナターシャが待っていた。


「ファルファ様、お帰りなさいませ、”今日も”冒険者まがいのことを?」

「えっとその……お父様には黙っといてもらえると……」

「いつもの事です、構いませんが、朝食の前に湯浴みを、既に準備してありますので」


テキパキと仕事をこなしてくれる彼女はとても助かっているが、仏頂面でじっと見つめてくる彼女の深緑色の瞳、それに後ろでまとめてある明るい赤の髪はポニーテールで、歳も私より5歳ほど上で、爵位も男爵令嬢で、結婚相手が見つからないのが不思議なくらい美人なのだが、なぜこんなところでメイドなんてしてるのかと質問をしたことがあるが、趣味です、と答えるだけなので、それ以上何も聞いていない。


「ファルファ様、あの北門の魔物は換金されますか?」

「はい、よろしくお願いします」

「かしこまりました」


彼女はいつも勘が鋭いというか、目がいいのか知らないがいつも私が狩ってきた魔物たちを換金してきくれている


「それでは、私は換金の準備がありますので失礼します」

「はい、お願いします」


彼女が一礼して部屋から出ていくとアルドとロザリアが部屋の窓のカーテンから飛び出てきた。


「なぁ、ルーシェ、お前ファルに何させたんだよ」

「私はとめたんだよ!1回帰ろって!ファルがフェルと似て正義感強いから、マッドグリズリーを1人で…」

「なんですって!?マッドグリズリーを1人で倒したの!?」


3人ともありえないと言わんばかりな言い方をしていたので私はそうかなぁ?...なんて思いつつも3人の話に入る


「えっと、3人とも?マッドグリズリーってそんなに強いの?」

「うん、そうだよ!本来であれば2小隊を総動員して解決するものなんだから」


ルーシェに言われ冷静になり計算をする1小隊が30人程度だから...60人!?私、結構軽々しく倒しちゃったけど...そんなに強い魔物だったんだ...


「それで?怪我は無いの?」

「うん、ないよ?結構強い魔法使ってくるから近接攻撃は避けて魔法攻撃メインで倒したけど」

「それは良かった...」


2人ともほっとした様子でため息を着く、そしてルーシェを睨みつけた。


「お前なぁ、ファルは2年修行してると言っても相手はマッドグリズリーだぞ!?そこは実体化して止めるべきだったろ」

「そうよ、ルーシェ、今回はどうにかなったけど、次はどうなるか分からないんだから!」

「ごめんなさぃ」


妖精化してるルーシェはシューンとどんどん小さくなってく


「ちょっと2人とも!ルーシェを責めないでよ!私が自己判断したんだから!」

「ファル……まったく、とりあえず、風呂に入ってこいよ」

「そうよ、ファル、私達も言いすぎたから、のんびり入ってきなさい」


2人に促されて私はお風呂に入っていた。暖かい、お湯、剣の練習しか無かった少女時代の頃の私には癒しのひとときだった。目が落ちていく、こんなところで寝たらダメなのに、そんなことを考えながらも私は目を瞑ってしまった。


「ファルファ!起きて!」


バスルームに響く声、それで私は目を覚ました。

その声の正体はルーシェだった。お湯はぬるくなっており時間が経ったのを物語っていた。


「えっと、私何分くらい寝てた?」

「1時間くらいだよ!」

「あっ、急がなくっちゃ」


私は写し鏡に映る自分の体を見る、2年前よりも身長が伸びたものの、157cmくらいで、その身長に似合わない、胸、さらに出たお尻、1度アルドに見られたことがあるんがすぐに顔真っ赤にしてそっぽを向いていた。

別にアルドに見られるのはあんまり気にしてないのだが、当人は気にしてるようでそれ以降、彼は私が着替えている間は私の部屋の扉の前にいて終わったよ、と言うと部屋の中に入ってくるようになった。

ルーシェやロザリアはかなり女性らしい体になったね!とは言ってくれるが私は男性との交流を控えているが、何度か国の行事で出る時に今まで多いほどではなかった目線が前よりも多くなった。

まぁ、私が胸元が空いた、ドレスがいいと言ってそれを着始めたというのもあるのだろうが……まぁ、いつもながら妬ましいと言わんばかりにお義母様から睨みつけられてるので、とっても気分が悪いです。

体を拭き終えた私はバスルームを出ると既にナターシャがドレスを準備して待っていた。


「ファルファ様、長風呂はあまり宜しくありませんよ?」

「なら起こしに来てくださいよッ」

「気持ちよさそうに寝ていたので」

「あー!!私の寝顔みたんですね!」

「ええ、見ましたよ」

「尚更起こしてください!」


私の言葉を無視して私に服を着させてくるナターシャ、この人は掴みどころがない、年は私より6つ上でいつも何を考えてるか分からないし、私がルーシェ達と話しているところを見ても気にとめず、作業をしている。


「はぁ……今日もされるのかな」

「”今日は”大丈夫ですよ」


彼女がお付きになってから、週に2、3回だが、メイド達による嫌がらせがなく、睨みつけるようなお義母様を気にしなければ、普通の食事ができるようになった。なんだかその時だけはメイド達の動きが丁寧で、なんだか”別人”のようになっていた。彼女が言う”今日は”はとても信頼している。人間性の方はどうかと思うが、なんて思いつつも私はナターシャに着替えさせられて、食堂へと向かう。

食堂に着くとお父様、お義母様、そしてアンドレアが座っていた。


「遅くなり、申し訳ありません」

「相変わらず、時間にルーズなのは治らないのですね」

「すこし、剣の練習をしていたので、湯浴みをしておりました」

「まったく、あなたはこの国の王女なのですよ!?なのに未だに剣の修行にあけくれて、そんな暇があるのなら未来の王族となる素敵な男性を探しなさい!」

「ヴェレナ、そこまでにしなさい、ファルファ、とりあえず座りなさい」


その間に入ってくるお父様、アンドレアは平然とご飯を食べていた。お父様に促されるまま、自分の場所となる椅子に腰をかける


「説教はあとからでもできるだろう、今は食事の場なのだから控えなさい」

「失礼しました……ヴォロ様」

「アンドレア、剣の方は上達したか?」

「はい、昨日はボルドー騎士団長と対戦していただき、惜しいところで負けてしまいました」

「そうか、ボルドーは剣一筋のやつだからな、あいつに惜しいところまで戦えるならいいだろう」

「ファルファ、お前はどうだ?」

「えぇ、この前ボルドー様に勝てるようになったので最近は森で魔物を相手にした修行を」

「ふむ、なら朝一番で届いたマッドグリズリーを倒して北門に放置した少女はお前か?」

「い、いえ!違います!私が狩れるのはせいぜいウインドウルフ程度です」


ウインドウルフと言うのは初心者の冒険者に壁になる風属性を得意とする狼型の魔物だ。

ふむふむと少し笑みを浮かべながらも答えるお父様、それと対比に私の事をありえないと言わんばかりの目で見つめるお義母様


「野蛮な……アンドレアをみならないなさい」

「すみません、お義母様、私の相手ができるのはもうボルドー騎士団長しか残っておりませんからアンドレアに譲ってあげてるだけですが?」

「物は言いよう、ということでしょう?負け惜しみよね?アンドレアに負けたくないからそんなことを言ってるだけでしょう?」

「お父様、お義母様、今日お時間があるのでしたらボルドー騎士団長との対戦の方を見ていただけるとどちらが本当か分かるでしょう?」


シーンと静かになる食堂、まるで私がそんなことを言うことがありえないと言わんばかりに睨んできて、私に怒りを向けてくるお義母様、お父様は執事に自分の予定を確認していた。


「よし、私は余裕を開けた、ヴェレナ、私はファルファを疑う訳では無いが、初めての願い事だと思い、その願いを叶えてやりたい」

「……ヴォロ様がそうおっしゃるのでしたら、私もそこまで予定は無いので、向かわせていただきます」


そんな事が決まりながらも私はいつもに比べた段違いに美味しい料理に舌鼓しながらその話を聞いていた。


「ありがとうございます、お父様、お義母様」

「それではアンドレアのも見てもらいましょうか、よろしいですよね?ヴォロ様?」

「あぁ、構わない、その程度の時間はあるだろう」

「よかったわね、アンドレア、あなたの勇姿を見せてあげなさい」

「はい、母上、父上、私の勇姿をご覧下さい!」


自信満々に胸を張りお父様の目を見るアンドレア、私より2つ違うだけだが、もう既に身長は抜かれていて、とても悔しい。

が、剣の腕なら負けていない。アンドレアは言っていないが何度か私に負けている、この前は1太刀で勝つほど実力差は空いている。


皆が食べ終わり、私は先に訓練場に向かうと、ボルドー騎士団長が先に騎士団の訓練をしていた。


「ファルファ様、お久しゅうございます」

「いえ、皆さんもご苦労さまです」


周りからは、そんなことありませんよー!やこれくらい楽勝ですよ、という声などが掛けられ笑みを浮かべる私、ボルドー騎士団長はガタイがよく私よりも一回り背が高い、190近いのではないだろうか、とも思いつつ彼を見上げる、それに気がつくと彼は膝をつき私を見つめる


「どうかなさいましたか?今日も訓練をお付き合い頂けるのですか?」

「ええ、まぁ、その前にお父様とお義母様が私の剣の実力を知りたいから見学に来ますよ」

「ほぅ、なるほど、ならば私がお相手を致しましょう、騎士ボルドー、ファルファ様にこの前は負けてしまいましたからなっ、はっはっはっ!」


その声が訓練場に響きわたり、騎士団の皆さんも笑っていた。


「ほぅ、やはり本当だったのか、ファルファよ」

「お父様、えぇ、でもボルドー様も常に訓練されてらっしゃいますので、また勝てるかは分かりません、運が良かっただけかも知れませんので」

「ご挨拶申し上げます、陛下、ファルファ様の実力は本物です、このボルドー、女には臀に引かれぬようにと育てられてきたので、本気でファルファ様と勝負いたしましたが前回は、至らぬ結果になりました。この近衛騎士団長として不甲斐ない限りです」

「気にするな、メッケン侯爵よ、私の血がファルファには流れているのだ、剣の筋がいいのは幼い時から知っているゆえ、いつかはとは思っていたがこんなに早く追いつかれるとはな」


2人とも楽しそうに会話をしながらもボルドー様は会釈したままで話していた。やはりこの人は騎士感が強く、義理堅いお人だ、元々は子爵だったのをお父様が近衛騎士団長に推薦し、侯爵まで上がった生粋の成り上がりであり、それはボルドー様の剣の腕と人柄の良さが出た結果でもある。なのでボルドー様はいつもお父様と話す時は頭を常に下げている、それほどボルドー様にとってお父様は尊敬の対象であるらしい


「とりあえず、メッケン侯爵、頭をあげなさい」

「それでは失礼します」

「ヴェレナはまだか?」

「はい、ファルファ様が一番最初に来られてます」

「そうか、それでは見学させてもらおう」

「はっ、皆!陛下が今回見学に来てくださった!今日は気合いを入れ訓練するように!」

「「「ははっ!」」」


騎士団一同お父様に一礼すると訓練に戻っていく、その目は真剣そのものでいつもながら、素晴らしい光景だ、この人たちによってこの国は守られており、真っ先に問題を解決に動く正義感強いこの騎士団は1番好きでもある。

そんなことを考えているとアンドレアとお付きのメイドを2人連れてやってくるお義母様


「ヴォロ様、申し訳ありません、少々遅れてしまいました」

「あぁ、気にするな、ヴェレナよ、先程本人から聞いた、メッケン侯爵にファルファは勝ったそうだ」

「それは、そうでしたか、まぁ運がよかっただけでしょう?」

「それを確認するために来たのだろう?早速見ようでは無いか、メッケン侯爵!」


お父様がボルドー様に声をかける、ボルドー様はサッと近づいてお義母様とアンドレアにそれぞれ一礼ずつすると、なんでしょうかとお父様に尋ねる。


「うむ、ファルファとの決闘を見せてもらいたくてな」

「かしこまりました」


深く一礼すると私の方を向き決闘の準備をするように数人の騎士に伝える、私達は10歩分の間を空けて対面している、互いに剣を抜き構えていた。


「それでは、ボルドー騎士団長対、ファルファ王女による決闘を始めます!ルールは相手が敗北が認めるまでとします!それでは、はじめ!」


私達は地面を蹴り剣を合わせる、力では負けるので私はその力を受け流し、裏に走り抜ける、ボルドー様がよろめくと後ろから切りかかるがボルドー様は反転し私の剣を受け止める、流石にお父様が認めるだけの実力があるためその程度ではこの勝負は終わらない、それは前回から知っていること、でなければ楽しめない、私はボルドー様と戦ってる時が一番楽しい、あの魔物も楽しかったけど……私はそのまま飛び退き距離をとる


「さすがですね、ファルファ様」

「ボルドー様もですよ、普通の騎士出来たら先程ので負けてる方は多いのでは?」

「不甲斐ない限りですな!来ますか?」

「ええ、次!行きます!」


私はまた突っ込むと剣を止められないように細かい攻撃に変える。ボルドー様は少し苦しそうにしながらも受け流し、次の剣を見据えて構えを変える、ジリジリと私が押しているとボルドー様は起点を作るためにそこで蹴りを繰り出した、それも的確に腹を狙って、私は攻撃をやめて防御を取ると彼の着ていた鎧と剣の腹が音を鳴らし、私は蹴り飛ばされる。


「申し訳ありませんな、ファルファ様、そのまま負けるのは名折れですゆえ」

「いえ、お構いなく、負けず嫌いですものね?ボルドー様は」

「そうですとも!」


その声とともに私に向かって突撃してくるボルドー様、私も突っ込み彼の肩に手を乗せ、そのまま彼の後ろに回る、そして空中にいるさなか、背中に一撃与え、彼の後ろに立つ


「ハハハッっ!メッケン侯爵よ!私の娘はどうかね!」

「ええ、大変お強いですとも、その身のこなし、昔の陛下と変わりません」

「そうかそうか!すまなかったな、まだ続けるか?」

「いえ、私の実力不足でございました、今回も私の負けでございます」


急に割って入ってきたお父様、お義母様とアンドレアは絶句した表情で私を見ていた。


「勝者!ファルファ王女!」

「ありがとうございました」

「いえ、こちらこそ、ファルファ様、私の実力を優に越えております」

「ご謙遜を、まだまだ人生長いのですから、いつかは私が負ける時が来るかもしれませんよ」

「それはどうでしょうか、”それが来るのも案外早いのかもしれませんね”」


何故だか一瞬彼の目付きが変わったもののすぐにいつもの優しい目になる、彼に握手を求められ、それを握り返し握手をする、周りからは声援やら色々と聞こえるが私が、さっきの発言が少し引っかかりながらも、お父様のところに向かう


「ファルファ、どうした?」

「いえ、お気になさらないでくださいお父様」

「うむ、すまないが私はこれで会議があるからな、アンドレア、お前の剣を見られなくてすまない」

「いえ、お気になさらずとも、いつでも見せることは出来ますゆえ!」

「ふふ、私の子供たちは立派なものよ、それではな」


そう言ってお父様は会議室に向かうために後にしていった。


「ファルファ、あなた本当だったのね」

「はい、お義母様」

「……そう、つまりはアンドレアより強いってことね」

「ええ、まぁそうなりますね」

「私もお茶会の約束があったのを忘れていたわ、アンドレア、ごめんなさい?」

「いえ!母上!お気になさらず!」


と言ってお父様の後を追うようにお義母様も訓練場を後にした。


「姉上、絶対次は勝ちますから」

「いつでも待ってるわよ、アンドレア、私も汗かいちゃったし、部屋に戻るわね」

「……分かりました」

「ファルファ様、少しお話が」


私が訓練場を後にしようとすると、ボルドー様から声をかけられた。


「なんでしょうか、ボルドー様」

「アンドレア様には少し聞かせれない内容ですので、あちらの方でも」


ボルドー様に案内されるまま私達は訓練場の隅にある倉庫に入った。


「それで、なんでしょうか?」

「私はあなたの母君を知っております」

「本当ですか!?私も気になっていたので是非ともお話を聞いたいのですが」

「ええ、ですが今は訓練中ですし、あなたには辛い思いをさせてしまうかもしれませんので……今夜、私の邸宅に来ていただいても構いませんか?陛下にも秘密でお願いします」

「ええ、構いませんがなぜお父様も秘密なのですか?」

「それは……貴方の母君は敵国の重鎮でしたから、陛下もそれを気にしてらっしゃるんですよ」

「えっ……そ、そんな、なんで私の母が……」

「ですから、陛下にも内緒でお願いします」

「わかりました……では今夜」


……なかなかに私名演技だったな、なんて思いつつも彼よりも先に倉庫を出る私、そんな話私はとっくにルーシェ達から聞いてるので知っているし、そんなことよりも彼が誘ってきたのに乗ることが重要だ。そう考えた私は思考をめぐらせる、もしかしたら何かあるかもしれないため、ナターシャには伝えるとして、誰かを連れていこうか……もしもの事を間かわえてアルドもロザリアもルーシェもつれていこう

そんなことを考えながらも私は自室につき、ナターシャに湯浴みの準備をさせた。


「ナターシャ、私今日、ボルドー様の邸宅に行きますので、本人の希望で誰にも伝えるなって言われましたが……あなたは信頼してますので……その、お父様には伝えないでください」

「かしこまりました、何かあれば”西の外をご覧下さい”」


なんのことか分からないが彼女が言うのだ、私の生活を変えてくれた彼女を信じよう、そう思いながらも私は湯浴みをしに向かう

数十分ほど立って私が出てくる頃には既にナターシャは居なくてドレスだけが準備されていた、何故か黄色のフリルの付いたドレスなのが疑問だが……いつもならもう少し大人しめの、青や緑などを選ぶ彼女が今日は派手に盛れということなのか?なんて思いつつもひとりで着ていくがやはり胸元が苦しい、また大きくなったのかなんて思いつつ、ルーシェを呼び、後ろを閉めてもらい、密かに外に出る、何故か私の通り道には誰も通らないようになってるのか妙に静かだった。

私は王都内のメッケン侯爵邸宅に向かった。


「お待ちしておりました、ファルファ様」


執事達やメイド達を連れずに貴族服に身を包んだボルドー様が出迎えてくれた。


「いえ、母の話を聞くためですから」

「それではこちらに」


私が案内されたのは彼の執務室で、ナターシャが言っていた。西側にも窓があり何を合図にするつもりなのか何も伝えられてないことにふと気がついたが、ここでそんなことを出せば彼が昼に言っていた事が気になり仕方なかったので考えることをやめた。彼は部屋に鍵をかけると、私にソファーに腰をかけるように促した。私が座ると彼が反対側に座りじっと私の顔を見つめてくる。


「あなたの母君はグネリア国の魔法騎士の団長を務めておりました」

「……なるほど、魔法が使えるのですね、母は」

「はい、実力もさることながら、魔法もそれはそれは我々にとって恐ろしいものでした、どこからともなく川が現れ、幾度もなく撤退を余儀なくされました……」


彼の話は一部はルーシェたちから聞いていたがメタロ王国の1騎士としての意見が散りばめられていた。私の母は何度も何度も去りなさい、さもなくばと言って天変地異を起こして、我々を脅してきた。だが撤退できない理由があったお父様はそれに対抗するために何度も何度も作戦を考え続け、その泥沼の戦いが3ヶ月たったある日の事だった。


「陛下は、いえ、ヴォロ様は食料がなくなってきたからと撤退指示を元陛下に進言しました。元陛下は戦好きだったのはご存知ですよね?」

「はい、お父様から聞いております」

「はい、元陛下は屍を重ねてでもすすめと、言ったのです」

「なんと……」

「ヴォロ様は嘆きました。父上は馬鹿なのか!とだが命令に背けば弱腰の王子と罵られるのは分かっていたのでヴォロ様は動かざるおえなかったのです、そこで決死の戦いを行い、グネリア国の重要国、ヴェネルヴァを手にしました。その時に私の友はほとんどは亡くなりました、ヴォロ様は毎年ヴェネルヴァに赴き、その時に無くなった兵士たちに黙祷しております」

「……それで私の母の話は」

「あぁ、そうでしたね、私からしたらあなたの母君は死神です、黒髪、赤眼の魔女、フェル・グネリア、あなたの母君はグネリア国第2王女です。どうやってヴォロ様が口説いたか、はたまたあの死神がヴォロ様に魔法をつかったかは、しりませんが……未だに恨んでおります、金色(クリューソス)の魔術師(マジシャン)、あの死神の2つ名です、私は恨んでおりますあの死神も死神が産んだあなたの事もですよ、ファルファ様……いやファルファ・グネリア!お前はあの死神を母に持ちこの国で生きている!あの惨劇を知らず、のうのうとな!殺してやる、今回はそれのために呼んだんだよ!馬鹿め!そんないい体をしておいて勿体ないからな!1度味見してから投獄してもいいなぁ!あははっ!悲痛の叫びを叫んでもいいぞ!今日は誰もいないからな!あははっっ!」

「そうですか、では……抵抗させてもらいましょうか」

「無駄に冷静だが……これを見てもそれを言えるのか?」


彼が指を鳴らすと、山賊らしき格好の男たちが執務室の至る所から出てくる、隠れてたらしい、私が西の窓を見るとメイド服を着た女性らしき人がぺこりと頭を下げて瞬きをしてる間に消えていた。


「お前ら、やれ、いつもの様にな!」

「さすが旦那!いい女を連れ込んでくれましてありがてぇや!」

「さて、嬢ちゃん?おじさん達がいいようにしてあげるから大人しくしててくれるかなぁ?ならいたい思いはしねぇからよォ?」

「拒絶したら?」

「そんなの、痛い思いするのは嬢ちゃんだけだぜ?剣を持ってきてないのは余裕の表れか?旦那に勝ったらしいが」

「お前ら、そんなことはどうでもいいから縛れ、あの女の血を受け継いでるんだ、魔法が使えてもおかしくない」


ボルドーが命令するが男達は無視をしておりケラケラと笑っているだけだった、一人の男が私の隣に座り腕を肩に回し胸を揉もうとしてきた。私は容赦なくその男の顔面を殴った。その男は床に倒れ、怒りを露わにして私を見てくる、私は涼しい顔で見つめていた


「話が終わりなのでしたら私は失礼します」

「てめぇ!何しやがる!」


私が立ち上がり出口に向かうと他の男たちが目の前にたった、すると私が殴った男が立ち上がり、携えていたサーベルで私を背中から切ろうとする


「ウインドボール」


私が一声背中から来た彼に向かって風の玉を飛ばす、彼は吹っ飛びテーブルで腰をうち、もがいていた。

その瞬間、彼ら全員は唖然としていた。


「やはり死神の血だ!殺せ!なぶり殺しでもなんでもいい!好きにしろ!」

「そうはいきません」


部屋に入ってくるのは全身黒ずくめのフードを被り仮面をつけた女性、手には剣を2本持っていて、服はところどころ血がついていた。


「お、お前、ほかの部屋にいた奴らは?」

「殺しました」

「あいつも殺せ!」


彼女は山賊たちをおしのけ私の元に近づきながら淡々と答えてくる彼女にボルドーは腰を抜かしたのか壁の隅に逃げてほかの山賊たちは私達を囲んでくる。


「どうぞ」

「ありがとう」


私に平然と剣を渡してくる仮面の女性、私もそれを受け取り剣を出す、更に控えていた3人も実体化したが彼らには見えないらしい、山賊たちはまだまだ余裕の笑みを浮かべていた。


「それでも10対2だぞ、嬢ちゃんたち?」

「おいおい、今入ってきた女もいい女じゃねえか、やるぞ」

「「「おう!」」」


彼らは群がるようにかかってくる、その間にも3人とも詠唱を終えたらしく合図を待っているようだった。


「3人ともよろしく!」


私が言うと

アルドは火属性の上級魔法「ブラストファイヤ」

ロザリアは水属性の上級魔法「ウォーターカッター」

ルーシェは光属性の上級魔法「ホーリーバレット」

を唱えた。高熱の炎が地面から吹き出し、あるところでは水の刃が飛んでいき、あるところからは光の玉が大量に山賊たちに襲いかかる唐突に出てきた魔法によって山賊たちは焼かれたり、上半身が落とされたり、光の玉に撃ち抜かれていた。

生き残ったのはボルドーだけだった。


「……ふーっ、ふーっ……やっぱり俺がするしかないんだ」


ボルドーは胸元からなにか小瓶を取りだした。それは黒色の錠剤で、彼は、それを一気に、口に放り込み、呻き始めた。


「うぅ、うぅ!?……あはは、魔力とはこれなのか!素晴らしぃ!魔神の力とは最高だな!!これならお前に勝てるぞ!死神ィィ!!」


彼は立ち上がると身体強化で筋肉が隆起し、貴族服が弾けた、落ちていたサーベルを2つ取ると私に向かって飛び込んできた。冷たい目で見つめた私はその動きの隙が見えた。そこに飛び込んだ。


「焦ったらダメだと言っていたのは貴方ですよね、”ボルドー様”」


私は一言、言うと彼の首を飛ばした。魔力があるせいか、最後にボルドーは笑みを浮かべ死んでいた。


「終わりましたね、自己紹介が遅れて申し訳ありませんでした。お嬢様」

「ナターシャですよね」


その声を聞いて私は嬉しそうに彼女の方をむく、彼女は膝を着いておりじっと見つめていた。


「はい、本名はナターシャ・プサル、ファルファ王女様の母君、フェル王妃の義妹になります」

「お母様の義妹……」

「はい、実子である私ですが、フェル様とは何度か話したことはあります」

「お母様のことを知っているんですね?」

「ええ、フェル様はあの者が言っていたような死神ではありません、心優しいお方でした」

「慰めてくれるのですね」

「……そういう訳では……」

「気にしなくて結構です、それよりありがとうございました。ナターシャ」

「かしこまりました。それでは陛下からの伝言を……」

「お父様から?」

「はい、一言でした。すまないと伝えてくれと仰ってました」

「どう言う……」


その時、邸宅の外で大きな爆発音がした。私が焦って窓の外を見ると王城の、それもお父様の執務室が爆発していた。


「お父様!」

「ダメです、ファルファ様、間に合いません、私はヴォロ様に言われて貴方様を隣国グネリアに連れていくように命令されておりますので」


私が焦って外に出ようとするとナターシャに捕まり、止められた。


「離して!ナターシャ!今なら間に合うから!」

「貴方様が身体強化で行ったところであそこに着く頃には兵士が集まりあなたがやったと勘違いされて国を追われますよ!」


確かにナターシャの言う通りだ……深呼吸して落ち着いて考えるんだ、ファルファ、お父様は最初からこのことを見据えていたのだ、そう思ったら無性に涙が出てきた


「どうして!なんでお父様がっ!」

「分かりません、ただ私が調べてる中、魔神信仰が裏の世界で流行っているらしいとしか……」


さっきボルドーが言っていた魔神の力、と言っていた。彼は上手いこと使えてなかったのであれだったがこれ以上に恐ろしいことになるのか……そんなことを思いながらも私はナターシャに抱きつき、泣きつくことしか出来なかった。


ぽつりぽつりと雨が降る中、轟々と燃え盛る王城、この日メタロ王国は衰退の一途を辿るのは言うまでもなかった。

今回は読んでいただきありがとうございます。

時々私も見返すと思いますが、誤字脱字ございましたら是非ともご指摘いただければとおもいます。

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