二日目 午後
食事を終えおのおの気の休まる方法で休憩をとる
少しの雑談も交えて約1時間の休憩が終わる
そして
「じゃ、そろそろはじめるか」
という藤井さんの言葉で作業へと戻る
朝と同じに防護服に袖をとし装備を整える
先に終わった藤井さんがそのまま中へと入っていく
そしてそのあとを追い俺も入っていく
すると
「うーん、思ったより量あったな~二人で正解だったかもな」
と言いながら中身の詰まったゴミ袋を一か所に集める
そして
「今日は残った分のゴミかたつけたら終わろうか?」
「了解です」
想定より多いゴミに良いところできりをつけることにした
そして言われたように残りの分のゴミを片付ける
「「・・・・」」
ガサツ
ガサガサ
ガサツガサガサ・・・
作業中は終始無言でゴミを拾い袋の中に詰める
その音だけが部屋に響く
「「・・・・」」
ガサガサ
ガサツガサガサ・・・ドン!
「!!」
何かが強く硬いものにぶつかったような音
その音に思わず体がこわばる
そして藤井さんのほうを見るが
「・・・」
ガサガサ・・・
作業を淡々と進めていた
その姿に思わず
「あの!」
と声をかけて藤井さんの作業を中断させる
「ん?どうしたの?」
「あの、なんか落としましたか?」
「いや、普通にゴミ拾って袋に詰めていたけど・・・」
「そうですか・・・いやなんか落としたような音したんで・・・」
「音?そんなのした?」
「はい、ドン!って」
「俺は聞いてないけど・・・」
「そうですか・・・」
そういったあと藤井さんは普通に作業に戻る
その姿は本当に聞いてないだろう様子で特に気にとめていなかった
(たしかにしたような・・・)
自分の気のせいだろうか
そんな風に思おうとしたとき
ドン!!
今度は確実に聞こえた
しかし
「・・・」
ガサガサ・・・
藤井さんは先ほど同様に作業を続けている
(聞こえてないのか?)
集中してるがゆえに聞こえないのか・・・
俺も集中したほうがいい
そうは思いながらも
音の出所が気になり耳を澄ましてしまう
・・・・
・・・・・・ドン!
「!」
リビングのほうから聞こえる
気になりリビングを覗く
しかし、作業中と変わりなく何もない
ゴミの山が崩れたという感じでもない
怪訝に思いリビングのほうへと足を入れる
すると
ドン!!
音は先ほどより鮮明に聞こえる
そしてわかる
この音は床からしていると
「なにかいる?」
そう思い音のほうへと近づく
ドン!
「ここか?」
そう思い足元を見る
ドン!
「!ここだ」
音は確かにしたでも・・・
「なんか・・・おかしい・・・気が・・・」
ドン!
「!!」
ビックっと体が浮く
そして藤井さんを見るが
「・・・」
先ほど同様作業を続けている
(こんなに音しているのに?)
困惑した
何が起こってるのか
そして
「あの?」
藤井さんに近づいて声をかける
「ん?」
「あの、ちょっと外の空気吸ってもいいですか?」
「どうしたの?気分でも悪いの?」
「・・・はい、ちょっと・・・」
「・・・うん、わかった。俺は続けるから休みな。それでも無理なら言って」
そういって作業に戻る
「すいません・・・」
謝罪を残して部屋を出る
キー・・・バタン
外に出てマスクなどをとり外の空気を吸い込んだ
(おかしい・・・なにかおかしい・・・)
そんな思いで心がつぶされる
この部屋は一階
下から誰かがたたくのはない
動物?ネズミ?
いや、あんな鈍い音を小動物が出せるか?
(ん?待てよ・・・音しかしてない・・・?)
ふとよぎる
音がしたところその場所にいたのに
振動を感じなかった・・・
「・・・」
頭にいろいろなことがめぐる
オカルトめいた考えばかりが・・・
朝言われたばかりだが
その可能性しか頭にうかばない
(そんなわけない・・・そんなわけ・・・)
思い浮かんでしまうありえない可能性に
自ら否定の言葉を投げかける
そんなことを繰り返すと
キー
「!!」
すぐに音のほうに目線をうつす
すると隣のドアが開いた
そして
「あ、おにさん!休憩かい?」
隣のおばさんが明るくいう
「あ・・・はい・・・すこし休憩してました・・・」
内心ではほっとしながら答える
すると
「そうかい!あれ?おにいさん顔色悪いけど・・・大丈夫かい?」
と声を掛けられる
「あ・・・その・・・すこしだけ・・・」
といいながら顔を伏せた
「そうかい・・・やっぱり大変だね・・・」
そういうとおばさんもすこし声色が落ちた
そして
「まぁ、にいさん元気だして!おばちゃん応援するから!」
そういって明るく元気づけてくれる
「ありがとうございます」
今はその言葉がとても染み入った
「そうだ!まだ続くんでしょ?明日はおばちゃんから差し入れあげるから!」
「!そんなお気になさらずに!!」
「いいから!いいから!!おばちゃんも助かってるから、ね!」
と強引に明るく話してくれた
いつもはただただ困るだけだが今は正直助かった
でも、差し入れはさすがにまずいと
どのように断ったらいいか考えていると
「うんうん、それじゃ私はすこし出かけるから!おにさん無理しないでね!」
「あ!あの!!」
言葉をかけたがおばさんはそのまま出かけてしまった
「どうしよう・・・」
うれしい困りごとだがそのおかげで
幾分さっきの考えは薄れた
今も考えると怖いがまだマシだった
すると
キー
今度は作業中の部屋のドアがあく
ビック!
と体がしたあとすぐに
「なんか話声あったけど?なにかあった?」
そういって藤井さんが出てきた
またほっとしながら
「いや、あのお隣さんとすこし・・・」
「さっきのおばちゃんかい?なにか苦情?」
「いえ、僕のこと気遣ってくれまして」
「そうなんだ・・・で?体調はどう?」
バタン
後ろ手にドアを閉めて
こちらに寄ってきて質問される
「はい・・・あの・・・ちょっと・・・」
恐怖は少し和らいだといってもすぐには戻れそうになかった
もし戻ってあの音がしたらきっとまた考えてしまうから
「うーん・・・・たしかに顔色悪いね・・・」
そう言いながら考える藤井さん
そして
「うん、今日はこれぐらいにして終わろうか?」
「はい、すいません」
「いや、いいから!今日は帰ってゆっくり休んで!」
「はい、ありがとうございます」
そういって頭を下げていう
「いいから!じゃすこし片付けしてかえろ?」
「はい」
返事をして片付ける
中には藤井さんが入って
俺は外で片付けを
そしてすべてが終わると
「じゃ、帰るか!」
という掛け声とともに仕事を終えた
そして
「まぁ~今回一人は厳しい所だったから、量的にもあと匂いも結構してるしな。呼んでくれたよかったよ」
と言葉をつづけた
そしてそのあとに
「にしても朝の話じゃないけどたしかに気味が悪い物件だな」
と今朝の俺の態度を肯定的に話してくれた
「写真があれはさすがに気持ち悪いからな~まとものやつなんて一枚しかなかったしな~」
「まともなやつですか?」
「うん、一枚だけ出てきたよ、恋人、もしくは夫婦だったのか・・・どっちにしてもうまくいかなかったんだろうけどさ」
「そうなんですね・・・」
まともなやつがあったのも驚きだった
見てみたような怖いような気がしながら
「その写真は?」
「残さないから捨てたよ」
「そうですか・・・」
当たり前の反応だった
あの写真を容赦なく捨てる人なんだから
それも捨てて当たり前だった
そんな会話をして帰り支度がすむと
「あと、明日もし無理なら早めに連絡して」
「はい、わかりました」
「ん、じゃお先に~」
そういって帰る藤井さんをみたあと
俺も帰路へとついた