表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/90

第5話:赤角に殺されたい④

ギルドでは驚愕と納得と呆れの入り混じった視線に出迎えられた。


銀等級複数を要する依頼に単独で向かうなどということは普通なら生存は絶望的である。そういう意味での驚愕。


だがクロウならやりかねないという納得。


無茶ばかりやってる、相変わらずの死にたがりだなという呆れ。


銀等級パーティのシルファたちが後を追ったことを踏まえてみても、やはり討伐はもとより、生存すらも危ういというのは堅実的な見方であった。まあ普通なら。


「よく、ご無事で…!」

アシュリーが感極まったようにクロウを迎える。

「はい」

クロウは返事とともに、赤い角の残骸をカウンターに置いた。


そして、ちらりと背後のシルファたちに目をむけ、アシュリーに対して軽く頷いた。

クロウとしては、彼らの力も借り討伐することができた、という意思表示である。

だがここまで簡略化されると、普通はクロウが何をいっているか分からない。


しかしアシュリーはさすがにクロウとそれなりに付き合いがあるだけあって、彼の言いたい事のおおよそを察した。

「シルファ様!グランツ様、アニー様、クロウ様の救援にむかってくださったことを感謝します」


「いえ、クロウ様には以前命を救われました。当然のことをしたまでです」

シルファはそう答えると、後ろの2人に目配せをする。

グランツとアニーは黙したまま肯く。


「クロウ様も本当にありがとうございます。達成された今だからいえますが、あの依頼は王都のギルドでも正直手に余るものでした…」

アシュリーが深々と頭を下げる。


「はい」

クロウは相変わらず一言で答えた。

だが、その表情はいつもよりもほんのすこし柔らかかった。


ギルドでのやりとりを終え、クロウ達は帰路につく。

宿は別だが、途中までは同道することになった。


「それにしても驚きです。まさかクロウ様が銀等級冒険者だったとは……いえ、それより低いとおもっていたわけではないのです。逆に、そこまでの実力がありながらもなぜ銀等級に留まっているのかということで…」

「はい」


クロウがいまだ銀等級なのはそのコミュニケーション能力の低さと、そもそも本来のクロウが銀等級に昇格したばかりというのもあった。

ギルドの規定で、昇格後は暫くその位置に留まることになっているのだ。これはその等級に本当に相応しいかギルドが見極めるための期間でもある。


「…しかし、グレイウルフの一件もありますが、クロウ様はもはや金等級でもおかしくないとおもいます」

「いいえ」


「……えっと…」

「はい」

「……はぁ」

シルファは溜息をつくと、前を歩くアニーとグランツに視線を向ける。

・・・・

(クロウ様はなんというか…変わった方ですね。というより、はいかいいえでしか話している所を見た事がないです…)

クロウはシルファの質問に対し、首を横に振るだけだった。

シルファとて彼と出会ってまだ日が浅いが、彼が受けてきた数々の依頼内容を鑑みれば、確かに金等級であってもおかしくない実力を持っていると思える。


しかしクロウは頑としてそれを認めようとしなかった。

金等級冒険者になるには、推薦なども必要だ。

クロウは見る限りでは人付き合いが上手とはいえない。

おそらくそのあたりの折衝がうまくいっていないのではないだろうか?


「まあ、クロウ様の事情もあるでしょうしね」

シルファはそう独り言ちると、ふと自分の足が止まっていることに気付く。

どうやら考え事をしていたせいで、いつの間にか立ち止まったままになっていたようだ。


「すみません、お待たせしました!」

シルファは慌ててクロウたちの後を追う。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
他に書いてるものをいくつか


戦場の空に描かれた死の円に、青年は過日の思い出を見る。その瞬間、青年の心に火が点った
相死の円、相愛の環(短編恋愛)

過労死寸前の青年はなぜか死なない。ナニカに護られているからだ…
しんどい君(短編ホラー)

夜更かし癖が治らない少年は母親からこんな話を聞いた。それ以来奇妙な夢を見る
おおめだま(短編ホラー)

街灯が少ない田舎町に引っ越してきた少女。夜道で色々なモノに出遭う
おくらいさん(短編ホラー)

彼は彼女を護ると約束した
約束(短編ホラー)

ニコニコ静画・コミックウォーカーなどでコミカライズ連載中。無料なのでぜひ。ダークファンタジー風味のハイファン。術師の青年が大陸を旅する
イマドキのサバサバ冒険者

前世で過労死した青年のハートは完全にブレイクした。100円ライターの様に使い捨てられくたばるのはもうごめんだ。今世では必要とされ、惜しまれながら"死にたい"
Memento Mori~希死念慮冒険者の死に場所探し~

47歳となるおじさんはしょうもないおじさんだ。でもおじさんはしょうもなくないおじさんになりたかった。過日の過ちを認め、社会に再び居場所を作るべく努力する。
しょうもなおじさん、ダンジョンに行く

SF日常系。「君」はろくでなしのクソッタレだ。しかしなぜか憎めない。借金のカタに危険なサイバネ手術を受け、惑星調査で金を稼ぐ
★★ろくでなしSpace Journey★★(連載版)

ハイファン、ウィザードリィ風。ダンジョンに「君」の人生がある
ダンジョン仕草



まだまだ沢山書いてますので作者ページからぜひよろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ